家の中は真っ暗で何も見えない。手探りで壁づたいを歩いていく。昔からあったって言ってるわりには壁や床はホコリまみれではなかった。むしろまだ出来たばかりでホコリも塵もないぐらいの手触りをしていた。


「おーい。誰かいますかー?」

わりと大きめの声で叫んでみるが返答はない。

やはり誰も住んでいないようだ。

奥まで進むと目が馴染んできたのかうっすらと周りが確認出来るようになった。

長いテーブルに椅子が置いてあり、奥は…台所のように見える。

大丈夫だし、そろそろ呼ぶか。


「おーい。大丈夫だから入ってこいよー!」

玄関との距離はそこまで遠くないが、万が一聞こえない可能性があったからさっきよりも大きめの声で言う。


前を向いた瞬間…視界は真っ暗になっていた。


【オーい。ダイじょウぶダカラ、ハイってこいヨー】

家の中で木霊する。


友達の声が中から聞こえてきた。

「大丈夫だってさ。行こっか」

「う、うん」

僕と友達は恐る恐る家の中に入っていく。


【ハ....こイ....よー....】

奥の方から友達の声が聞こえてくる。


「早くこい?かな?」

僕は聞き取りづらくてなんて言ったのかよく分からなかった。後ろの友達も首を傾げている。

とりあえず、僕たちは言われた通り奥に進んでいく。


「ここは、台所とテーブル?」

奥の部屋は長いテーブルと椅子が置いてあり、奥の方は台所のような物が見える。

僕たちは右からグルッと部屋を一週する。

友達の姿はない。

「あいつ、どこ行ったんだろ」

歩きながら二人で考える。


右から回ったとき、僕たちは二人は左を確認していなかった。後ろの友達の後ろに真っ黒い影があることを僕たちは知らなかった。

影は僕たちの後ろをついて周り、途中で止まる。そしてまた動き出す。


「二階にあがったのかな?」

「かもしれない」

僕たちは階段をゆっくり登り始めた。

下で友達の声が聞こえたのは…多分、気のせいだろう。


【タ....スケ....テ....】



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る