第8話●アクセサリー店
目を覚ますと広いベッドに一人で寝ておりました。
見慣れない天井、見慣れないカーテン、慣れない一人きりのベッド。
体を起こし、ベッド上でしばらくエドワードの健康を祈り、伸びをしてからベッドから降りました。
カーテンを開けると今日も天気が良いようです。
コンコン
『ロゼリアーナ様、お目覚めですか?』
「アムネリア、起きてますわ」
答えるとアムネリアが入った来て窓を見ました。
「おはようございます。申し訳ありません、カーテンを開けさせてしまいました」
「いいえ、いいの。私が外を眺めたかっただけですから」
「そうでしたか、それでも明日からはもう少し早くお声をかけるようにいたしたす。
朝食も部屋へ運ばせる手配をしましたので、身支度をさせていただいてよろしいでしょうか?」
「ええ、それでいいわ。ではお願いね。あ、今日から衣装も髪も動きやすいものがいいわね」
アムネリアは始めにボウルにお水を持って来ると、お城にいたときの手順で私の身だしなみを整えてくれます。
私の腰まである銀髪は編みづらいけれど、アムネリアは器用にサイドを三つ編みにしてハーフアップにしてくれました。
衣装は昨日より若干裾が短めの水色のワンピースで、靴は編み上げの薄茶のショートブーツ。
私の要望通りに仕上げてくれるアムネリアは本当に素晴らしい侍女ですね。
※※※
朝食をいただいてからリカルドにも座ってもらい、これからの予定を伝えました。
数日は城下町を散策して回る。
義母上様、つまり前王妃様にご挨拶に伺う。
実家の辺境伯領へ向かう。
義母上様へのご挨拶はアムネリアが連絡を取ってくれるので、先方のご予定に合わせることになりますね。
「今日はこの通りのお店を見て回りたいわ。昨日こちらの宿屋に来る途中で気になるお店がありましたの」
「昨日おっしゃってくださればその場でお寄りしましたのに」
「あら、アムネリア、それではゆっくり見られなかったでしょう?お楽しみは取っておくものです。さぁ、行きましょう!」
宿屋から出るとアムネリアが左前、リカルドが後について歩きます。
昨日見つけたお店のショーウィンドーには太陽の光でキラキラ輝くアクセサリーが飾ってあり、近づくたびに胸が弾みます。
お店に入るとカウンターから店主らしい方が出て来て、見せて欲しいものを指差すとケースから出して手渡してくださいました。
始めはシルバー台に小さな碧玉がついた指輪。
受け取ってハッとしました。
婚礼の儀でいただいた指輪が左手の薬指に嵌まったままです。
と、とりあえず右手に嵌めてみましたが、左手の指輪が気になってしまいすぐにお返ししました。
指輪を見るのはやめましょう。
次はバラが彫金された金色のヘアバレッタ。
素晴らしい彫金ですが私の銀髪には合わない色目だったので残念です……ん?アムネリアのブルネットの髪にはいいかもしれませんね、包んでいただきましょう。
他のお客さんが入店されて風が吹き込んできました。
入り口の近くの壁に掛けられていたペンダントが揺れてキラリと輝きました。
近付いて顔を寄せて見ると、木目が美しい8角形の台に何かの鱗のような物が埋め込まれ、金粉をかけてコーティングしてあるようです。
懐かしい。
「ご店主、こちらは隣国で作られた物ではありませんか?」
「おや、ご存じでしたか。おっしゃる通りに隣国の商人から仕入れているものです。なかなか粋な
「本当に美しい拵えですわね……こちらもいただきましょう」
懐かしい思い出に、つい購入してしまいました。
アクセサリー店を出る前に、私が書いた、ペンダントをアピールするメモを一緒に飾ってくださることをお願いしたところ、快く引き受けてくださいました。
城下町で最初に入ったお店は素敵なお店でしたので、出るまでに随分時間が経っていたようです。
「リカルド、お待たせしました。次はどこかでお茶をいただきましょう」
「ロゼリアーナ様、よろしければ私のお薦めのお店にご案内いたしましょうか?ケーキと紅茶が美味しいと評判のお店です」
「まぁ、それは行ってみたいですわ。アムネリア、さぁ、案内してくださいな。次はリカルドも一緒に入りましょうね」
「……はい、あ、いえ……」
「リカルド様は甘いものお嫌いですか?」
「いえ、そうではなく、やはりロゼリアーナ様と同席して飲食するのは自分で自分が許せないのです」
「そうですか。ではリカルドは離れた席でいただくなら大丈夫ですわね。さぁ行きましょう!」
せっかくですもの、みんなで美味しいものをいただきたいですわよね。
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