第4話 休日の兄貴と俺

 やっと日曜日が来た。一週間疲れた。兄貴は昼近くまで寝ていて、昼前に髪の毛ボサボサで起きて来た。見た瞬間、笑った。

「ん?なんだよ、おい。」

兄貴は笑いながらそう言って、俺の頭に自分の頭をぐりぐり押し付けてきた。

「あははは、やめろよ。」

俺は笑いながら押し返した。

「岳斗、学校どうだ?友達できたか?」

兄貴の方から話をしてくれた。

「うん。」

「部活は?バド部に入るのか?」

「いや、まだ決めてないけど・・・運動部には入らないと思う。」

俺がそう言うと、兄貴はソファに腰かけ、隣に座るようにとポンポンソファを叩いた。俺も兄貴の隣に座る。

「いっそサッカー部に入るか、ん?」

こちらに首を向けて、そんな事を言う。

「まさか。」

「マネージャーとかは?」

「俺がマネージャー?部員ががっかりするだろ。」

俺は鼻で笑った。兄貴も冗談で言ったのだろう。

「そっか。それならまあ。部活には無理に入らなくてもいいし。」

俺は兄貴を見た。何が言いたいのか良く分からない。

「お前はうちにいろ。」

そう言って、兄貴は俺の頭を撫でた。ふざけている感じではなく、ひたすら俺の頭を撫でている。誰も見ていないから、俺も特に嫌がらずにされるがまま、じっとしていた。

「海斗?」

「うん?」

「なんで、そんな事してんの?」

俺がそう言うと、兄貴は手を止めてじっと俺を見た。

 そこへ、母さんが入って来た。

「お昼何にしよっかー。」

すると、兄貴はさっと手を引っ込めて、立ち上がった。

「着替えてくる。」

兄貴はそう言って、自分の部屋へ戻って行った。


 家族で昼食を囲む。兄貴は至って普通だった。もしかして、何か悩みでもあるのではないか、と思ったりしたのだが。取り越し苦労だったか。兄貴は普段勉強する時間がないので、日曜日に宿題やら予習やらをやらなければならない。午後は、俺は独り、部屋で過ごした。

 夕方になると、勉強を終えたのか、兄貴は部屋でギターを弾き始めた。全く忙しい人だ。そして、俺のSNSが活発になってきた。

「お兄さん、今家にいるの?」

「お兄さん、何してるのかな?」

もうこの人達、ブロックしてしまおうか。だが、先輩だから何かと角が立つと怖いような。兄貴に相談しようか、どうしようか。何となく、家族の間でこういう話はタブーだった。兄貴がモテるとかそういう話は家ではしない。本人にも言わない。だから、相談もしにくい。

 俺は、最後にと思って

「兄は今、部屋でギターを弾いています。」

と教えてあげて、そして相手のアカウントをブロックした。

 兄貴にも、早く決まった人ができればいいのに。そうしたら、こういった煩わしい事もなくなるだろう。俺にも普通の恋愛ができるかもしれない。普通の恋愛?想像がつかない。そして、兄貴に恋人・・・か。これもなんだか想像できない。

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