第12話 ロリ先輩の暴走

 そんなこんなで放課後。

 とっとと逃げようとするオレを夏美さんはあっさりと捕まえ、その足でそのまま冬乃先輩がいる教室へと向かう。


「ここだね、透君」


「そ、そうだね、夏美さん」


 さすがは陸上部のエースということか。むしろ、彼女から逃げられる奴がこの学園にいるのかどうかすらも怪しいほどの脚力。

 そんなことを思いながらもオレは先輩が待つ教室に掲げられた立札を見る。

 するとそこには『医療研究会』と書かれていた。

 医療研究会とな? これはまた部活動にして随分と凝った内容だなー。というか高校の部活動でやるような内容なのか?


「見て見て! 透君! 医療研究会だって! これは期待が持てるよー! うんうん、きっとあの先輩なら透君の不能も治してくれるよー!」


「そ、そうだねー」


 一方の夏美さんもその札が目に入ったのか、いつになくテンションを上げていた。

 仕方がなく覚悟を決めたオレは扉を開けて、先輩が待つ部室の中へと入る。


「し、失礼しますー」


「おお、来たか」


「ぶっ!?」


 扉を開けていきなり目に入ったのは下着姿の冬乃先輩の姿であった。

 胸にスポーツブラ、下着も同じようなデザインのパンツを履いており、彼女の平らな体型が丸わかりである。


「ちょ、せ、先輩なんつー格好してるんですか!?」


 さすがに扉を開けていきなりこんな姿で迎えてくるとは思わずオレは慌てて目を背ける。

 一方の夏美さんもさすがに「せ、先輩! どうして下着なんですか!?」と慌てる。


「うむ、これは君へのカウンセリングの一つだ。言っただろう、君のEDを治すと。とはいえ私の体型は見ての通りの幼児体型だ。さすがにこれに興奮するなど一部のロリコンを除いておるまい。君がそのロリコン人種なら話は早いのだが、その反応を見る限りこれといった反応もないようだな」


「は、はあ……」


 どう反応すればいいのか分からず思わず固まるオレであったが、彼女は何事もなかったかのようにオレ達を椅子に座らせる。


「さて、では早速君のEDの治療を開始しようと思う」


「と言われましても……」


 EDってそんなに治るものなの? というか早く服を着てくださいよ先輩……。


「まずEDについてなのだが、これには大きく二つの理由がある。一つは肉体の衰え。年齢的な問題などにより勃起不全が起こる現象。とはいえ、これは若い透君が起きるには考え難い。まだ十代半ばで肉体的な原因でEDが起きるなど考えられない。となると残る要因は一つ、即ち心理的要因だ」


 お、おお、なんかすごくそれっぽいな。

 というか、オレと一緒に来た夏美さんの方がノートにペンを走らせ真剣にメモしている。


「心理的要因にもいくつかの種類がある。一つはストレス、日々の不安や家庭内事情、性的無知から来る罪悪感などもある。特に男子学生に多いマスターベーションをした後の虚無感。あれに罪悪感を抱く者も少なくないと聞く。実際、その行為の後に多くの男子学生が『また性欲に負けてやっちまった……』と己を恥じた経験は多いと聞く。透君はどうかね?」


「え、えーと……」


 なにこれすげえ答えづらい。

 た、確かにオレもそういう経験はあるし、なんだったらここ最近は特にだ。

 自分は不能じゃないのに不能と言ってしまい、でもたまに影で隠れてそういうことをしてしまった時の罪悪感たるは半端では……って隣見ると夏美さんがすげえ興味津々でオレの方を見ている。


「そ、そうですね……オレもそういう経験あり、ます……」


「やはり、そうか。うむうむ、年頃の男子ともなれば当然じゃな」


 オレの答えを聞いて深々と頷く冬乃先輩にそれをメモする夏美さん。もうコロシテ。


「君の場合はまず間違いなくそうした心理的要因でEDになっている可能性がある。君のEDを治すためにもEDになったきっかけ。それを掘り下げていきたいと思う」


 いや、今まさにこの会話でマジでEDになりそうなんですが。

 そんなことを思っていると早速冬乃さんからのとんでもない質問が繰り出される。


「で、早速なのだけど透君。君って短小?」


「ぶーーーーーーーーっ!!!!」


 思いっきり吹き出した。


「げほっ! ごほっ! ごほっ! え、えーと、先輩なんですって?」


「だから、君って短小?」


 冬乃先輩からの質問に思わず咳き込み、改めて問いかけるが先輩からの質問は同じだった。


「……それって答えなきゃいけないことですか?」


「当然だ。実際、短小コンプレックスでEDになっているケースはままあるのだぞ。自分に自信が持てない。これは典型的EDに陥る要因だ」


 は、はあ、さいですか……。

 しかし、どう答えたものかオレは困る。

 いやだって、自分のナニの大きさとかよくわからないし。それが大きいか小さいかなんてどうやって測るんだ。

 そもそも自分が短小かどうかは他人の物と比べないと分からないし、そんなの比べたこともない。つーか、比べたくもない。

 と、そんなことを思っていると何を思いついたのか先輩がオレの方に近づきとんでもないことを告げる。


「ええい、この際面倒だ。透君、君脱げ。私が直接確認する」

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