第257話 検査室(2)
タカトは、即座に断った。
「俺のアイナちゃんをお前に貸すわけにはいかん!」
そう、タカトのティシャツには、お気に入りのトップアイドルのアイナチャンがプリントされている。まぁ、今では、お肌はボロボロ、その肌はゾンビのように紫になっているので、ゾンビアイドルと言った方がいいのかもしれない。
コウスケはあきれた様子で、タカトを見つめている。
――どうせタカトの事だ、アイナちゃんのティシャツを自分に貸すのが惜しいのだろう……
事の重要度より、まず己!
大体、こういう時にタカトが考えることは決まっているのである。
コウスケは大きくため息をついた。
「なぁ、タカト、ココから出ることができれば、アイナちゃんのコンサートのチケットをやるよ!」
「なに! あのアイナチャンのチケット? だが……遠くの国だと見に行くこともできんし……」
「お前は知らんかもしれんが……今度の神民学校の文化祭、アイナちゃんを呼ぶことになったんだ。その最前列チケット! どうだ?」
「コウスケさま! 是非! お願いします!」
タカトは、すぐさまティシャツとズボンを脱ぎ捨てる。
ついでにパンツまで脱ぐ始末。
コウスケの前で膝まづいたタカトは、それらを献上品の如く頭上に掲げた。
一同、その変わり身の早さに驚いた。
マジシャンも驚きの早変わり。
一瞬のうちにすっぽんぽんであった。
ゴソゴソとタカトはコウスケの着ぐるみに頭を通す。
しかし、デカい。
タカトは、モゴモゴと腕を通し、もがいている。
怪獣の着ぐるみを一人で被ることができないようである。
見かねたビン子がタカトを手伝って、背中のファスナーを閉める。
なんでコウスケは、こんなものを着ていたのだろうか
――アホちゃうか?
タカトとビン子は気持ちを一つにした。
コウスケも、タカトのティシャツに首を通してた。
しかし、こちらもモゴモゴしている。
コウスケが、首を通し終わったティシャツの襟首を引っ張り匂っている。
やっぱり臭いのであろうか。
まぁ、そうである。
新しい服はすべてビン子に投げ渡しているのでるから、タカト自身、替えの服など持っていない。
お気に入りと言い張って、アイナチャンのティシャツを、いつでも着まわしている。
着たきり雀のティシャツはタカトの体臭が染みついているはずだ。
そりゃ……若いと言えども男の子。
少々臭いはしますがな……
――タカトの臭いだ……
コウスケがタカトの服をかぎながら赤くなっている。
うん?
臭いのではなく……興奮しているご様子。
あれれ……
オホン!
そんなコウスケを制するかのようにカルロスが咳ばらいをした。
ピンクのオッサンが、コウスケを肘でこづく。
「コウズケ君……帰ってからにしなさい……」
……いやいや、違うと思います。
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これで、作者ヘのエサやりは完了です。
あすから、馬車馬の如く、バシバシ小説書いていると思います。
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