第260話 警報(2)

「これは偽物だぁぁァァ!」

 男たちは叫んだ!

 まぁ、それ以外にも、その命令書、どう見ても、眉ペンで書いてるしね……しょうがない。


 男たちが、コウスケたちを警戒しながら後ずさる。

 ゆっくりと警報に手を伸ばした。


 カルロスの目が男の指先をにらんでいる。

 次の瞬間、男の手が警報に飛んだ。


 それと同じくして、カルロスが跳ねる。そうはさせまいと、足が大きく踏み出されていた。


 ジリリリリリリリリ

 収容所内に警報が鳴り響いた。

 カルロスが天井に備えられた警報を睨む。


 やはり間に合わなかったか……

 いや、男の手は警報の手前で動きを止めていた。

 カルロスのごつい手が、男の華奢な腕を握りつぶしていたのである。

 腕がミシミシと悲鳴を上げる男の体が崩れ落ちる。

 カルロスの腕にぶら下がるように男の体が揺れ動く。


 ひっ……

 もう一人の男はその様子に恐怖した。

 そして、ドアから廊下へと飛び出した。

「たすけてくれぇぇぇえ!」


 ジリリリリリリリリ

 しかし、実際に今、警報が鳴り響いているのである。

 一体誰が警報を押したというのであろうか。

 検査室に残ったカルロス達は、互いに顔を見合わせた。


「侵入者だ!」

 騒然とする収容所内

 人魔収容所内の守備兵たちも慌てている。

 待機室から廊下へと次々と飛び出してくる。

 一体、どれだけの兵がいるというのであろうか?


 真音子とイサクは、温泉でアルテラからタカトが人魔収容所に呼ばれたことを聞いた。

 ――やはり気になる……

 そして、真音子は、タマホイホイがソフィアのもとにあることも知っていた。

 そこで、真音子とイサクは、タカトの様子を探り、あわよくばタマホイホイを奪い返しに収容所に侵入していたのだった。

 身分がばれないように真音子は蝶を模した大きなメガネで、イサクは紙袋で顔を隠していた。いや、イサクはいつもの事か……

 二人は気配を感じさせない。壁にピタリと背をつける。その横にTの字に伸びる廊下。守備兵たちが、背後の方向から無駄話をしながら歩いていく。真音子たちに全く気づく様子がない。なかなかの手練である。

 守備兵たちが通り過ぎると真音子たちは一つのドアに飛び込んだ。

 そこは、死体が山のように多く積み上げられている部屋、そう、廃棄部屋であった。真音子は、その中で人と人魔の食い散らかされた死体を発見する。その死体から、ソフィアの狙いに気づいた真音子は、動揺し、部屋を飛び出した。先程までの、落ち着き、気配を殺した真音子とは異なり、何かに焦り、気が散乱していた。ココは人魔収容所である。たちまち、そんな真音子の姿は、守備兵たちに見つかっていしまった。そう、守備兵たちは、真音子とイサクを捕らえるべく警報を鳴らしたのである。


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