第35話 激闘?福引会場?(22) ルパン・サーセンでサーセンww

「もはや問答は無用! 者ども出会え出会え!」

 そんなセレスティーノの呼びかけに、黒い三年生であるキメれン組の三人がルパン・サーセンを取り囲んだ。

 そんな三人がカリオストロの暗殺部隊のように正面を向いたままグルグルと回りだす。

 そして、次第に早くなる三人の影。

 いまや、その残像は一本の黒い蛇のように連なっていた。

 そんな中、ガイヤが声を上げるのだ。

「マッシュ! オレテガ! 奴にあれを仕掛けるぞや!」

 それに呼応するマッシュとオレテガの声!

「しゅ!」

「おほほほほ!」

 そして、なぜか黒い蛇のような筋はルパンから離れると、控室の中を大きくグニャリと回ったのである。


 当然に、ルパン・サーセンも、その動きを懸命に目で追った。

 ――ちっ! やけに早いな……

 だが、着ぐるみを身に着けた体では、思うように動けない。


 そして、オレテガの号令!

「いくぞ! ジェットストリームアタック!や!」

 それとともにルパンの正面から三つに連なった影がまっすぐに突っ込んできたのである。

 そして、次の瞬間、先頭を走るガイヤが前髪をかきあげて広いオデコを突き出した。

「キメれ~ん! フラッシュ!」

 控室の中を白く眩しい光が一瞬にして塗りつぶす。


 ――なに! 目くらましか!

 よほどまぶしいのかセレスティーノなどは騎士のくせに目を手で覆っている。

 これではルパンを見失っても仕方ない。


 だが、それに対してルパンは平然と笑っていた!

 そう、彼こそ悪の首領! こんなことも想定内なのである!

 ということで、

「悪の首領専用トリック!ボッチっちサンバイザー!オン!」

 その声とともに白い卵のような着ぐるみから闇のように真っ黒なサンバイザーが飛び出してきたではないか。

 そう、これこそボッチっちの悪の首領が、自ら抱える孤独を耐えうるために開発した新兵器なのである。

 トイレの中のボッチっちは耐えられる……

 だが……教室のような大勢の中で一人ボッチは堪えがたい……

 しかし、このサンバイザーを装着することにより自らの視界が遮られ、周囲の人間が見えなくなるのである!

 周囲の人間が見えなくなれば、すなわち!これ! いないも同じ!

 もはや、ここは個室トイレと同じボッチっち空間なのである!

 たちまち広がるボッチっち空間!

 この闇の空間こそ悪の首領の本領が発揮される場所なのである!


 ついに!

 悪

 の

 首

 領

 ! 覚・醒⁉

 うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!


 闇より出でて! 闇より黒く! その汚れをみそぎたまえ!

 ここに招来!

 いでよ! 悪の怪人!

 オットセイ‼


 怪・人・招・来!

 がおぉぉぉぉぉぉぉ!


 と、控室の入口から一匹の怪人が飛び込んできた!

 そんな怪人の鋭い爪が、ガイヤの頭上を飛び越えてルパンに襲い掛かろうとしていたマッシュの頭をつかみ取る!

 しかも、ガイヤの横から回り込もうとしていたオレテガの頭までも鷲掴みにしていたのだ!

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!痛いっしゅ!」

「オホホホホホ!放してぇぇえ!」


 そんな怪人が奇妙な液体を胸から垂らしながら叫び声をあげているのだ!

「オドレラァァァァァァァア!」


 そう、この怪人……

 先ほどまでアイスダンスショーに出ていたお登勢であった。

 いまだに上半身裸のお登勢の胸からはしなびた乳がビローンと垂れ落ちて、あの激しかった戦闘を思い出させるかのように粒のような汗を滴らせていたのである。

 だが、今や、そんなお登勢も帰り支度。

 裸のままではホテルニューヨークに帰れないのだ。

 だから……控室に着替えをしに来たのであるが……

 どうにも先ほどから控室の中が騒がしい!

 カチン!(怒)

 これでもお登勢はしっかり者!

 学校でいえば学級委員長! いや不良番長なのである。

 だからこそ、お登勢はホテルニューヨークの創設から今を支えてきた名器の中の名器でいられたのだ。

 その存在は言い換えれば、太平洋戦争開戦から終戦まで常に活躍し続けた双発戦闘機 百式司令部偵察機!

 いわずもがな名機の中の名機である。

 当然にその機体の存在は連合軍の男たちの金玉を震え上がらせた。

 そして、また、名器であるお登勢も、男という男どもの金玉を震え上がらせたのである。

 お登勢に落とせない男などいやしない……

 百発百中!

 天下無双!

 狙った獲物は即!昇天!

 うっ! キモちぃぃぃぃ~♡

 男たちの財布の中身どころか玉袋の中身までをも完全にスッカラカンにするまで吸い尽くしたのである。

 まさに悪魔! いや! デビルマンレディーである!

 そして、今!

 そんな名器が黒い三年生の面々をロックオンしたのだ!

 悪魔のような鋭い両手につかまれるのはマッシュとオレテガ……

 怪鳥のように褐色のしなびた足の下ではガイヤがカエルのように踏みつぶされていた。

 そして、お登勢のひときわ大きな怒声が控室の中に響き渡る。

「控え室では! 静かにせんかぁぁぁぁぁぁ!」


 だが、その時、一つの影が動いたのだ!

 誰を隠そう、それこそ悪の首領! ルパン・サーセンであった。

「それじゃぁ~♪ お宝いただいていくぜぇ~♪」

 

 ルパン・サーセンはこの時!このチャンスを待っていたのである。

 分かりやすく言えば、お登勢が控室に来る、このタイミングをである!

 しかも、あえて言うならば、お登勢の手が完全にふさがる絶好の機会を待っていたのだ!

 その機会を得るために、わざわセレスティーノの神民であるコウスケの恰好をしてまで、アイスダンスショーの控室に忍び込んだのである。


 ……だが、そこにはすでに先客がいた……

 いや先客というより、戦死者が……

 そう、控室の畳の上には玉五郎ことオレテガの死体が転がっていたのである。

 まぁ、後で生き返るけど、この時には確実に死んでいたのだ。

 当然に、それを見て悲鳴を上げるルパン・サーセン。

「ぎょぇぇぇえぇぇぇぇぇぇ!」


 だが、勘違いをしてもらっては困る。

 ルパンはオレテガの死体にビビったのではない!

 これでも国を股にかける大泥棒である。

 こんなの血なまぐさい惨状は幾度と見てきて慣れている。

 ならば、なぜ、ルパンは叫び声をあげたのだろうか……

 それは、オレテガの股に青いリボンがかかっていたからなのだ。


 そう……今回のルパンへの依頼……

 それは……第六の門の脇にできたケーキ屋「ムッシュウ・ムラムラ」の主人からの依頼であった……


 おっと! どこからともなくタイプライターを打つような音がwwww

 ということで! お決まりのタイトルコール!

「俺のチ〇コを守ってくれ!」

 チャラリン‼

 チャラ!チャラ!チャチャチャチャっ!


 数日前……

 そう、第六の門の近くにできたというケーキ屋さん「ムッシュウ・ムラムラ」でのことだった。

 女子学生であふれる店内は、なにやらピンク色をした甘ったるい香りで充満していた。

 しかし、そこに明らかに異なる存在があったのだ。

 店の中心にあるテーブル席。

 そこに対面するように、むさくるしい男が二人座っていたのである。

 二人が、懸命にほおばっているのはチ〇コケーキ。

 こいつら……一体いくつ食べたのだろう……机の上には、ケーキ屑がついた皿がいくつも並んでいた。

「コウスケ……お前、何個食った?」

「今……5個目です……スグル先生は?」

「ゲプっ……俺は、何とか6個クリアーだ……」

「先生……10個食べないと福引券もらえないらしいですよ……」

「そうか……ならば奥の手だ!」

 わずかに腰を浮かすスグルのケツから音がした。

 プスゥ~

「よし! これで1個分は隙間ができたぞ!」

「クサぁぁァァ! ちょ! 先生! 何食べたんですか! めっちゃ臭いですよ!」


 そんな二人を取り巻く女子学生たちが、彼らに白い視線を向けていたのは言うまでもなかった。

 でもって、そんな頃……ケーキ屋さん「ムッシュウ・ムラムラ」のバックヤードでは、神妙な面持ちをしたケーキ屋の主人であるムッシュウ・ムラムラ・エルキュール・アッポォワロとカウボーイハットをかぶったルパン・サーセンが座っていたのである。


 どうも話を聞くに、ケーキ屋の主人アッポォワロが恐れているのは、巷を騒がしていたチ〇コキラーの存在のようだった。

 やはり……ケーキ屋さんにとってチ〇コは大切。

 そりゃそうだろう、チ〇コを台無しにされるとチ〇コケーキが作れなくなってしまうのだから。

 もし、チ〇コを失えば、おそらく店内は真紅に染まったイチゴケーキで埋め尽くされることだろう……

 それも、アッポォワロの死体とともに……

 しかも、チ〇コをなくした股間の上には、一つの青いリボンが丁寧に飾り付けられているのである……

「いやだ……そんなのはいやだ……」

 うつむく主人は震える声を、やっとのことで絞り出す。


 だが、実際に10年ほど前に、一般街にあるコンビニの裏路地でそのコンビニの店長だった男がチ〇コをえぐり取られた姿でなくなっていたのである。

 しかも……その男、新婚まもなかったというではないか……

 まさに幸せの絶頂から不幸のどん底……

 おそらく何が起こったのかもわかるまい……

 彼の新妻は横たわる男の亡骸にしがみつき半狂乱で泣き叫び続けていた……

 夜のとばりが下りた裏路地には、そんな妻の叫び声に呼び寄せられたやじ馬たちがたむろしていた。

 そんな野次馬の中にケーキ屋の主人ムッシュウ・ムラムラ・エルキュール・アッポォワロ(いや、この時点ではケーキ屋を始める前であったのだが)の姿もあった。

 転がる男の死体を茫然と見つめながら、震える両の手を強く握りしめる。

 ――ついに……こいつもやられたか……

 そんな彼の足元にはおそらくコンビニの店長が持っていたであろう無数のタコさんウィンナーのシールが貼られたエロ本が異様な匂いとともに散らばっていた。


 そう、このコンビニの店長はかつて「根アン♥出るタール神」に勤めていたナンバー2のホストであったのだ。

 しかし、同僚たちが次々とチ〇コキラーに殺害される事件が発生すると、すぐさま「根アン♥出るタール神」を辞めて姿を隠したのである。

 それも何年も何年も……

 かつての過去を隠し……

 かつての名前を隠し……

 そこまでして、彼はコンビニの店長として再起をはかったというのに……

 彼は……チ〇コキラーに殺されたのだ……

 ――次は……俺の番か……

 コンビニの店長の過去を知るこのアッポォワロもまた、かつては「根アン♥出るタール神」に勤めたホストであった。

 しかも、その地位は、ナンバー1! ナンバー1ホストであったのだ!


 そんな彼がルパンの手を取り懇願するのだ。

「何とかして、俺のチ〇コを守ってくれ……」

 そう、彼もまた最近まで自室に閉じこもり世間から姿を隠していた。

 だが、やはり生きていくには金が要る。

 だからこそ、今度はまじめに働こうとケーキ屋を始めたのだ。

 だが……10年前のコンビニの店長の事もある……

 表に出ればいつチ〇コキラーに狙われるのか分からないのだ。

 もしかしたら、すでにチ〇コキラーに見つかっているかもしれない

 そう考えると、夜もオチオチ寝てられない……

 そんな時に、アッポォワロは草野球をしている仲間からチ〇コを守る方法を聞いたのである。


 だが、それを聞くルパンは、なんだか乗り気ではない……

 というのも男に手を握られても、やる気が全くわかないのだ。

 まぁ、この辺りはもしかしたらタカトと同じような性格なのかもしれない。

 ということで、ルパンの返答は、

「そんなこと、守備兵にでも頼めばいいだろうがよ」

 だが、アッポォワロはうなだれて、肩を震わせるのだ。

「それが出来れば……それができれば、最初からお前になんか頼まないよ!」

 まぁ、当然である。

 ルパン・サーセンは大泥棒?

 頼みごとをすれば、それ相応の見返りを要求されるのである。

 そんなことは分かっている。分かっているのだが守備兵に頼めない事情というものもあるのである。

 そんな様子のアッポォワロを見たルパンは、

 ――こいつもきっとスネに、いや、チ〇コに傷がある男なのだろう……

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