1章 氷と少年達

名がないはず≪イレギュラー≫の少年達

 俺は今日も変な無気力感を感じながら学校への道を歩いていた。だから、それを振り切るように歩くのを速めようとしたとき空の氷が目に入った。

 あれは突然表れ、今も空を覆っている。そしてあれはなぜか溶けることもなく、人に害を与えることもない。だから一時期、大騒ぎになったらしいが、3年たった今、氷があるのが当たり前になっている。そしてそれがもたらした唯一の恩恵も、、、


「あれをみるとなんか思いだしそうなんだけどなー」

 いつもそんなことを考えながら氷を眺めている。

 俺には昔の記憶がない。一番古い記憶は今住んでいる家のソファーにひとりで座っていた事だ。それもほとんど最近のことだけど。そして名前。それだけだ。


「おーい 零」


 急に名前を呼ばれたが無視することにした。そいつはいつもテンションが高くて、朝に弱い俺にはついていけない。だからきにせず、学校まで行くことにした。


「おい無視すんなよ親友だろ」


「、、、」


「おい!」


「、、、」


「なんとか言えよ!」


「、、、」


「もう泣いていいか?」


 本当に泣くことはないだろうが、流石に可哀想だった。


「どうした?創」


「やっと返事したか

 お前もっと早く返事できないの?」


「だってお前に合わせると疲れる」


「ひど!そんなこと言ってると友達できないぞ!」


「まあ俺、元々クラスで浮いてるしね」

 そう言った後、珍しく創は済まなそうな顔をした。別に俺が浮いてる理由には創は関係ないんだけどなー。いや、やっぱり関係するかも

 そんなことを、考えている間に創は、もういつも通りの笑顔に戻っていた。そして、他愛のない話をしながら今日も嫌な予感がする学校へ一緒に歩き出した。

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