第84話 小門と言う名のダンジョン(4)
タカトたちはミズイに教えられた方角へと森を切り分け歩いていく。
「俺、人魔症とかにならないかな……」
首についたキスマークをこすりながら、心配そうにタカトがつぶやく。その様子をビン子が不機嫌そうににらんでいる。先ほどから、少々ご機嫌斜めのようである。そんな二人にお構いなしのオオボラはなたを振り続ける。
「神様が、神の生気では人魔症になることはないと言っていたから、たぶん大丈夫だろ」
あきらかに人ごとである。その言葉に心配している様子を全く感じられないタカトは、恨めしそうにオオボラの背中をにらんだ。しかし、首をこするタカトの手には血がつくわけでもなかった。どうやら首にはかみ傷はついていないようである。と言うことは、ミズイの生気がタカトに流れ込んだというわけでもないということだ。どうやら、タカトの首に口づけをして、生気を吸い取ったようである。
「神様嘘つかない! とでも言うのかよ。神様なんてウソつきばかりじゃ!」
全ての神に対して反旗を翻すがごとく、タカトの涙目は怒りの憎悪をこめてビン子をにらみつける。ビン子は私のせいじゃないわよと言わんばかりに手をあわてて振る。
「まぁ、人魔になったら、俺が責任をもって頭を砕いてやるから、安心しろ」
「もっと、嫌じゃぁぁあ!」
頭を抱えて叫ぶタカトであった。
幾重にも重ねられた緑の服を一枚一枚脱がしていくと、そこには裸になった小門が口を開いて横たわっていた。
小門は、大人一人がやっと通れるぐらいの大きな穴のようであった。その穴は隠れるように大きな岩の表面にあり、まるで洞窟の入り口のようであった。
「やっと、ついたか……」
オオボラはナタを腰に戻すと、額の汗を拭いた。
「やっと、ついたか……それじゃ! 行ってらっしゃい!」
タカトは、小門の入り口を確認すると、オオボラに手を上げ、側の倒木の上で横になった。
その首をオオボラがわしづかみにする。
「お前も来るんだよ!」
えぇぇぇっぇ!
三人はたいまつに明かりをともし、暗い小門の道へと降りて行った。
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