第16話●護衛騎士の苦悩
パタンとロゼリアーナ様のお部屋の扉が閉まりアムネリアがリビングルームに戻って来た。
「アムネリア、ロゼリアーナ様はもうお休みされたのか?」
「はい、やはり前王妃様との面会に気疲れされたのではないかと。お顔にも少し表れていらっしゃいました」
「そうか。明日の朝はゆっくりしていただこう。
ところで少し相談したいことがあるのだか……」
「どのようなことですか?」
「うむ、私は一昨日書類の箱を受け取ってから、教会にお
そうなのだ。ふわふわと浮いたような、思考力を奪われるような不安を感じる。
「全て現実ですよ。リカルド様は今の状況を受け入れられていないのではありませんか?それで現実逃避のようになられていらっしゃるのかもしれませんね。
私もロゼリアーナ様があまりに落ち着いていらっしゃるので、急な日常の変化にハラハラしてしまう自分がおかしいのではないかと悩みながらお世話させていただいているのです」
向かいのソファーに座り、両手を組んで口元に当てながらアムネリアもまた同じような心持ちだと教えてくれた。
「そうなのだろうか。私は口下手なせいかうまく言えないのだが、今回のことはありえないことがありえないほどスムーズに進んでいるのではないだろうか」
私は何を言っているんだ。
いや、そうだ。おかしなことがおかしなまま誰にも修正されることなく、そのまま捨て置かれているのではないだろうか。
多くの人間が関わっているのに誰もそれに注目することなく見逃してしまっているのでは……。
私の説明がわからなかったのか、アムネリアはテーブルの真ん中辺りに視線を向けたまま動かなかったがしばらくすると顔を上げた。
「そう、なのかもしれませんね……。でも私はロゼリアーナ様がお決めになられたことですのでお手伝いさせていただくだけです。この先に選択肢があるのなら、私はロゼリアーナ様がお選びになる道を一緒に進むだけです」
まっすぐな目で力強い声。
「あなたの強さがうらやましいです。
本来の私の主は国王陛下です。私にとって国王陛下もロゼリアーナ様も等しく大切なお方です。なので、どちらかが悲しい想いをされているこの状況が苦しく思えるのです」
アムネリアに比べて弱い声。
「リカルド様の優しいお
ニコリと微笑みを浮かべて頷かれてしまったが、気恥ずかしさよりも自分の不安感を受け入れられたことを安堵した。
「ありがとう。だいぶすっきりした気持ちになれた。
アムネリアも疲れているところをすまなかった。ゆっくり休んでくれ」
「いえ、ロゼリアーナ様をお守りする仲間ですもの。お役に立てたのなら嬉しいです。それでは失礼いたしますね」
アムネリアは立ち上がると一度ロゼリアーナ様のお部屋へ視線を送った後、軽くおじぎをして自分の部屋に入っていった。
リビングルームのソファーに残った俺は、アムネリアがいた向かい側を見るともなく考える。
アムネリアの言葉は衝撃的だった。
現実逃避か……したくもなる。
今の状況を受け入れられないのは確かだ。
あれだけロゼリアーナ様を溺愛されていた陛下なのだから、もし何かの手違いであったのであれば、こんな状況になって何も行動を起こされないはずがない。
それなのに、この二日間、ロゼリアーナ様は普通に出かけられるし、城から捜査の兵が出されるような変わった様子も特に見られない。
やはり陛下のお気持ちが変わられてしまったんだろうか。
隊長、私はこのままロゼリアーナ様を辺境伯領までお送りしてしまって良いのでしょうか。
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