第542話 勘違いしないように!
「待て! コラ! この先は行き止まりだぞ!」
だが、オッサンのスピードは落ちるどころか、さらに増す。
廊下の先に見えている漆喰の壁に向かって突っ走る!
――なら、仕方ない!
走りながらタカトはビン子に叫んだ。
「ビン子! 『ガールズ! アン・ドゥ パンツ、ぁー!』を出せ!」
その言葉の意味が分からないビン子。
いら立つタカトは声を荒らげる。
「なんでもいいから、『ガールズ! アン・ドゥ パンツ、ぁー!』を出せ! 持ってるんだろ!」
慌てたビン子は、いつもの習慣で肩にかけていたカバンから、『ガールズ! アン・ドゥ パンツ、ぁー!』を取り出して、前を走るタカトに渡した。
「ハイ!」
それを受け取るタカトは叫ぶ。
「『ガールズ! アン・ドゥ パンツ、ぁー!』ライオンモード起動!!」
そう言うと、箱の底にあるスイッチを切り替えた。
説明しよう!
『ガールズ! アン・ドゥ パンツ、ぁー!』とは、ランジェリーショップで美女が好みそうな高級パンツを選ぶための道具だそうだ。
だがまぁ、その実は、「金」目のものならなんでも反応するタダの金食い戦車であった。
そんな戦車に、ライオンモードと言う裏モードが設定されていたのだ!
ウォォォォォォォン!
ライオンのような唸り声をあげる『ガールズ! アン・ドゥ パンツ、ぁー!』
その姿はそまさにレーヴェ重戦車をおもわせる!
ちなみにレーヴェとはドイツ語でライオンと言う意味だよ。
タカトが持つ『ガールズ! アン・ドゥ パンツ、ぁー!』の砲塔がくるりと回ると、先を走るオッサンの背中に狙いをつけた。
「発射ぁあぁっぁァァ!」
タカトは叫び声をあげるとともに砲身を激しくこすった。
ドピュ!
と言う音と共に、砲身の先から白い液が飛び出した!
だが、その一撃は重戦車らしく、おそらくその破壊力は凄いはず!
処女膜どころか卵膜をも簡単に突き破ることだろう。
一撃必中! 絶対妊娠!
これでオッサンもタジタジだ!
と思ったら。
ドピュ! ドピュ! ドピュ! ドピュ! ドピュ! ドピュ!
連射しやがった!
レーヴェ重戦車とちゃうんかい!
実は……ライオンってね……
発情すると一週間やりっぱなしなんだって……
しかも、数十分ごとに発射する。
人間では考えられないような、連続発射!
もう、タフなんだから……ポッ♥
じゃねぇよ!
しかも、タカトが走りながらこすっているもんだから、『ガールズ! アン・ドゥ パンツ、ぁー!』の照準は全く合ってない!
四方八方に飛び散る白い汁。
そのうちの一発が真音子の顔にベトリ!
白い液は、ゆっくりと頬をつたって唇へと垂れ落ちていく。
口角から少し突き出された小さな舌先が白濁の液を絡めとる。
驚く真音子は目をまん丸くしていた。
その様子は先ほどまでの恐怖を忘れているよう。
……ワタシ……汚されちゃった……
もう、女の子はオマセちゃんだから、いろいろなことを知っているものなのよ!
って、これはちょっと早すぎかwww
カウボーイハットのオッサンの目の前には漆喰の白壁。
もう、逃げ道は無い。
「追い詰めたぞ!」
いまだ、タカトは『ガールズ! アン・ドゥ パンツ、ぁー!』を連射させながら追いかけていた。
って、それ、全く役に立ってないがな!
せめて、オッサンの足止めぐらいできへんのかい!
――いやぁ、オッサンの足に当たったら、ガビガビに固まって床と引っ付くかなぁって思って……
いやいや、ムフフな本にドピュっとするわけじゃないんだからさ……それは普通に考えて無理だろ!
漆喰の壁に向かうオッサンの体が、タカトの目の前でひょいと飛び上がる。
すると、オッサンの背よりも高い漆喰の白壁の上にさっと飛び乗った。
えっ⁉
その身軽さにタカトたちは唖然とするばかり。
てっきり追い詰めたものばかり思っていたのに、それはないだろ。
と言うのも、あのオッサン、真音子と大袋を担いで飛び上がったのだ。
まるで忍者。
「じゃぁ! 少年! またな!」
オッサンは壁の上から余裕の表情でタカトを見下ろす。
そう言い残すと真音子と大袋を抱えたまま壁の向こうへと飛び降りた。
「コラぁぁぁぁ! 真音子を放せ!」
タカトは目の前の壁に向かって叫ぶも、真音子の助けを呼ぶ声がどんどんと小さくなっていく。
そんな壁の向こうから夜更けの街に響き渡るようなオッサンの声が返ってきた。
「少年! この子、とりあえず神民街を出るまでは人質として預かっとくわ!」
「真音子っ!」
そこに駆けつける
「真音子はどこや!」
タカトの肩を力いっぱいに揺すった。
激しく揺れるタカトは、事の顛末を掻い摘んで話した。
「で、ワレは、真音子がさらわれていくのを黙ってみとったんか!」
「仕方ないだろ! 壁を越えて逃げたんだから!」
「真音子が……ワテの真音子が……」
途端にうずくまり泣き声を上げる
先ほどまでの威勢が嘘のようにワンワンと泣き出した。
タカトはそんな
「今から、追いかけるぞ!」
「でも、真音子の居場所が……分からへん……」
「大丈夫だ!」
顔を上げた
こっ! これは!
あの魔の国でハヤテの声を聞いたという『ワンちゃん! 一緒にお風呂に入りましょセット!』
本来は、この犬耳により乙女のため息を聞きつけてそして、落ち込んだ心にまさに、あどけない子犬のように甘いき泣き声ですりよって、ついに一緒にお風呂にゴールイン! という素晴らしい道具のはずだった。
だが、その実は犬の声を聞き、犬と話ができる画期的な道具。
そして、その鼻もまた、犬同様に嗅覚が異常に発達していたのだ。
凄いのか凄くないのかよく分からないのが、タカト君の道具のいいところ!
あっ! ちなみに白い液はエロい液じゃないからね! 勘違いしてクレームをいれないように!
その正体は次回ね! 次回!
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