第373話 オッパイこそ正義!(3)

 暗殺者の体の上にのっているカエルが、ゴリッという音共に口を閉じた。

 遂にカエルから解放された、暗殺者の体が、ゆっくりと後ろに倒れていった。

 真っ赤な血しぶきを噴き上げながらゆっくりと。

 カエルは、嬉しそうに口の中の頭を転がしていた。

 まるで飴玉のようにコロコロと。

 それを見た他のカエルたちが、一斉に、そのカエルに襲い掛かった。

 まさに飴玉の奪い合いが始まったのである。

 より強いものが、獲物を食える。

 カエルたちは、自分が一番強いと言わんばかりに、互いに互いを襲いだす。


 小門から、ネコミミのオッサンともう一人の暗殺者が姿を現した。

 目の前には、首がなくなった仲間。

 その前には、カエルたちが群がった大きな球が出来上がっていた。

 ネコミミのオッサンは、瞬時に周囲を観察する。

 魔の国に入ったとたん魔物と出くわすとは、ついてない。

 と言うことは、エメラルダもすでに魔物の餌食になった後なのか?

 残念そうな表情を浮かべるおっさんの耳に、風切り音が響く。

 咄嗟に身をかわすネコミミのオッサン。

 顔をかすめて何かが飛んだ。

 頬には一筋の赤い傷が浮かび上がってきた。

 オッサンは振り返る。

 岩壁に、光の矢が突き刺さっているではないか。

 この矢が来たであろう方向を、瞬時に睨む。

 その先には、エメラルダの姿が映った。

 生きていた!

 というか、なんで元気やねん!

 ネコミミオッサンは、確かにエメラルダの腕をナイフで切り裂いた。

 ということは、確実にあの女の体内には毒が入っているはずだ。

 この毒は、体の力を奪い去り、確実に動きを止める。

 放っておけば、横隔膜の力も失われていく。

 徐々に呼吸が細くなる。

 真綿で首を締めるが如く、動かぬ体が酸素を求めてもがき苦しむ。

 だが、なかなか死には至らない。

 その苦痛の表情が、一興なのだ。

 だから、ネコミミオッサンは、この毒が大好きなのである。

 解毒の薬でもない限り、この毒からは逃れられないはずなのだ。

 それが、目の前でピンピンと元気に、弓を引いているのである。

 ありえへーん!

 まぁ、相手が不老不死の騎士ならば、神民たちの生気を使い、回復したのかもしれないが、エメラルダはもう、騎士ではないのだ。

 解毒剤も、その辺の薬草で代用できるようなものではない。

 ネコミミのオッサンは、懐の中の小瓶を確認した。

 解毒剤は確かにココにある。

 と言うことは、勝手に治ったのか?

 絶対にありえへーん!


 だが、エメラルダの体から毒がなくなっているのは事実であった。

 ネコミミのオッサンが絶対の自信を持つほどの猛毒である。

 それがなぜ。

 えっ?

 簡単じゃん!

 それは、エメラルダのおっぱいだ!

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