第3話 相談2

 幸成に相談しても結局俺は答えが見つからず、家に帰宅する。

 三人に告白されて早めに答えなきゃならないのに、一体俺はどう返事をしたらいいのか分からない。

 まだ俺は三人のことは知らない。まずはお友達から始めるべきか。頭を悩ませてリビングへ入ると、ソフォーに寝転がる妹の叶美かなみがスマホを弄っていた。

 スカートが捲れてパンツが丸見えだが、別に俺はそれに興奮するとかない。相手は妹だ。というかそんな事より三人にどう返事するのかが重要だ。

 そんな事を考えながら冷蔵庫から麦茶を取り出す。コップに入れて俺は一度落ち着くべく喉を潤した。


「あ、お兄ちゃん、ウチも入れて~」


「あーはいはい」


 叶美のコップを取り出して麦茶を注ぐ。それを持って叶美に渡すと、叶美はそれを受け取ってごくごくと一気に飲み干した。

 そんな妹に俺は少し相談することにした。女子であればどうするかも分かるだろうし。


「なー叶美」


「ん~?」


 スマホに夢中で声だけ返事をする。

 俺は三人から告白されたことを伏せて友人の話として相談することにする。


「友達がさ・・・・・・女子三人に告白されたみたいんだが、どう答えるのが正解だと思う?」


「は? 何それ? 三人に告白されるとか、その友達イケメンかよ。って、それって幸成先輩の事? いや、もっと告白されているだろうし・・・・・・え? 誰の話?」


「いや、だから友達の話だって。三人に告白されてどうしたらいいのか困ってるみたいなんだよ」


 その困っているの俺なんだけど。


「そんなの、その友達が好きだと思う人に返事すればいいじゃん。そんで二人にも誠意を持って返事をする。それしかなくない? ウチだったら変に気遣われるより、そうして欲しいし」


「・・・・・・そうだよな」


 正論である。ただ俺は三人の事はあまり知らず、三人に好きな気持ちはまだない。やはり友達から始めるべきなのか・・・・・・。

 そんな事を考えていると、いつの間にか叶美はスマホから視線が外され、俺の方をジッと見ていた。なぜか怪しまれている。一体どういうことだよ。


「それさ、お兄ちゃんの話?」


「へぇ? そ、そそそんなワケないだろ!? 俺だぞ?」


「はぁ・・・・・・ずっとお兄ちゃんと一緒にいたんだからそれくらい分かるし。でも・・・・・・そっか、三人に告白されたんだ。ってなに? お兄ちゃんモテ期?」


 どうやらもう俺だとバレてしまった。やっぱり話すべきでは無かったと今更ながら後悔する。


「別にモテ期とか知らんけど・・・・・・今どうするべきか困ってるんだよ」


「さっきも言ったけど、好きな人に答えれば?」


「その好きな人がいないというか・・・・・・三人の事あまり知らないんだよ」


「ふーん・・・・・・なら妹が好きだから無理って断れば」


「おい、俺はシスコンじゃねぇからな!」


「ここでウチの好感度上げとけばいいじゃん。まあキモいけどね」


「なら言うなよ。ってそれはどうでもいいんだよ! どうすれば良いのか分からないんだよ・・・・・・。一応友達からって答えようと思うんだけどさ・・・・・・」


「それが無難な答えだと思うよ。ただ三人ね。・・・・・・四角関係とかドロドロの予感しか無いんだけど」


「おい、やめろ!? 多分大丈夫だと・・・・・・思うよ?」


「疑問系だし。てか恋は盲目って言うし、トラブルしか起こらなそうだと思うけどね。お兄ちゃんが刺されないことを祈るよ」


 そんな事を言われて不安しかない。

 三人に限ってそんな事はしないと信じたいが、そこまで三人の事は深く知らない。これからどうなるのか、俺は不安を抱いたまま自室へ戻った。

 ベッドに横になるとスマホが鳴った。

 SNSを開くと、相手は黒畑からだった。


『先輩♪ 今何してますか?』


 昨日の今日で俺はどうするべきか悩んでいたところに、黒畑からのメッセージ。まるで告白の事なんて無かったかのような文面。俺は当たり障り無い返信をした。


『ベッドに横になって、ぼーとしてる』


『何ですかそれ(笑) ってちょっと気安いですかね? あたしとしては先輩とこうして会話していきたいなーって、ちょっとハズいこと言いました』


『別に・・・・・・構わないけど?』


 俺としても可愛い後輩とこうしてSNSのやり取りができる事に舞い上がっている。もし黒畑だけに告白されていたら、おそらく告白を受けて恋人らしいやり取りもあっただろう。

 俺のメッセージには直ぐに既読が付いて、直ぐに可愛らしい動物のスタンプが『ありがとう』という台詞と共に送られる。それから数秒して文章も来た。


『えーっと・・・・・・昨日の事ですけど、そ、そんなに返事は急ぎでは無いですけど・・・・・・あたしとしてはいつ返事が来るのかって待つのも・・・・・・アレでして・・・・・・さ、催促ではないんですよ! う・・・・・・やっぱハズい。せ、先輩! おやすみなさい!』


 これ以上黒畑からメッセージは来なくなった。時間もまだ18時前なので、まだおやすみの時間ではないのだが、俺もなぜかおやすみと返信していた。

 俺は今日一日の事を振り返った。

 三崎さんや花渕先輩、黒畑、告白されて翌日に声を掛けられて、三人は俺の告白の返事を待っているような様子だった。このまま返事を延ばすのも悪いだろう。なら直ぐにでも返事をする必要がある。ただまだ俺の中に誰が好きで告白を受けるのか悩んでいる。三人の事は俺は知らない。これから知るためにもまずは友達から始めるのが道理なのだろうか。

 もう既に俺は三人に対する返事は決まっていた。

 なら明日、三人に返事をしよう。

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