第4話「魔王城前の砦に到着したのです」

「え?」


 あれあれ? 勇者サマがキョトンとしてますよ?

 変ですねぇ? ちょっとスリープの魔法を使って眠らせただけですけどー?


「ふむ、お嬢ちゃん、魔術士かい?」

「は、はい」

「俺達は魔王を倒しに行ってるのだが」

「え、でも、見ず知らずの女の子を巻き込む訳にはいかないよ」

「だが、俺達のチームに魔術士が居ない」

「でも……」

「この娘は俺に匹敵する持久力はある、それも魔術士で、だ」

「けど、魔法力は……」


 にゃにゃにゃ? もしかして勇者様、私の身を案じてくれてるんですか!

 きゃー素敵ですぅ! 私が見込んだ勇者サマです!


「詠唱無く魔法を使い、コイツをあっさりと眠らせ、まだ起きていない」


 にょにょにょ? すりーぷを無詠唱で唱えるのってむずかしー事だったんですか?

 えっと、その、今眠ってるおぢさんって魔法防御力が高いから、魔法に掛かり難いしすぐに魔法が解けるって聞こえるんですけど?


「そうだね、魔法使いのあの娘も魔物に捉えられてしまったし」


 はにゃ? あの娘? ですか?

 ままま、まさか、勇者サマの想い人ですか!?

 れれれ、冷静になるのです、勇者サマは『あの娘』って言っただけです、想い人とは言ってないのです!

 私は誰にもバレない様に大きく深呼吸をし、平常心を保とうとしました。


「だが、無理強いはしない」


 ダルシンさんも私の身を案じてくれましたが、


「にゃはは☆ ななみちゃんに任せてくれればだーいじょうぶですよ☆」

 

 ダルシンさんがそう言いましたが、私は勇者サマから離れてポーズを決めて言いました。

 これだけ自信満々に言えば大丈夫ですよね!

 

「フフッ、心強いよ、僕はリュッカ、宜しくね」

「俺はダルシン、寝てるコイツがニパだ」

「宜しくお願いしますぅ☆」


 私は満面な笑顔を見せて言いました。

 晴れて勇者サマと同行する事が出来たのですけど、ここからどうしましょうか?

 一般的な魔王でしたら、私の手に掛かれば楽勝ですけど、そうしてしまいますと勇者サマより強い魔術士になっちゃって勇者サマを立てる事すら出来ない最低ヒロインになってしまいます。


「リュッカ」

「うん、僕達はこれから魔王城に向かうつもりなんだ」

「はいー」

「それで、その手前にある魔王軍最後の砦を陥落させたい」

「わかりましたー」


 どーやら、魔王軍の防衛線を突破して魔王城を攻め込む王道パターンみたいです☆


「ニパが起き次第行こう」

「それなら僕が起こすよ」


 勇者サマがおぢさんを起こそうとしますが、私の魔法で眠っている以上まず起きないでしょう。

 仕方ありません、目覚ましの魔法を掛けて勇者サマが起こした事にしましょう!


「う……せ、拙者は……?」


 重い頭を支えながらおぢさんが目を覚ましました。


「疲れて眠ってただけだ」

「かたじけない……」


 むぅ、おぢさんの名誉を守ったみたいですね、ゴリラさん。

 一方のニパさんは、記憶を辿り思う事があったようですが、首を小さく左右に振るだけでそれ以上の事は言いませんでした。


「よし、行こう!」

 

 勇者サマの合図と共に、私達は歩き出しました。

 むぅ、歩いて行くのですか……いえとーぜんですよね。

 仕方ありません! ここは私が身体能力を上昇させる補助魔法を掛けましょう!


「ふぅ、戦意が高まっているお陰か身体が軽い気がするよ」

「そうだな、俺もいつもより疲れを感じない」

「不思議でござる」


 そんな訳で私が掛けた魔法の効果はテキメンだったようなんですけどぉ、でもでも、私が掛けた支援魔法について気が付いていない様です。

 勿論バレない様に使ったんですけど、それはそれで少し複雑な気分ですね。

 それから私達は目的地を目指して進軍しました。

 時折魔物さん達も現れますが、勇者様達が敵の注目を浴びている所に『ストーン・アロー』辺りの弱い魔法を使いました。

 これで、私が致命傷を与えて勇者様が止めを刺す形が出来ます♪

 えへへ☆ ちゃんと手柄は勇者様のモノになるように調整するななみちゃんって凄くないですか!?

 でもですよ?

 勇者サマは「助かったよ、有難う」って労ってくれるんですよ!

 はにゃー、もう、優しくてカッコ良くって理想の勇者様ですよ! ななみちゃんメロメロですっ!


「あれか……」


 ダルシンさんが遠くにある砦を指差しました。

 魔王上の手前に配備されているだけあって物凄く大きな砦です、とにかく大きいんです!

 だからどれだけの大きさと言われてしまいそうですが、とにかく大きいの一点張りしか出来ません!

 続いて、この砦に配備されている魔物さんですけど―。

 

 ペット枠。

 ぐりふぉん、けるべろす。

 

 地上物理攻撃組。

 ミノタウロス、サイクロプス。

 

 空中迎撃組。

 どらごん、わいばーん。

 

 ざっくり見た感じ、こんな感じで豪勢なラインナップになってます。

 勿論、ななみちゃんの手に掛かれば5秒もあれば十分ですけど―。

 勇者サマの実力を考えると、魔物サンを1体ずつおびき寄せて各個撃破していけば何とか倒せる位でしょうか?

 

「リュッカ」

「うん、ひとまず結界石を使うよ」


 どうやらここを休息用拠点にするつもりです。

 それで『結界石』を使うみたいですが。

 これも世界によって効果が多種多様化されるのですが、一般的には安全に休める結界を張る効果があります。

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