第11話 新たなる先輩の介入
「はぁ……なんか、ドンドン大変なことになってるなぁ……」
その日、オレは誰にともなく廊下を歩きながら呟く。
あれから秋葉さんが事あるごとにオレのもとへと足しげく通うようになった。
目的は無論、オレの不能を治すため。
胸元をギリギリまで開けた服で迫ってきたり、わざとスカートの丈を短くしてオレの傍をうろついたり、元々秋葉さんのスタイルは夏美さん並に発育が良いので目のやり場に困る。
本人はもうビッチの振りはやめたと言っているが、傍から見るとむしろ加速しているように見える。
事実、そんな秋葉さんを連日、夏美さんが「は、ハレンチ! ハレンチです!」と責め立てては二人の口論が巻き起こっている。
そんなこんな出来事が起こり、オレはなるべく休み時間は教室から移動し、二人に会わないようにしていた。
まあ、あの二人も悪気はないし、むしろオレのために行動してくれているんだから本当なら感謝するべきなんだが……。と、そんな風な事を思っていた矢先であった、
「もし、そこの」
「? はい?」
突然、背中から声がかかる。
何事だろうかと振り向くと、そこにはえらく背のちっこい少女がいた。
「え、こ、子供?」
身長およそ百四十センチくらいだろうか。高校生とは思えない小柄な体格で、一瞬小学生が迷い込んだのかと思った。が、よく見ると着ている服はこの高校のもので間違いなかった。
そんな少女はオレの一言に「コホン」と咳払いをして答える。
「子供ではないぞ。私は笠瀬(かさせ)冬乃(ふゆの)。この学園の三年で君の先輩だ」
「せ、先輩!? しかも三年生!?」
思わぬ宣言に驚くオレ。
しかし冬乃と名乗ったその少女はマジマジと興味深そうにオレを見つめる。
「ふぅむ、それにしても君が噂のあれかぁ。こうして見ると普通だな。とはいえ、その服の下は普通ではないのだろう?」
と、なにやらセクハラ紛いなことをオレに聞いてくる。
「え、えーと、あのー、それってひょっとしなくても……」
「うむ。君、EDなんだろう?」
ド直球。
え、ええまあ、もうこの学校では完全にそういう立ち位置になっているのでオレはぎこちない笑みを浮かべたまま頷くしかなかった。
一方の冬乃さんはますます興味深そうにオレ――主に一部――を凝視する。
「ふむふむ、そうかそうか。いやー、その年でそんなことになっているとは色々と大変だろうー。だが君みたいなサンプルは実に貴重だ。君、よければ私の実験に付き合ってくれないか?」
「? は、はあ? なんでしょうか実験って?」
「なあに大したものではない。君のED――もとい勃起不全を私が治してやろうではないか」
そう言って先輩はポケットから紙を渡す。
それは校舎の一部分を示す地図であり、部屋の一角に印がついてある。
「そこが私が普段いる部室だ。放課後、そこに来るといい。私が君のEDを治療してやろう」
「はあ、お誘いは嬉しいのですが、丁重におこと――」
わりしますと告げようとした瞬間、背後からオレが手を誰かが握る。
見るとそこにはいつからいたのは夏美さんがいた。
「放課後そこに行けば透君の不能が治るんですか!?」
「うむ。私はこう見えてその手のプロだからな。その少年のEDの原因を私が解明してみせよう」
「おおー! 分かりました! 透君と一緒に必ず行きます!」
と、なぜかオレではなく夏美さんがそう答え、それを聞いた先輩は頷きどこかに行ってしまう。
なにが起こったのかと呆然とするオレに手を握ったままの夏美さんが期待に胸を膨らませた様子でオレに告げる。
「よかったね、透君! これで透君の不能が治るかもしれないよ! あ、もちろん、私も一緒に行くから任せて!」
「あ、ああー、そ、そうだねー、あ、ありがとー、夏美さんー……」
キラキラとした目を向ける夏美さんに対し、オレは断ることもできず頷くしかできなかった。
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