第14話【仲直りと縁結び神社】

 この物語の主人公、大沢文人おおさわふみとは空気も読めず、ハッキリとした意見をも口に出来ないダメダメな男。




 そんな彼がひょんな事からタイムリープをし高校生活をやり直すチャンスを得たが…


 その直後に、主人公がこれから付き合うであろう幼馴染おさななじみの高山茜たかやまあかねを怒らせてしまう事態に。



 人はそう簡単に変わることは出来ない。




 タイムリープをしてもダメダメな主人公は…




 変わることの出来る人間であるのか…





 (はぁ…何でこうなるかな…)




 続々とクラスメイトは下校していっているなか、文人は机に顔を付け、自分の席から立ち上がれないでいた。


 入学式を終えて、周りはこれから華々しい日々が始まろうとしているが、文人はこれまで仲良くしてきた幼馴染おさななじみの茜を怒らせてしまったという出だしからつまずいてしまったこの状況。


 実に、文人らしいと言えば文人らしいのだが。




 (確か、タイムリープ前は入学式の日に茜を怒らせるようなことなんてなかったはずなのに…




 うん?待てよ。


 俺はタイムリープをしてきたんだし、今好きなのは小花さんなんだから、茜を怒らせたからって何か問題があるのか?


 別に茜と付き合うつもりはもう無いんだし、こんなに悩まなくても良いんじゃ…




 どうせ振らないといけなくなるんだし、今のうちにダメになっていた方がお互いに幸せな気が…)




 〈ブーブー〉




 と、文人が茜に向き合うのを諦めかけていた際に、スマホにメッセージが届いた。




 (うん?


 誰だろう?


 長澤からか…)




 久しぶりに届く結香からのメッセージということもあり、おそおそる慎重に開く文人。




 『大沢!


 あんた何してるの?


 私たちはとっくに神社に着いてるわよ!


 茜は私たちが何とかして機嫌を取っておくから!


 早くあんたも来なさいよね!


 さっきも言ったけど、場所が分からなかったらちゃんと連絡してね。


 待ってるから!!』




 『時間掛かってごめん。


 今から向かう。


 場所分からなかったらまた連絡します。』




 と、文人はぎこちなく文章を作り上げ結香に久しぶりに返信をする。




 (やっぱり行かないと仕方ないよなぁ…


 それに…)




 [あれでも茜は謝ろうとしてたのに…]


 [さっき、あいつさ…


 これからも、お前含めたみんなで一緒に居たいって言ってたんだよ。


 だから、ああ言ってても待ってるはずだから…


 早く来てやれよ]




 (陸も、ああ言ってたしなぁ…


 これまでの俺は失くしてたのが当たり前だった関係だけど、今の俺には必要な関係だもんなぁ…




 それに、こんなに俺の事を気にしてくれているみんなを放ってはおけないし…


 でも、茜はこんな俺に会いたいのかな…)




 「あれ?大沢くん??」




 考え込んでいた文人に、廊下の方から自分の名前を呼ぶ、心地よい声が聞こえてきた。




 「まだ帰らないんですか?」




 と、二組の教室に入ってきたのは…




 そう。


 夏蓮だった。


 そんな夏蓮に気付き慌てて顔を上げる文人。




 「あっ…




 もしかしてお金が無いから帰れないんじゃ…?


 それならこれで」




 と、言って夏蓮は文人の机に五百円玉を置く。




 「えっ…!


 いや、どうしてお金がないと…。



 それに、さすがにこのお金はもう使えないかなぁ…」




 と、机に置かれた五百円玉を手に取り、夏蓮に向けて差し出す。




 「あっ、違いました?


 私、てっきり財布無くしてたから帰れないのかと…」




 いや、違ってなどいない。


 色々とあり、文人の頭の中からすっかりと消えていたが、まだ定期も、財布も見つかっておらず、入学式が終わってから母の洋子にも直接会っていないので、現時点での帰る手段は、最寄り駅まで歩いて帰る方法しかない状態であった。




 「あっ、いや…違ってもないんだけど…」




 「だったらそれを使って帰ってください!


 私のことは気にしなくて大丈夫なんで」




 (いやいや…気にするよ…


 好きな人に一度ならず二度も同じ日にお金を借りるなんてこと出来るわけ…)




 「あっ、いや、それは…




 あっ、そうそう!連絡!


 今から親に連絡して合流するところだったから。


 だから、このお金は大丈夫だから!」




 「そうなんですか?


 それなら…」




 と、文人から五百円玉を受け取る夏蓮。




 「心配してくれてありがとう!


 さっき借りた分も必ず返すから!」




 「別に急がなくても大丈夫なんで!




 その変わりに…




 また、話して頂けるなら…」




 「えっ…?」




 最後の部分を夏蓮は小声で話した為に、聞き取れなかった文人は思わず聞き返した。




 「あっ、いや、何でもないです!


 それより、その光ってるのってなんですか?


 とても綺麗な色ですね!」




 と言って、文人のかばんに付いてあるアクセサリーを指差す夏蓮。




 「えっ?


 あっ、これ??


 そうだよね!


 確かに綺麗だよね。


 何のアクセサリーだったかな?」




 と、まるで他の人の物のように話す文人。 




 「あれ?


 そのかばんって大沢くんのじゃないんですか?」




 当然のように文人の反応に違和感を覚える夏蓮。




 「あっ、えっと、これは間違いなく俺のかばんだよ。


 ただ、いつの頃からかこのアクセサリーをずっと付けてるんだけど…




 いつから付け出したのか、どこで手に入れたのかって思い出せないんだよね…




 何か大事なことだったような気もするんだけど…」




 「そうなんですか…




 それは気になりますよね…




 でも、本当に綺麗ですよね!


 良く見たら葉っぱのような形をしてますし…」




 と言って、夏蓮は耳に髪をかける仕草をしながら、文人のかばんに顔を近づける。




 (うわ~


 顔近いって!


 てか、めっちゃ可愛いんですけど!)




 と、至近距離に見る夏蓮に対してドキドキッと胸が高鳴る文人。




 「大沢くん…


 大丈夫ですか?


 少し顔が赤いような??」




 「えっ、あっ、うん。


 全然大丈夫!


 本当にこれ何の葉っぱだろうね?


 二枚ついてるし…




 何か中途半端だよね~」




 と、同様を隠そうと必死の文人。




 「本当だ、二枚付いてますね。


 あと、四つ葉のクローバーみたいになるのに…




 まぁ、でもいつかきっと、その大事なことが思い出すはずですよ。


 それまで失くさないように大事に持っておいてくださいね!」




 「そうだよね。


 こんなに綺麗だし…




 きっと、何か意味があるはず…」




 と、文人が返すと、教室内の時計に目を向ける夏蓮。




 「あっ、すみません。


 私も両親待たせてるんでそろそろ行きますね」




 「そうだったんだ。


 余計な時間を取らせてごめんね」




 「いえいえ。そんな。


 話し掛けたのは私ですし。


 それにこちらこそ余計な心配をしてごめんなさい」




 「全然余計なことじゃないよ!


 むしろ気にしてくれて有り難いし」




 「それならよかったです。


 また何か困ったことがあったら気軽に言ってくださいね」




 「うん…ありがとう…」




 「大沢くん…?」




 「うん…?」




 「やっぱり、来たときと違って様子が変ですよ…




 入学式のあとに何かあったんじゃないですか…?」




 「えっ…


 そんなに来たときと違う?」




 「私の気のせいなら良いんですけど…


 さっきから青ざめていたり、赤くなったりと顔色が悪いですし、表情も来たときより暗く感じますし…」




 (赤くなったのは小花さんが魅力的すぎるからだって…)




 「実は…さっき幼馴染おさななじみと久しぶりに話したんだけど…




 何を話して良いか分からなくて…




 結局、無神経なこと言って怒らせてしまって…




 他の幼馴染おさななじみからは早く合流するようにって言われてるんだけど…




 怒らせてしまった相手は俺に会いたいのかなぁって考えてて…」




 「そうだったんですね…




 それなら…




 


 ここで悩まずに早く会いに行って謝ってきてください!」






 「えっ…?




 でも、すごい怒ってて…そんな簡単に許してもらえるとは…




 それに俺が行ったらまた怒らせてしまうかもだし…




 そんなのに会いたいわけ…」




 「その、怒らせてしまった人は幼馴染おさななじみなんですよね?


 それなら、今までも大沢くんに腹を立てたことあったはず…




 それでも、今まで大沢くんのそばに居たってことは今回も大丈夫ですよ!


 きっと今回も許してくれるはずです!


 何年も一緒に居たのに、たった一度腹を立たされたぐらいで、終わりだと思うわけないじゃないですか!


 きっと、相手の方も大沢くんが来てくれるのを待っているはずです!


 それに…こういうのは時間が経つにつれて、謝りにくくなるもんですから。


 早く謝ってスッキリしましょう!」 




 「それもそうだよなぁ…


 それに…小花さんにそこまで言われるとなぁ…




 よし!


 許してもらえるかは分からないけど、今から会って誠心誠意謝ってくるよ!」




 「はい!頑張ってください!」




 「本当に、本当に、今日は色々とありがとう!


 小花さんと出会えてよかった」




 「いえいえ!


 こちらこそ大沢くんとお会いして緊張がほぐれましたし。


 次に会うときには、無事に仲直りをしていて下さいね!


 良い報告が聞けるのを待っているんで!」




 「頑張って来ます…!


 それじゃあ…また!」




 と言い、夏蓮に突き動かされた文人は校門に向かって走り出した。




 「大沢くん… 


 これでいいんだよね…」




 夏蓮は走り行く文人に対し、寂しげな眼差しを向け呟いていた。




 〈タッタッタッタッ〉




 文人は走っていた。


 一刻も早く茜たちの居る神社に着くために。




 (はぁ…




 小花さんには、ああ言ったけどなんて謝ろう?


 あそこまで怒るとなぁ…




 神社に行って少しは落ち着いてくれてたら良いんだけど…




 そう言えば小花さんがさっき言ってたよな…




 茜がこれまでも俺に腹を立てたことがあるはずだって…




 確かに茜とは些細ささいな喧嘩も含めて数え切れないほど怒らせた気はするけど…




 いつもどうやって仲直りしてたんだっけ?)




 と、走りながら、文人の頭の中もフル回転をさせ、茜との関係の修復方法をさぐっていた。




 その頃、茜たち三人は神社内の石段に、端から陸、結香、少し離れて茜といった順番に並んで座っていた。


 そんな中、結香と陸が茜に聞こえないよう、小声で話し始める。




 「相馬、いま大沢から連絡が来て、こっちに向かうって…


 もう…相変わらず意気地いくじがないんだから…」




 「文人が来る前に早く茜の機嫌を戻さないとなぁ…


 けど、どうするかな…」




 「そうよね。


 私に一つ考えがあるの。


 少し相馬にもちょっと協力してもらうかもだけど…」




 「うん?」




 「まずは何でもいいから話し始めて。


 話し始めないと何も始まらないから」




 「よし。分かった」




 と、言いボリュームを上げて陸が話し始める。




 「いやー


 今日は良い天気だよなー


 本当に入学式日和だよなー」






 「・・・・・」






 陸の発言に誰も言葉を返さなかった。






 「ちょっと待って…!


 何その棒読み!?


 そんなんで茜の機嫌が直る訳ないって!


 てか、天気の話って!


 もっと、普通に!


 自然な話題を言って!」




 と、茜に聞こえないよう小声で鋭い突っ込みを入れる結香。


 その後も小声の会話が続く。




 「えっ?


 天気の話し変だった?


 意識すると何か難しいなぁ…」




 「相馬が、無理そうなら私が話題を振るけど…」 




 「いや、大丈夫。


 次はうまくやるから」




 と、言って再びボリュームを上げて話し出す陸。




 「やっぱり似てるなぁ。


 俺らの家の近くの神社と。


 昔はよく三人で夏祭りに行ったよな」




 と、神社内を見渡しながら陸が話し出す。




 (おー良い感じ!)




 「そうなんだぁ。


 確か、ここの神社の分社が相馬たちの家の近くの神社なんだよね。」




 と、結香が心の中で陸を褒め称えながら話しを返す。




 「そうそう。


 だから色々と思い出すなぁ…


 祭りの日にさ、文人のやつが家でゲームやりたいからとか言って、なかなか来なくってさぁ。


 そしたらまた、茜が怒り出すし…」




 「えっ~何それ?


 大沢、付き合い悪い~


 で、結局、大沢はお祭りに来たの?」




 「えっと…




 どうだったけなぁ…




 昔のことでハッキリと覚えてないけど…




 確か、文人と仲直りをして三人で一緒に居たような…」




 「なんだ~


 じゃあ、茜はその時のこと何か覚えてる?」




 「別に…




 あいつのことなんて何にも覚えてないし…」




 「そっか、そうだよね~


 あんなやつのこと覚えてたってだよね…。 


 ところでさ、茜はここの神社についての色々な噂があるの知ってる?


 別名、縁結び神社って呼ばれていて、ここで好きな人との幸せを願ったら叶うとか、一緒に願い事をしたら叶うとか、ここでした約束を守り続けるとその相手と幸せになるとかさ、何かロマンチックな噂がいっぱいあるんだよ~」




 「別に、噂はしょせん噂。


 どうせ作り話でしょ」




 と、結香の振りにも素っ気なく返す茜。


 そんな茜は、結香の発言に対してこう思っていた。




 (どうせ約束したって覚えてなかったら意味無いんだし…)




 「そうかな?


 私はたとえ、作り話でも信じたいと思うけどなぁ~


 ここで好きな人との幸せを願ったら叶うとか本当に素敵だし。


 もし本当なら相馬も早く願っておかないとだね」




 「はぁ?何を??」




 「何をって今の私の話しちゃんと聞いてたの?


 好きな人との幸せに決まってるじゃん!」




 「えっ!?


 陸、そんな人居るの?


 だれ、だれ??」




 と、素っ気ない態度をし距離を取っていた茜が、陸と、結香の方に近付いてくる。




 「はぁ?


 好きな人って別に…




 俺はそんなんじゃないし」




 「あらら…


 別に隠さなくても良いんじゃない?


 こういうことは素直に言ったほうが楽になるよ」




 と、結香が言うと…




 「そうそう!早く言っちゃいなよ!


 私たちに隠し事はいらないって!」




 茜も一緒になり、陸の好きな人の名前を聞き出そうとする。




 「だから、違うって!


 別に好きとかそういうのじゃないんだって」




 いつも冷静な陸が声を張って言い放った。




 「えっ~


 その感じだと絶対に好きだってことだと思うんだけどなぁ」




 と、さらに結香が問い詰める。




 「長澤!本当に違うから!


 これは恋とかそんなんじゃないから。


 あ~もうこの話しは終わり、終わり!」




 と、陸が再び大声で言った。




 「しょうがないなぁ~


 そこまで相馬が言うなら今日のところは許してあげましょう」




 と、結香が遂に諦める。




 「えっ~


 めっちゃ気になる。


 ねぇ、結香教えてよ!


 陸の好きな人って誰なの??」




 今度は結香に、詰め寄る茜。




 「茜はまだダメ~」




 「えっ~なんで?


 気になるじゃん!


 私のほうが陸と付き合い長いのに~


 ねぇ、陸~


 結香にはバレてるみたいだし私にも教えてよ~」




 と、陸に再び詰め寄ろうとする茜に対して結香が。




 「ほらほら、元気になったら人の事より自分のことを先に何とかしたら?


 大沢と仲直りをしなくていいの?


 ずっと、このままにしておくつもり?」




 「そりゃ、私も言い過ぎたけどさぁ…




 今回は文人が一方的に悪いじゃん。


 人の顔が怖いとかさぁ…




 私は、ウジ虫は言い過ぎだってかばってあげたのに」




 「まぁね。


 今回は明らかに大沢が悪いよね。


 でも、茜~


 確かに入学式の前はかばってたけど、さっきはウジ虫どころか、はととかにわとりとかになっちゃえ!みたいなこと言ってたよね~」




 「えっと、それは…あいつが私を怒らせるから…




 怒らせる文人が悪いって!」




 「てか、はととかにわとりってどういうこと?


 どっからそんなの出てきたの??」




 「あ~それね。実はさ…」




 茜は入学式での陸とのやり取りを結香に話す。




 「なるほど。あの時にそんなこと話してたんだ。


 しかし、本当に二人ともどうでも良いことで言い争ってたんだね」 


 と、笑みを浮かべながら話す結香。




 「あの時の文人は本当におかしかったって。


 はとみたいにペコペコしてさぁ」




 と、不満げに語る茜。




 「いや、あれは眠たかったからにわとりみたいになってただけだって。


 気にすることないって」




 と、いつものクールな様子に戻った陸が言う。




 「えっ~


 さすがの文人も入学式の日に居眠りなんてしないって!


 あんな緊張しいなのに…


 あれは誰かに対してやってたはず…


 それに、にわとりじゃなくてはとだから!


 ねぇ、結香はどう思う?」




 「えっ、私?


 まぁ、とりあえずはとか、にわとりかの論争は置いといて。


 う~ん、どうだろう?


 確かに大沢があんな場所で居眠りをするような玉じゃないとは思うし…




 だったら、茜の言うように誰かにやってた可能性が高いかも…」




 「やっぱりそうだよね。


 誰にやってたのかな?


 小学校や、中学校時代の同級生なら私にも分かるはずなんだけど…」




 「私はその時の大沢の様子を見たわけじゃないしなぁ…




 話を聞いてると、大沢が振り返ってやってたってことは大沢の後ろに居た人物なのは間違いないけど…




 名前順に並んでて、大沢の名前からじゃ大半が後ろに並んでるし、誰かを特定するのは難しいかも…




 やっぱり、気になるなら大沢に直接聞いたほうが早いんじゃない?」




 「私は聞かない。文人が話すまでは。」




 「もう…




 本当、頑固なんだから…」




 呆れる結香を余所目よそめに茜はこう思っていた。




 (あの時の約束を覚えているなら…




 本当の事を言って…)






 「はぁ、はぁ」




 文人は息を荒げて走っていた。


 一刻も早く茜に謝ろうと必死に神社へ向かって。


 茜たちが居る神社は、駅に向かう帰り道にあるので、走ったらものの数分で着く。


 文人は走りながらも、茜に許してもらえそうな方法を探しつつ、夏蓮が気にしていたアクセサリーに関しても考えていた。




 (アクセサリーか…




 そう言えば…




 茜と別れる間際に…)






 


 【タイムリープ前】




 文人と茜はとある公園にいた。




 「文人…


 ごめん。


 私、もう文人とは一緒に居られない」




 「えっ…


 急にどうした?


 俺、何かした?」




 「ううん。


 あなたは、何もしてない。


 何もしないし、何も言ってくれない。


 私はあなたと一緒に居るの疲れちゃった…


 ごめんだけど、別れてくれないかな?」




 「今まで何も気付かなくてごめん。


 駄目な部分があるならこれからちゃんと直していくから。


 だからもう一度だけチャンスをくれないかな?」




 「今さら謝られても…




 もう遅いよ… 




 こっちこそごめん。


 出来れば言いたく無かったんだけど…




 私…






 他に好きな人が出来たから…




 だから、もうやり直すのは無理なの。


 今日で私たちの関係は終わりにして…」






 「そんな…


 好きな人って…?


 そんな人居たの…?


 いつから…?」




 「今あなたと一番身近に居る人。


 私にもずっと身近な存在だったけど…




 好きになったのは最近だよ」




 「もしかして…




 それって…




 陸…?」






 


 茜は目をつぶりゆっくりと首を縦に振った。






 「本当にごめん。


 あなたと過ごした時間は私にとって、とても貴重な時間だったよ。


 今までありがとう。


 もし…あなたが、あの時のをしっかりと覚えていてくれたならこんなことにはならなかったかもね…」




 茜は涙ぐみながら自身の首に吊ってあったアクセサリーを外す。




 「私にはこれはもう必要ないから…」




 茜は首から外したアクセサリーを近くにあったゴミ箱へそっと入れた。






 「それじゃあ…




 文人も幸せになってね」




 ただ呆然と立ち尽くすしか出来ない文人に、最後の言葉を伝えて、文人の前から去っていた。






 【タイムリープ後】




 「はぁ、はぁ」




 (茜…




 あの時…いや、あの前に俺はどうしてたら一緒に居ることが出来たんだよ…




 






 約束って茜と何か約束をしたのかな…






 それに、茜が着けていたアクセサリーって…


 あの時は、あまりの衝撃でどんなものを捨てたのかハッキリと覚えてないしなぁ…


 もしかして、このかばんに付いているアクセサリーと何か関係があるのかな?




 はぁ…思い出せない…




 着いちゃった…


 あぁ…ここがみんなが居る神社だよな… 




 こんなんで、茜と仲直り出来るかな…)




 神社に着いた文人だが、依然いぜんとして茜に許してもらえる方法は見出だせず、アクセサリーや約束についても思い出せないでいた。







 【予告】 


 文人はついに…




 茜たちの待っている縁結び神社に到着をした。


 タイムリープをする前、茜が自分と別れる際に言っていた、約束についての記憶や、自分のかばんにも付いている謎のキーホルダーの正体を思い出せないままに…




 そんな中、茜は、陸たちと離ればなれになってしまう。


 一人孤独におちいってしまった茜は、とある記憶を振り返る事に… 




 果たして、二人は無事に再会をし、元通りの関係性に戻すことが出来るのであろうか…




次回【(15)とある記憶】

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