第381話 超覚醒(3)

「オイ! こいつら天然ものだぞ! 見ろよ! 奴隷の刻印がないぞ!」

 魔人たちはざわめき立った。

「養殖ものじゃないんだ! 天然か! 久しぶりだな天然もの!」

「兄貴! と言うことは、この黄金の弓も、俺が貰っていいんだよな! だって、そいつら食べちゃうんだから!」

 3人目の魔人は一番下っ端なのだろうか。

 大岩の上の黄金弓を手に持ち、エメラルダを掴む長兄魔人に嬉しそうに声をかけた。

「ああ! いいとも! その代わり、お前が食うのは、あのひょろっとした男だからな!」

「ちぇっ! いいよな。兄貴たちはいっつもおいしいところばかり持って行って。俺も女のやわ肉の方がいいよ」

「その代わり、お前はその黄金の弓を持って行くんだろうが!」

「うん……でも、人間の女の肉の方がいいなぁ……」

「このデカい女は俺のだからな! 分かったな!」

「分かったよ……」

 残る二人の魔人はうなだれた。


「ちょっと待て! その巨乳は俺のだ!」

 ――だれだ! 俺たちに喧嘩を売るのは!

 その声の主へとに3人の魔人たちの視線が集まった。

 そこには、偉そうに胸を張るタカトの姿。

 カッコいいぞ! タカト君!

 ただ、下半身はガクガク! ブルブル!

 今にも、腰が砕けてしまいそうな雰囲気だ。

 カッコ悪いぞ……タカト君……

「なんだと、小僧! お前から先に食ってやろうか!」

 エメラルダを掴む長兄魔人の緑の目が、タカトをにらむ。

 ひっ!

 その威勢に、ひるむタカト。

 だが、おびえながらも小剣の剣先を長兄魔人に向けた。

「は……はなせ! エメラルダの姉ちゃんを放せよ!」

 長兄魔人は鼻で笑うと、立てた指先を軽く動かし指示を出す。

 それに応じるかのように、三匹のゴリラの魔物が、ゆっくりとタカトに体を向けた。

 ――あかん! あかん奴や!

 既に、震えは、下半身から全身へと感染し、顔面は涙で完全崩壊していた。

 だが、それでも剣先は降ろさない。

 タダ……剣先が、小刻みどころか、ガタガタと音を立てながら揺れているため、うっとおしいったらありゃしない。

 そんなタカトを見かねたのか、半魔犬のハヤテが、タカトの前に躍り出た。

 牙をむき、頭を低く下げ、ゴリラたちを威嚇する。

 低いうなり声をあげるその鼻すじには、何本ものしわが渓谷のように深く刻まれていた。


 しかし、ゴリラたちの歩みは止まらない。

 まるで、半魔の犬など、眼中にないかのように、そのスピードは変わらなかった。

 そこからゴリラたちが加速する。

 それに応じるかのようにハヤテもまた、先頭のゴリラへと突進する。

 一方、タカトは、腰が砕けた。


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