第258話 検査室(3)
コウスケは、収容者たちを連れて、貯蔵室から外に出るドアを開けた。
貯蔵室のドアの向こう側は、一つの部屋になっていた。
コチラも白い部屋。
8畳ほどの小さい部屋である。
部屋の隅に木の机が一つある。
その机の上には、紙が貼りつけられ、貯蔵室の各牢屋の収容者の状態が細かく書き込まれていた。
机の横には、ひときわ大きなゴミ箱が置かれていた。その中には、牢から出された人のものであろう持ち物が、無造作に突っ込まれている。
だが、この部屋には誰もいない。
不用心にもほどがある。
まずこの部屋に、コウスケ、カルロス、ピンクのオッサンが中に入った。
続けて入ろうとしたタカトはドアの入り口でピタリと止まってしまった。
着ぐるみの怪獣の頭がドアの枠に引っかかったのである。
首を前後に振ってみるが動かない。今度は横に振るが動かない。懸命にもがくタカト。
ビン子が一生懸命に怪獣の頭を後ろから押している。というのも、タカトの後ろには、他の収容者達がドアの向こうの部屋に入ろうと列をなして待っていたのであった。
明らかに邪魔者を見るような目である。一体、誰が牢から出したと思っているのであろうか。だが、タカトは、そんな様子を知る由もない。だって、顔は怪獣の着ぐるみの中、周りは全く見えておりません。
「タカト早く動いてよ! みん待っているから!」
ビン子がタカトを押し込む。しかし、ますます食い込み動かない。
「俺に構うなぁ! 俺の屍を超えていけ!」
着ぐるみの頭を両手でギュッと掴んだタカトは、両足を引き上げ大きく左右に広げた。
それって屍ではなくて、股下ですけど……
なんか、カッコイイことを言っているが、その格好は非常に情けない……
収容者たちは、しぶしぶタカトの股下をくぐって部屋の中へと入っていった。
緊張した面持ちの20人もの収容者が一つの部屋に集まれば、かなり圧迫感がある。
相変わらず、タカトはもがいている。ビン子は、今度は部屋の中からタカトの腕を引っ張っている。
なんか楽しそうに見えるのは気のせいだろうか……
この二人だけ世界が違うんですが……
その部屋の奥のドアがいきなり開いた。
その奥から、男が二人入ってきたのだ。
当然、男たちは部屋の中にカルロス達がいることに驚いた。
「お前たち! どうしてここにいる!」
一人の男が警報を押そうと壁に駆け寄る。
コウスケがとっさにその動きを制する。
「あわてるな! これは第8の騎士セレスティーノ様の命令だ!」
移送命令書を男たちの前に掲げた。
セレスティーノの名を聞いた男たちの動きがピタリと止まった。
コウスケは続ける。
「私は、セレスティーノ様の神民、コウスケ。この部屋に入ったが、誰もいなかったので、私が勝手に収容者たちを牢から出した」
移送命令書に目を通す男たち。
「そんな命令は聞いておりませんが……」
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