3-4 久能侑莉はかく語りき
あの日、 キミも会場にいたんでしょ? そう、〈プラネット・システム〉での公開放送よ。
え? ………ああ、別にいいよ、そんな慰めの言葉。そんな何にもなりゃしないんだから……
確かにあんなヤツに負けるなんて思ってもいなかった。さすがのアタシも頭ン中真っ白になってさ…… あのバトルの後どうなったか、いつログアウトしたのか、よく覚えてないのよね。
まぁ、それはそれとして、その次の日にさ、さっそく呼ばれたのよ『生徒会』に。
キミもウチの生徒会長のことくらい知ってるでしょ? そう、
一応生徒会には表向きのメンバーがいるけど、実体は〈六華仙〉によって動かされているの。キミの知っている副会長や書記ってのは名前だけの存在よ。そう、キミたちの期待を背負っている普通科代表の書記の子もね。
だから生徒会の会議はいつもSEEF内で行われていた。けどその日、アタシが呼び出されたのは芸能科棟最上階にある生徒会室。もっとも、その場にいたのは生徒会長一人。あとのメンバーは全員、SEEFにログインしていて、ディスプレイ越しに私のことを見ていた。
「あーっキミの事知ってる! 2年の
「ああ! なるほどー」
「言われてみれば、面影あるかも……」
「僕は卒業生だから素顔を見るのは初めてだけど…よろしく、侑莉ちゃん」
そうよ。それまで秘密にされていた炎浦イオンの正体は、その時〈六華仙〉の4人に
ううん、〈六華仙〉だけじゃない。多分、芸能科3000人のパーソナルデータにアクセスできる権限を彼は持っている。
「ちょっとどういうこと? アタシの正体は……」
「久能侑莉くん、残念だけど君を〈六華仙〉から除名することになった。これは5人の総意だ。」
「なっ!?」
「まーさー、そりゃそうだよね。あれだけ大口叩いといて、コロッと負けちゃうんだもん☆」
まず嬉しそうだったのは、みんな大好き
「身から出たサビだよ。アナタとのデュエットは楽しかったけど、アナタ口悪いんだもん」
「私は……もっと一緒にやりたかったよ。でも…なんであんな挑発に乗っちゃったの?」
ちょっと意外だったのが
「僕としてはどちらでも良かったんだけど、皆の意見を尊重しようと思ってね」
『王子』は…
「と、まぁそういう事だ」
「ふん、別にいいわよ。除名でも何でもしなさい。すぐに
「ふふっ。何か勘違いしてるみたいだね?」
「は?」
「素顔まで晒されておいて、いつまでも芸能科にいられると思っているのかい?」
会長は、自分の端末から
「何よコレ?」
「見ての通り編入届けだ。キミの通う教室は明日からこの建物にはない。
「はぁ!?」
「悪いけど、生徒会長権限で、君の名前の電子サインを署名してある。学校も受理済みだ」
「ふざけないで!」
「君が『炎浦イオン』という素晴らしいアイドルを生み出し育ててくれたことは感謝している」
「なら、まだアタシを…炎浦イオンを使いなさいよ。一敗くらい、すぐに挽回してやる! すぐにアイツと…〈
「そういうことじゃない。君の価値はもう無いけど、炎浦イオンにはまだ利用価値がある」
最悪なのはそのあと。会長が端末を操作すると、背後の大型ディスプレイがに表示されたのよ……アタシのイオンが。
「こんにちは久能侑莉さん! ええと、こういう場合も『はじめまして』になるのかしら?」
「は?」
「イオン、彼女に見せてやりなさい。キミの実力を」
「ん、OK」
"「さよなら」なんて言わないよ"
"今 私の心にあるのは「ありがとう」それだけだから"
アタシの新曲『
"キミの言葉が私を作った。キミの笑顔が私を作った"
けど違った。
"『久能侑莉』が私を作った。だから「ありがとう」"
アドリブで歌詞の中に私の本名を入れてきた。今その場で歌っているんだと主張するように……。何者かがアタシを真似てイオンを動かしてたの。
「なによこれ……」
「見ての通り『二代目』炎浦イオンさ。もちろん、中身が誰かは言わないよ。〈六華仙〉の中の人なんて極秘事項、普通科の生徒には明かせないからね」
それがアタシへの処刑宣告だった……
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