第3話 かっこよすぎるデモンストレーション

 「お待たせしました!次はサッカー部です!」

5時間目に、生徒会主催の新入生歓迎会があった。引き続き、部活動のデモンストレーションになり、サッカー部の番になった。

 ユニフォーム姿の部員たちが十人くらい出て来た。リフティングを披露したり、お互いにボールを投げてヘディングやトラップの練習などの演出もあった。このデモンストレーション、部員を勧誘するための物なはずだが、これでは単に兄貴のファンを増やしているだけではないのか?まさか、女子マネージャーの勧誘目的か?だがマネージャーが何十人も入りたがったらどうするのだろうか、とやたら心配になる。だって、これらの演技、兄貴がかっこよすぎるのだ!ほらほら、周りの女子たちを見よ。目がハートに・・・というのはちょっと言いすぎだが、顔を輝かせて見ているではないか。おや、男子もか?まさか兄貴に憧れたってだけの理由でサッカー部に入ったりはしないと思うが。

 俺がハラハラしながら見ていると、兄貴は俺を見つけたようで、こちらに向かってニヤっと笑い、人差し指と中指で、俺の事を指さし、ウインクをした。

「キッ、ヤー!!!」

俺の周りの女子たちが、奇声を発した。

「ばっかやろう。」

俺はその奇声に隠れるように、小さい声でそう言った。まったく、何考えてんだか、兄貴は、もう。

 そして、やっぱり学年全体に知られるところとなった。俺があの、城崎海斗の弟だと。そしてまた、あの悲劇が始まるのだ。どれだけ女子たちからナンパされることか。だが、もう連絡先の交換もしない事にした。プレゼントやラブレターの中継もしない。絶対にしないぞ、と俺は決めた。なぜか。中学の時よりも断然今の方がヤバイ気がしたからだ。兄貴の輝き方がかなり増しているし、皆々様の恋愛に対する本気モードが中学生とは比べ物にならないほど全開のようだ。ああ怖い。

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