第3話●護衛騎士リカルド
「王太子殿下おめでとうございます!」
「王太子妃殿下おめでとうございます!」
美しい青空の下を白馬二頭に引かれ鮮やかな花で飾られた馬車に乗るお二人に、沿道にかけつけた民衆たちから祝福の声が送られる。
祝福の声は馬車が通り過ぎても途切れることなく、祝福した民衆たちの期待に満ちた笑顔がこの国の未来を信じていると証明しているように見えた。
先ほど国教会にて執り行われたのは、トライネル王国の第一王子、エドワード・ダ・ラル・トライネル王太子殿下とロゼリアーナ・メイナ・パラネリア王太子妃殿下の婚礼の儀。
近隣国の王族、トライネル国内の高位貴族の多くが参加した婚礼の儀は、両殿下の幸せに溢れた雰囲気とわずかにいきすぎた行いに苦笑が出るほど甘いものでした。
私、リカルド・ドメトロスは王太子妃殿下付きの護衛騎士として王太子殿下の親衛隊から選ばれた。
親衛隊隊長からは何故か心配されたが、私も親衛隊に選ばれていた騎士なのだからもう少し信頼して欲しいものだ。
日中の婚礼の儀、パレードの後、夜になって披露宴が始まると、華やかなドレスを着たご婦人方がパートナーの紳士に連れ添われて続々と会場入りされた。
主役のお二人のご挨拶とダンスで始まった披露宴では、王太子殿下が王太子妃殿下をご自分の隣から離されることなく独占欲を見せられましたので、他国の目もあり、さすがに国王陛下に注意されるほどでした。
王太子妃殿下になられたロゼリアーナ様はパラネリア辺境伯爵のご令嬢で18歳だとか。
王太子殿下は20歳。
王太子殿下が遊学中でいらした3年前に隣国で一目惚れされたらしく、隊長が大変な苦労をしてようやく婚約まで行き着いたんだ!と、親衛隊の隊員主宰で開いた隊長を労う会で荒れていらしたのが懐かしい。
ロゼリアーナ様は美しくてお優しい。
ご結婚当初、王太子妃殿下と呼び掛けていた私達に堅苦しいのは嫌いだから名前で呼ぶようにとおっしゃって照れ笑いされた。
王太子殿下からはピリピリした雰囲気を感じたものの、王太子妃殿下のご希望だからと側仕えの者数人のみにお許しが出た。
話し合いの上、私と侍女のアムネリアの他に侍女二人だけがお名前で呼ばせていただくことになった。
この後から王太子殿下から私への風当たりが強くなった。
※※※
王太子殿下の婚礼の儀から半年後、ご側室を病気で亡くされた国王陛下は体調を崩され、政務に支障が出始めるようになった。
それに伴い周りのお偉い方々が王太子殿下に戴冠するよう進言をするようになった。
なかなか回復の兆しが現れないことに意気消沈した国王陛下からも退位のお話を直接聞かされると、それまで渋っていた王太子殿下も首を縦に振るしかなくなり、婚礼の儀からわずか2年後に戴冠の儀が執り行われることになった。
ご結婚されてから王太子としての執務、他国の王室とのお付き合い、体調を崩された陛下の政務の補助など、とにかくお忙しく過ごされていた王太子殿下にとって、ロゼリアーナ様とお過ごしになるわずかな時間が癒しの時間であったことは近習仲間で知らない者はいなかったはずだ。
※※※
「よろしくなくてもこうして届けられたのだから仕方ないわ。リカルド、こちら提出してきてね。アムネリア、私の支度とこれからの手配をよろしくね」
宰相補佐になった者から挨拶とともに持ち込まれた箱の中には一枚の書類。
ありえない。
あるわけないですよ、ロゼリアーナ様!
ですがロゼリアーナ様にはありえると思える理由があるご様子のため、私が口を出すことが躊躇われました。
指示に従い教会へ行くと事務局ですんなり受理されてしまいました。
証明書を受け取って戻り、それをロゼリアーナ様にお渡ししました。
ロゼリアーナ様が書かれたお手紙と証明書を王太子殿下の執務室に届けるよう手配したあと、アムネリアと共にロゼリアーナ様をご実家へ送るために城を出ました。
これで良かったのでしょうか、隊長……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます