第2話 ベリーちゃんです☆
「しかし、本当にこれで人が死ぬのか? 実感が湧かないんだが」
これから30人ほど死ぬそうだが全くわからない。
「まぁ、正直そういう感想になるよね。私だって直接やるわけじゃないからそこまでじゃないし。でも死ぬのは確かなはず」
「そうか……」
ベリーの言葉に一瞬現実に戻らされる。こんなことで人が死ぬのか?
ま、関係ないか。どうでもいいや。
「実はさぁ、もうちょっとお金が欲しくてさ」
「ん? なんで?」
「このゲームには天井っていうのがあってさ。300回引くとおまけでもう一体ついて来るんだよ。これ結構金が厳しいんだけど今ならできるからさ。後、200回引けばいいから、6万円程必要なんだわ」
「へぇー。よくわかんないけど、引いてみれば良いんじゃないかな?」
「だよな。6万って事は600か」
アプリを起動する。欲しい金額じゃなく、人数を入れろっていうのがめんどくさいな。そこら辺の仕様考えておいてほしかった。
「天井まで引いたけど途中までは微妙だったなぁ。まぁいいけど」
自分の金で引いてるわけじゃないしな。
「ベリーちゃんはよくわかんないや」
ベリーの頭の上には疑問符が浮かんでいそうだった。
「ベリーはやっぱり天界とか、そういうところに住んでんのか?」
「んー、まぁそんなところ。用事があったら降りてくる感じ」
「天界って面白いの? どんな所?」
「んー、企業秘密だよー」
「あっそ」
割と興味があったんだけどな。
「彼氏はいるの?」
「ナンセンスな質問だね。乙女の秘密だから教えられません」
「あっそ」
これも割と興味があった。
「夢とかあるのか?」
「唐突な質問だね。なんで?」
「いや、なんかぼーっと生きてそうだし」
「酷い!」
ベリーがぷんすかと怒る。
「いや、ごめん」
「ベリーちゃんにだって夢ぐらいあります!」
「どんな?」
興味がある。
「皆が安心して欲望をかなえられる、そんな世界が作りたいなって」
「よくわからんが、ろくでもない夢だ」
「そんなことないよー。平和な世界だよ。そういう世界って。欲望のために争って人が死ぬのがベリーちゃんにはつらいのです」
「今、やってることは何なんだ」
矛盾を感じる。
「そんなこと言われても、神様からの依頼でもあるし、ベリーちゃんが願ったって神様が叶えてくれるわけじゃないし。まぁ神様は誰の願いも聞き入れてくれないんだけど」
「逆らっちまえばいいじゃん」
「そんな事やったらベリーちゃんが殺されちゃうよー」
ベリーは泣き真似を始める。
「俺はさ、夢とかなくてさ。このまま特に何もなく過ごし続けるのかなぁって」
「ふーん。とりあえず、欲望のままに生きればいいんじゃない?」
「欲望のままにか……。ま、それもいいかもな」
色んなヴィジョンが浮かび上がる。
「そうだ。何度も天井引いてみればいいじゃん!」
俺は欲望のままに思いつく。
「ん? まだ引くの? もう手に入ったんじゃないの?」
ベリーが疑問の視線を向ける。
「このゲームにはキャラとは別に武器っていうのもあるんだよ。そっちはいくら課金しても足りないんだわ。だからもっと課金するぜ」
「ふーん」
ベリーはほほ笑んでいた。
「気分がいいな。ちょっとアイス買ってくるわ。ベリーにもやるよ」
「ありがとー」
―1週間後―
「こんなに課金する必要あった?」
ベリーが苦笑いしながら聞いてくる。
「いやぁ、ただで引けると思ったらついつい課金しちゃって」
こっちは笑いながら返す。
「だって、やってないゲームにも課金してるじゃない? 意味がないと思うんだけど」
ベリーは理解できないという表情をする。
「わかってないなぁ。今まで売り上げで上位に到底なりえなかったゲームが俺の力で唐突に一位になるんだぜ。愉快痛快だよ。ネットの反応だってすごいんだぜ。集計ミスだとか捏造だとか。中には金持ちの戯れだとかいうやつもいるけどこれが一番正解に近いな」
ちっちっと指をふる。
「でも人が死んでるよ?」
「なんだよ。水差すなよ」
ベリーが唐突に萎える言葉をかけてくる。そんなことどうだっていいだろ。
その時”ドンドンドンドン”と激しくドアを叩く音が聞こえる。
「おい! 士郎! 開けろ!」
父さんの鬼気迫る声が聞こえる。
「なんだよ。父さん」
嫌な予感がしながらドアを開ける。
「落ち着いて聞けよ。買い物中に母さんが車にひかれた……」
「は?」
その言葉を瞬時には理解できなかった。
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