第641話 サンド・イィィッ!チコウ爵
とっさにラオウは背後へと振り返る。
なんとラオウの目の前には不気味なオッサンが一人、素っ裸で立っていた。
ぬっと突き出されるその青白い表情。
だが、その表情は両サイドを四つ折りの新聞ほどの大きさのパンに挟まれていたのだ。
不気味に笑う紫色の唇。
その間から吐き出される生臭い息の温かさがラオウの鼻筋に伝わってくるようだ。
「大切なので!
どうやら先ほどの声は、このオッサンから発せられたので間違いない。
「一体なんのことだ!」
しかし、あれだけ遠くに聞こえていたはずの声が、もうこんなに目の前とは……
――コイツ! 何奴!
これでもラオウ。南斗
いまや、あそこの脱毛は男もおこなう時代!
いや、ハイレグパンツをはくからこそ必要なのである!
だが、男性としては、あそこの脱毛を美人のお姉さんにしてもらうと、どうしても脱毛だけでおさまらない。
もくもくと毛を抜き取っているお姉さんを見ていると、どうしても棍棒がむくむくと天を突きさしてしまうものなのだ。
しかも、毛を抜くたびにお姉さんが棍棒をそれとなく持ち替える。
だが、何度も何度も棍棒にタッチされ続けると、ついには上杉勝也!
そう……事故死! あくまでも事故なのだ……
自然とイマラッチョビームが発射されたとしても、それは決して本人の意思ではないwww
だが、女性のほうからすると生理現象だと分かっていても、いい気持ではないだろう。
そして、仕事だと割り切り笑顔で「大丈夫ですよぉ~」とティッシュで拭いてくれるのだが……それはそれで、罪悪感がよぎるモノなのである。
しかし、脱毛をしてくれるのが美女でなく、男であればどうだろうか?
そう、男であったとしても上杉達也! 立つものは立つ(ん)やwwww
そして、タッチされ続ければ否が応でも事故死するwwww
ならば! 事故死するよりも先に脱毛を終わらせれば男性諸君は喜んでくれるのではないだろうか?
そのコンセプトをもとに発案されたのが南斗パイパンや拳!
目にも止まらないスピード!
アタタタタアタアタア!
それは北斗シイタケをも凌駕する!
だが、ふたを開けてみると、男たちはこぞって美女の店に列をなしていた。
そして、南斗パイパンや拳は客が来ることもなくすたれてしまい……ラーメン屋になったという訳なのだ。
そんなラオウが気配すら感じなかった。
どれだけのスピード! 恐るべし!
って、当たり前かwww
あっ! ちなみに作者は脱毛ショップには通ったことがないので、あくまでもフィクションですwww
「我が名は『サンド・イィィッ!チコウ爵』! デスラー副イィィッィィィン長によって地獄の淵から舞い戻った男!」
何を隠そう!この『サンド・イィィッ!チコウ爵』なる男! あのデスラー副委員長によって作られた男だったのである。
ということは、第三世代の融合加工でも施されたのだろうか?
確かに、顔の両サイドを大きなパンに挟まれている当たり、デスラーらしい改造といえば改造である。
だが、その挟まれている顔色が少々おかしいのだ。
しいて言うならば、死人のような顔色?
というか……こいつの顔……腐ってるんじゃね?
そう……不気味に見えていたのは、顔のいたるところの肉が腐り、溶け落ちはじめていたからなのである。
それはまるでゾンビ!
パンにゾンビが挟まれているのだ!
これこそまさに!ゾンビのサンドイッチ! って、食えるんかいな?こんなもん。
そんなゾンビが、あっけに取られているラオウの手からルリ子の足を奪い取った。
「小さ・イィィッィィィ! お前の持つ棍棒が小さ・イィィッィィィ! 女の顔に押し付けるのなら、もっと大きくなるべき・イィィッィィィ!」
「小さ・イィィッィィィ! お前の腰の動きが小さ・イィィッィィィ! 女の顔に押し付けるのなら、もっと激しく動くべき・イィィッィィィ!」
「小さ・イィィッィィィ! お前の度胸が小さ・イィィッィィィ! 女がいくら嫌がっても、もっと激しく突っ込むべき・イィィッィィィ!」
そして、『サンド・イィィッ!チコウ爵』はルリ子の後頭部をつかんでいきなり自分の股間に押し付けたのだ。
「おげぇぇぇぇぇぇえ!」
瞬間、ルリ子の鼻孔の奥に生臭い臭いが突き抜ける。
いや突き抜けるといった表現は生ぬるい。
鼻の奥から喉の奥に至るまで、ものすごく強烈な匂いが一気にドバッっと流れ込んできたのである。
「おげぇぇぇぇぇぇえ!」
それは、まさに耐えがたい匂い……
――臭い! 臭い! 臭い! 臭い!
今や逆さづりにされるルリ子の頬をつたい生臭い液体が地面へとボタボタと垂れ落ちていた。
「ゆ……許して……もう、これ以上、耐えられない……」
『サンド・イィィッ!チコウ爵』はその反応がよほどうれしかったのだろうか、更にルリ子の頭を股間に押し付けて腰を激しく振り出したのである。
「イィィッィィィ! イィィッィィィ! イィィッィィィ! 気持ちイィィッィィィので
「ルリ子!」
瞬間! 我に返ったラ王は、とっさにルリ子の体を引っ張った。
これでもラオウ、日ごろからラーメンの麺打ちで筋肉を鍛えている。
そんな怪力で無理やりルリ子の体をゾンビから引き離したのだ。
「イィィッィィィ⁉ イィィッィィィ⁉ イィィッィィィ⁉」
ルリ子を取られれてパニック状態になるゾンビ。
そう、彼はまだイマラッチョビームを発射していなかったのだ。
そりゃ、途中とあれば怒り心頭というのもうなずける。
だが、実は、彼の怒りはそんな理由ではなかったのである。
自分の股間を見つめる『サンド・イィィッ!チコウ爵』……
「イィィッィィィ⁉ イィィッィィィ⁉ イィィッィィィ⁉ 俺の棍棒が潰れちゃってる! イィィッィィィ⁉ イィィッィィィ⁉ イィィッィィィ⁉ なんでぇぇ⁉」
そう、『サンド・イィィッ!チコウ爵』の股間がペッチャンコのまっ平になっていたのである。
本来、そこにそそり立っていなければならない棍棒。
それが、押しつぶされて、平べったくなっているのである。
それは、ルリ子の顔を股間に押し付けた時のこと……おそらくゾンビで目が悪かったせいなのか……少々、高さを見誤ってしまったのだ。
本来は棍棒を口に押し当てるはずだったのだが、逆さづりにされたルリ子のアゴへと勢いよく押し当ててしまったのである。
当然、腐った棍棒は……硬い顎に押しつぶされてプチっとつぶれた。
そして、中に詰まった腐った液体が逆さづりにされたルリ子のアゴから鼻へとかけて勢いよく垂れていき、地面にボタボタと落ちていたのである。
「おげぇぇぇぇぇぇえ! ゆ……許して……もう、これ以上、耐えられない……」
だが、その液体は肉が腐った腐汁。
そんな腐汁が天を向いたルリ子の鼻孔へと流れ込んでくるのだ。
もう、それはシュールストレミングなどの比ではない。
というのも、この腐汁は、もう食べ物ですらないのだ……
えっ? この展開はエロじゃなかったのかだって?
こちとらイキグルう所を期待して、パンツを脱いで待っていたんだぞ⁉
何を期待してんだよ! エロじゃねぇよ! この変態ww
だが、変態と言えども『サンド・イィィッ!チコウ爵』はゾンビ。
腐った体が潰れても痛みすら感じなかったのである。
だから、ルリ子の体が離れて、はじめて自分の体が潰れて何もなくなっていることに気がついたのである。
「イィィッィィィ⁉ イィィッィィィ⁉ イィィッィィィ⁉ なんでぇぇ⁉」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
ラ王の腕の中からずるりと落ちて、地面に膝をつきながら肩で息をするルリ子。
髪が乱れうつむく様子はなんだか……エロい!
「おぇぇぇぇぇ……」
口を押えてなんどもえずくが、いまだに鼻の奥に流れ込んできた腐汁が残っていた。
そんなルリ子をかばいながらラオウは拳を繰り出した。
「南斗パイパンや拳! ほわたぁぁぁぁぁ!」
ボコっ!という音ともに『サンド・イィィッ!チコウ爵』の顔面がへこんだ。
その一撃ははた目から見れば単に一発のパンツ、じゃなかったwwwパンチ! だが、それは目にもとまらぬスピードで繰り出された数十発のコブシであったのだ!
ラオウは、もう南斗パイパンや拳は使うまいと思ていた……
だが、今、ルリ子に危機が迫っている。
ここでルリ子を失えば……
――俺は、この先どうすればいいのだ……
そう、人の来ない店に通い続けてくれたのはルリ子だけだった……
それも毎日、毎日……休みなく……
ルリ子のために毎日作る一つのアンパン……それがラオウの心の支えになったことは間違いなっかった。
そんなルリ子にひそかに寄せるラオウの心……
それは、まさに恋心……
な!訳あるかい!
――あのガキ! アンパンの代金を今だ一銅貨も払っていないんや!
そう、ルリ子は、今までのアンパンを全てツケで食っていたのである。
今、ルリ子を失えば、溜まりに溜まったツケの代金は回収不能になってしまう!
そうなれば、どうやって店の運転資金を確保すればいいというのだ。
アンパンだって、材料代はかかってんだぞ!
だからこそ! どこぞのホストクラブも言っていた。
売掛金の回収は、しっかりと!
金が払えぬというのなら!
――ホストクラブのやり方同様に風呂屋に売るまでのことよ!
そう! この先、銭湯の風呂焚きのバイトでもしてしっかりとしてもらい、稼いでもらうのだ!
そして、店の運転資金を何とか回収!
でなければ、店はつぶれてしまう!
それまでは、何としてもルリ子を失うわけにはいかないのだ!
「顔がつぶれて力がでないよぉ~」
つぶれた顔を押さえながら後ずさる『サンド・イィィッ!チコウ爵』。
だが、そんなゾンビの背後から、また別の男の声がしたのだ!
「サンド・イィィッ!チコウ爵! 新しい顔よ!」
ポイ!
と投げられた一つの生首が、ピュィーンとサンド・イィィッ!チコウ爵の頭を目指して放物線を描いた。
もしかして! これは!
ア〇パンマンが、バ〇キンマンによって顔をへこまされたときに、ジャムお〇さんによって新しい顔に取り替えられるという伝説の生首交換!!
ということで、予想通りwww
パコーン!
と、つぶれた顔が後ろから飛んできた新しい顔に押し出されて置き換わった。
「元気100倍! サンド・イィィッ!チコウ爵!」
ガッツポーズをとるサンド・イィィッ!チコウ爵の背後では、なんだか虹色の光がクルクルと回っているような気がしないでもないwwww
だが、先程まで体につながっていたはずの生首は、いまや地面に転がりながら口をパクパクと動かしていた。
おそらく、肺とつながっていないため声が出ないのだろうwww
とりあえず、読唇術を駆使して何を言っているのか推測してみようwww
「おーーーい、俺はどうなるんだよ!」
って、落ちたパンは廃棄に決まっているだろうが!
そんな……もったいないことがよくできますよね……
でも、この頭……腐ってんだぜwwwwゾンビだけにね♪
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