第374話 オッパイこそ正義!(4)

 巨乳こそ正義!

 巨乳こそ絶対神!

 巨乳の前ではいかなる毒も効果がないのだ!


 って、そんなことあるかい!

 貧乳だって、素敵なんじゃい!

 貧乳こそ、この世の未来!

 人類の大いなる可能性なんじゃい!

 などと、ビン子が申していたかどうかは、さておいて。


 エメラルダのおっぱいである。

 話戻っとるがな……

 いや、これで正解なのだ。

 タカトによって、再生された左胸。

 その左胸にその弾力の素材として使われたのが、スライムのタマの半身である。

 スライムのタマは、小門の穴の中でオオヒャクテやクロダイショウなどの魔物たちからさんざんに毒を浴びせられ、強い毒耐性を獲得していたのである。

 その毒耐性の塊の半身が、エメラルダの胸の中に入っているのだ。

 胸を再生維持するために、常に開血解放状態になっているタマの半身。

 もうね、そんじゃそこらの毒など、目ではないのですよ。エメラルダさんは!

 だが、エメラルダは、そのことには全く気づいていない様子。

 まして、施術した本人のタカト君は、おっぱいのさわり心地のみを考えてタマの体を選んだだけ。

 エメラルダが毒耐性を獲得するなんて、夢にも思ってみなかったことだろう。

 とうぜん、誰も知らないのであるから、ネコミミのオッサンが知っているわけはないのである。


 ちっ!

 ネコミミオッサンは舌打った。

 まだ、魔物にでも食べられていれば、任務完了で、レモノワに殺されることはないだろう。

 だが、エメラルダは健在である。

 さすがに、それを放置して帰るわけにはいかない。

 かといって、目の前に群がるカエルの群れを何とかしないと、エメラルダにはたどり着けそうにない。

 人の壊し方は知っていても、魔物相手には簡単にいかない。

 できないことはないが、面白くない。

 大体、悲鳴が美しくないのだ。

 魔物が死ぬ時の悲鳴など、カエルがつぶれて泣くようなしゃがれ声。

 と言うか、目の前にいるのはカエルそのもの。

 もう、悲鳴なんぞ、聞かなくても、想像できる。

 だが、そんなことを言っている場合ではない。

 さっさと、エメラルダを始末しないと、自分たちが、カエルたちのエサになってしまう。

 これだけの数だ。

 さすがに、二人の暗殺者だけでは、手が足りない。


 しかし、ネコミミオッサンに幸運の女神が微笑みかけた。

 そう、目の前には、犬の耳と鼻をつけたビン子が苦笑いを浮かべている。

 皆さんお忘れかも知れないが、ビン子ちゃん、これでも女神様ですから。

 自分が持つ神の恩恵のことなんも覚えてないですけど

 ついでにタカトも頭を抱えてうずくまっているではないか。

 咄嗟に、ネコミミオッサンはタカトの腕をつかみ取る。

 そして、その腕をタカトの背中にぐるりと回し、動きを拘束する。

 タカトの絶叫が響きわたる。

 イテテテテ!

 背後に回された腕がミシミシと悲鳴を上げていた。

 もう一人の暗殺者も、少し離れたビン子を連れて、ネコミミオッサンのそばまで戻ってきていた。

 ネコミミオッサンは、にやりと笑う。

「オイ! エメラルダ! コイツらがどうなってもいいのか!」

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