第10話 ギャルもオレの不能を治すそうです

「はあー、ここ最近なんだか疲れることばかりだなー」


 翌日。オレは自分の机で頬杖をしながらため息をついていた。

 夏美さんだけでも色々と大変なのに、秋葉さんまで昨日のあの出来事だ。いつオレの不能が嘘とバレるかハラハラだ。

 とはいえ、秋葉さんについてはあれで彼女もオレに近づくことはないだろう。

 オレ自身、ちょっと説教臭かったとは思うがあれで彼女も危ない行為をしなくなればいいのだが、と思った瞬間であった。


「透っちー」


「ん?」


 明るい声に顔を上げるとそこには褐色の肌に金色の髪をポニーテールで結んだ可愛らしい少女が立っていた。

 その可愛らしい笑顔に一瞬誰かと息を詰まらせたが、それがすぐに宮野秋葉だと気づく。


「え、あ、あれ? 秋葉さん? な、なんか雰囲気変わったね」


「えへへー、そう? ちょっと髪型を変えてポニーテールにしただけだよ」


 そう明るく笑う秋葉さんであったが、それだけではない様子だ。

 昨日まではいかにもギャルビッチという様子で周囲にそれをアピールするようなわざと着崩した制服をきちんと身にまとっており、アクセサリーや装飾品なども華美になりすぎないよう、むしろ彼女自身の自然な可愛さをアピールする程度に収まっており、個人的な感想になるが以前までの秋葉さんよりもずっと可愛く見えた。


「それでどうしたの? 秋葉さん隣のクラスでしょう? オレに何か用?」


「えへへー、実はそうなんだー」


 そう言って秋葉さんは笑顔を浮かべながら、しかしどこか顔を赤くしながら告げる。


「透っち。うち、アンタのことが好きになっちゃったかも」


「……へ?」


「でね。うちでよかったら透っちの不能を直してあげるよ! 透っちが望むならす、少しだけ……え、エッチなことだってさせてあげるから!」


「ちょ、ちょ!? 秋葉さん!?」


 とんでもないことを宣言しながら秋葉さんはオレの手を握り締める。

 その騒ぎに周囲にいたクラスメイト達も瞠目した様子でオレ達を見つめる。

 あ、あかん! なんか変なことなってるぞ!?


「……と、透君」


 震える声がした方を振り向くとそこには本城夏美さんが、オレと秋葉さんが手を握っている様子をマジマジと見つめていた。


「あ、な、夏美さん!? いや、これはそのちがくて……!?」


 何が違うのかオレがそう言い訳しようとした瞬間、夏美さんがキッとこれまでに見せたことのないように鋭い表情を向ける。

 ひっ、お、怒られる!? とオレが身構えると、夏美さんはそのまま秋葉さんのもとへと向かう。


「あ、あなた! 透君に変なことをしないでください! か、彼の不能は私が治すって決めてるんです! 横から出しゃばらないでください!」


「えー、つーか別にそんなの誰が治そうとしてもいいんじゃね? というか、彼からしてみれば不能を治してもらえるなら、それこそ誰でもいいじゃん」


「そ、そんなことありません! 彼は不能なんですよ! あなたのようなび、ビッチっぽい人には無理です! 刺激が強すぎます!」


「なっ! 勝手なこと言わないでよね! うちはもうビッチじゃないし! それにアンタじゃ彼の不能は治せないから、彼は困ったままなんでしょう。なら、うちが手助けしてあげたほうがいいんじゃないー?」


「よ、よくありません! 彼の不能は私が治すんです!」


「だーかーらー! それができてないからうちがしてあげるって言ってるのよー!!」


 ガヤガヤと相互に「不能」「不能」と連呼しながらオレの取り合いを行う二人。

 傍から見れば二人の美少女がオレを取り合う羨ましい光景のはず……なのだが、その根幹にある目的がオレの不能(嘘)を治すためだというので全然嬉しい気持ちになれない複雑な心境。


 夏美さんと秋葉さん。

 二人の美少女に囲まれ、オレの偽りの不能生活はここから更なる波乱を呼び込んでいくのだった。

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