第4話 授業中のぶっ飛んだ行動には興奮と焦りが入り混じる
「はあ、とんでもないことになった……」
翌日、オレは昨日の夏美さんの例のレインのおかげでまともに眠れなかった。
結局あの後もあの画像をどうするべきかで延々と終わらない議論を頭の中でし続けて、気づいていたら朝になっていたパターン。
つーか、どうするよ。
夏美さん、本気でオレのことを不能だと思っているし。
そんなオレの不能を治そうと本気になっているし!
しかも彼女自身、羞恥の思いがあるにも関わらず、オレのためという正義感や優しさから来ているのでなおさらタチが悪い。
どうするよマジで……下手に断ることも真実を言うわけにもいかないし……。
と、そんな風に悩んでいる時であった。
「あっ」
「え?」
偶然、ばったりと通学途中の坂道で夏美さんと出会う。
「な、夏美さん。お、おはよう」
「お、おはよう、透君。透君もここ通ってたんだね」
「ま、まあね。実は家がこの近くで……」
「そ、そうなんだ。実は私の家もこの近くで、案外近くに住んでたんだね」
「だ、だねー。全然気付かなかったよー」
はははっと笑い、そのまま隣を歩くオレと夏美さん。
き、気まずい。
昨日の今日で、しかもあんなレインのやり取りを行った後じゃまともに夏美さんの顔を見れない。
それどころか彼女の制服、上着部分を見るだけで昨日送られた彼女の上半身を思い出してしまい――
「そ、それでどうだった? 昨日のあれ、そ、その……使えた、かな……?」
「ぶーーーー!!!」
とんでもないセリフが夏美さんの口から飛び出し、オレは思わずその場で咳き込む。
なお夏美さんが「だ、大丈夫!?」と必死にオレの背中をさすってくれた。
うん、どこまでも優しくてありがとう。夏美さん。おかげでとても心苦しいです。
「い、いやー、その、実はオレの不能って特殊で。ちょっとああいうのじゃ反応しないっていうか……だからもう無理しなくてもいいっていうか……」
「そう、なんだ……。下着とかじゃ、やっぱりダメかな……」
「いや! ダメとかじゃなくて! その、なんていうかこう……男ってただ下着や肌を見せられれば喜ぶってものじゃないから!」
「え、そ、そうなの?」
「そ、そうそう! 大事なのはシチュエーションなんだよ! 雰囲気作りっていうか、そういうのを踏まえてエロさに反応するって聞いたことあるから! だから、ああいう画像だけじゃなかなか反応しないんだよ」
「……そうなんだ」
と、なかなか苦しい言い訳を言うが、夏美さんは案外それに納得したようだ。
う、うむ。これでああした画像の送信が止まってくれればいいのだが。
そんなことを思っている内に学校へと到着し、オレと夏美さんはそのまま教室へと移動するのだった。
◇ ◇ ◇
「えー、であるからして、ここの数式にこれを当てはめ――」
ううむ、授業に集中したいが昨日からのあれやこれやで色々と集中できない。
先日の『不能』宣言によりクラス連中は妙にオレに優しくなった。
理由はまあ、言うまでもない。ほとんどの連中が同情混じりの優しさをオレにかけてくれる。
中にはあえてその話題に触れまいとする連中もいるのだが、それがかえってぎこちない雰囲気を作っていたりもする。
まあ、こうした扱いも日数が経つにつれ、飽きられ、慣れてくるだろう。
数ヶ月もすれば「あいつ不能らしいぜ」「ああ、知ってる」程度の流れで済むだろう。問題はそれまでオレが耐えることだが。
そんなことを思っていると突然ポケットに入れていたスマホがブルブルと震える。
「……ん、通知か?」
スマホを取り出すと、そこには未読のメッセージが来ていた。
オレは先生に見つからないよう、こっそりとスマホの画面を開く。
するとそこには夏美さんからのレインが来ていた。
「? なんだ?」
あの夏美さんが授業中にまさかのレイン?
意外な行動に驚くオレであったが、しかし真の驚愕はそのあとに起こる。
『私の方を見て』
「?」
なんだこれ? どういう意味だだろう? と思ったオレはレインのメッセージに従い、隣に座る夏美さんを見る。すると、
「~~~~!!?」
そこには驚くべき光景があった。
なんと夏美さんが右手でスカートの裾を持ち、オレに見せつけるように太ももを晒していた。
更には、そのままスカートの裾を握る右手をゆっくりと上げ、太ももの更に奥を覗かせようとしていた。
ちょ!? ちょ、ちょ、ちょ!!?
夏美さん!? 見える! 見えますよ!? それ以上、裾をあげたらスカートの中がオレに見えちゃうよ!!?
夏美さんの――しかも授業中という二重にありえない行動にオレは軽くパニックを起こし、もう少しで叫びそうになった口を必死でおさえる。
一方の夏美さんはその表情は真剣であり、しかし自分の行動にとてつもない羞恥心を抱いており顔はトマトのように真っ赤であった。
それは昨日の夕暮れを思わせるような羞恥心と切実さが入り混じる表情であり、夏美さんは唇を噛み、両目をつむったまま、震える指先でゆっくりとスカートの裾を上げていく。
ちょっと待って!? 本当に待って!? なんなのそれ!?
っていうか、彼女まさか朝オレが言っていたシチュエーションとやらを実行しているのか!?
いやまあ、確かにこんな授業中に、そんなことされたら興奮とかそれ以上のパニック起こすけどさ!? それちょっと何かが違うっていうか、ぶっ飛びすぎてるよ夏美さん!?
おそらく性に関して中途半端な知識を持っており、加えて彼女の真面目な性格が合わさり、このような常軌を逸した行動を選択させたのだろう。
確かに見ようによってはかなり興奮するシチュだが、当人のオレにそんな余裕はない。
夏美さんの思わぬ行動にただただ焦り、混乱し、しかしここで見なければ、決死の行動をしている彼女に対し申し訳ないのでは? けれど、そのまま覗くのは人としてどうなの!? とか色々な感情がオレの中で渦巻いていたまさにその瞬間、
「えー、じゃあここを……本城夏美君。いいか?」
「!? ひ、ひゃいいいいいい!!?」
突然、先生に指名された夏美さんが慌てて席を立つが、その際膝を思いっきり机にぶつけ、その場にうずくまり悶絶する彼女。
それを見て周りの生徒や先生達が心配し、声をかける。
「お、おい、大丈夫か? 本城」
「だ、大丈夫、です……」
そう言って引きつった笑みを浮かべながら夏美さんは先生からの質問に的確に答えるのだった。
ある意味、助かった……ような……ちょっと複雑なような……そんなオレの胸中でした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます