第3話「森の中でゴリラと出会ったら逃げるのです!」

 *

 

 視点は再びななみに戻ります。


「もぉ……ななみん」


 私の放ったプチメテオの着弾点にて ポン太が呆れかえっています。


「はにゃ? どうかしましたか?」


 えっとぉ~、プチメテオが地面に衝突する直前にちゃんと離脱して防御魔法も展開したから私もポン太君も無傷ですよ? でも不満があるのは少し不思議ですね?

 

「どーして普通に降り立てないのさ?」

「勇者サマをお助けするヒロインがノコノコ歩いて来てもカッコ良くないのです☆ 落下した隕石の近くに可愛い女の子が倒れてる演出をしてるのです☆」

「えっと、ななみん? 何か楽しそうな事を考えているところ悪いんだけどさ」


 ポン太君が改まった上でゆっくりと息を吸い込みました。


「はにゃ?」

「地上にいる人達ってさ、隕石に乗ってるななみんを見える人って殆ど居ないと思うんだ」

「にゃにゃにゃ!!!!!」


 ななななな、なんて事デスカ! ぽん太君の言う通り、勇者サマ達から見たら私は豆粒以下の大きさにしか見えないじゃないですか!


「だからさ、勇者さんと普通に近付いても別に問題無かったって思うんだ、今更だけどさ」

「にゃはは☆」


 冷静につっこみを入れて来るぽん太君の前に私は笑ってごまかす事しか出来ません。


「でも、やっちゃったものは仕方ないよね」


 そう言ってポン太君は大きなため息をつきました。


「そそそ、そーですよー☆」


 私はパチッっとウィンクをして誤魔化しました。

 

「で、ななみん? これからどうするのさ? まさかこのまま倒れたまま勇者サンを待つんじゃないだろうね?」

「はにゃ? 何の事ですかー?」


 倒れているヒロインを助けるって物凄く大事なイベントなんですからね! そこは譲りませんよ!


「おーい……ってもう! 僕はどうなっても知らないから!」

 

 そう言ってポン太君は私の道具袋に潜り込みました。


「おい! 大丈夫か!」


 そんなワケで、私が地面で気絶してるフリをしていると、私を助けに来た勇者サマの声が聞こえて来ました!

 えへへ、待っていた甲斐があったと言うモノです!

 でもでも、変ですねー、なんだかおぢさんみたいな声をしてますねー?

 あの写真ですと~もーっとかわいいお声をしてると思うんですけどぉ?

 うーん、もしかしたら声だけかもしれないですし~、ちょ~っと薄目を開けて確認しちゃいましょう☆

 

「はにゃーーーーー!!!!」


 と思って私が薄目を開けた瞬間視界に映ったのはゴリラ型のモンスターじゃないですか! しかも、人間が装備する鎧とか身に付けちゃってますよ!

 予想外なモノを見てしまった私は思わず跳ね起きてしまいました。


「む、元気そうであるな」


 ええええ!? このゴリラさん人間の言葉もしゃべるんですか!

 はわわわ、ななみちゃん大ピンチですっ!

 むむむ……でもでも、ですよ?

 この魔物さんに追われてる事にして勇者さんに助けを求めちゃえば良いじゃないですか!

 えっへん、とっさに機転を利かせられる魔法少女ななみんは頭が良いのです☆

 

「にゃああああ、か、怪物ですぅぅぅぅ! 誰か助けて下さい!」

 

 えへへ、これだけ大声で叫べばきっと勇者サマにも聞こえますよね☆

 後は走って逃げて勇者サマが駆けつけてくれるのを待つだけです♪


「お、おい、待て、俺は」


 私の思ったとーり、魔物さんが走って私を追いかけて来ました。

 むー、魔物さんが走る速度考えますと、私が少し手を抜いて走ると丁度良さそうですね♪


「た、た、助けて下さぁいー!」


 私は走りながらも叫び続けます。

 暫く走り続ける事で魔物さんのペースが落ちてきたので、私も合わせてペースを落とします。

 逃げ切ってしまってはダメですからね☆


「大丈夫ですか!」

「ぬふふ、可愛い女の子でござる」


 うふふ、頑張った甲斐がありました!

 私の目の前にはあの写真の通り、サラサラな、流れる様な金髪の少年が居ます!

 にゃははー、見付けましたよ、私が探し求めた勇者サマです!

 隣に居る気味の悪いオヂサンなんてどーでも良いですけどッ!


「はぁ、はぁ、た、助けて下さい!」


 私は、命からがら逃げて息を切らしたフリをしながら勇者様に飛びつきました。

 可愛い女の子が助けを求めて飛びついてしまえば高得点間違い無しですよ☆


「わわわ、ちょ、ちょっと!?」


 にゅにゅ? これは、可愛い反応ですね!

 にへへへ、ななみちゃんぽいんとあっぷですからね!


「そ、それで魔物は!」


 勇者様が凛とした声で言いました。

 はにゅーその声、思わずもふもふしたくなっちゃいます!

 けど、ここは我慢して、さっきのゴリラさんを指差します。


「あ、あっちにゴリラ型の魔物が居ます」

 

 ここでゴリラ型の魔物に襲われて恐怖に陥った可憐な少女を演じる為、声を震わせながら言うのが大事です!


「え? どこ……ですか?」


 完璧な作戦☆ と思ったのですけどー? 勇者サマどーしちゃったんですかぁ?

 はにゃにゃ? もしかしてあの魔物さん、姿を消してしまえるのですか!

 むむむ、ななみちゃんピンチって奴ですか!


「おーい、リュッカー」


 にゃにゃにゃ? あの魔物さん、勇者様の仲間ですか!

 むー、これは勇者様は魔物も仲間に出来てしまうと言う事でしょうか?


「ダルシンさん! どうもこの辺りに魔物が居るらしいんだ」

「魔物か? 見なかったぞ?」

「え? でもこの娘がそう言ってるんだよ」

「この娘か? コイツ俺を見て怪物と叫びながら逃げたぞ?」

「え?」

 

 あれあれ? 勇者サマ、ゴリラさんと会話してますしなんかキョトンとしてますよ?

 はにゃにゃ? もしかしてもしかするともしかしなくても、このゴリラさんって勇者様のお仲間なんですか!?


「にゃはは☆」


 な、なんか雲行きが怪しいんですけどッ! と、とりあえずここはななみちゃんスマイルで誤魔化しますっ!

 

「だが本当に魔物が出たら危ない」

「そうだね、でも、この娘も無事で何よりじゃないかな?」


 はわわ、勇者サマはなんて素敵な事言ってくれるんですか!?

 

「わ、ちょ、ちょっと!?」

 

 えっへっへ、ぎゅーっと、ぎゅーっとしちゃいますよー☆


「リュッカ殿だけずるいでござる」


 にゃ! さっきのオヂサン! 私オヂサンには興味ありませんからッ!

 だから、こうしちゃうんです!


「スリープ!」


 ふふふ、わるーいオヂサンはこれでおねんねしてくださいなのです!

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