第14話 舎弟?たちと未来の従魔

「プルルン、プル、プウ、わらび餅、水まんじゅう・・・」


「待って、ネーミングセンスが・・・」


「じゃ、カインが考えてよ」


「いや、あのスライムは、ノアに考えてほしいと思うよ」


カインが心のこもって無さそうな、だが明るい感じで言う。


・・・逃げたな。


それにしても、たぶん数時間は待っているが、あの透明なスライムはなかなか戻ってこない。


『ノア様!連れてきました!』


「あれは、基本の個体全属性は連れて来たんじゃないかな」


「・・・・・・」


名前を考えていると、スライムが戻ってきた。数体のスライムを、自分の中に入れて・・・。


そういえば、テレビで似たようなゼリー見たことあるな・・・。


『お待たせいたしました!』


中にいるスライムたちを、ぺっぺっと吐き出す。


『いや~、色をコンプリートするのに、手間がかかってしまいました。まだ、他にも色がありますが、私たちの進化した先の個体なので、それは後々』


その、赤、青、黄色、緑、白、黒の半透明なスライムたちを、逃げないように自分の体を変形させて囲った。


コンプリートって・・・この透明なスライムは、何故そこまで自分を駆り立てる・・・。


「・・・ま、じゃ、やっちゃおうか」


考えないようにしよう・・・。


「『悪しき心よ消えろ』・・・」


数が多いので、先ほどより魔力を多く流し、バスケットボールくらいの大きさになったところで、魔力を止めてスライムたちに投げて当てる・・・が、やはり見た目に変化がないので、成功したかがわからないから、また複数のスライムたちを観察していると、透明なスライムとは違った複数の声が話しかけてきた。


『姉貴!』『あねさん!』『お嬢!』『親分!』『おやびん!』『・・・ボス!』と・・・。


ちょっと待って、その呼び方は・・・。


「悪いけど、ノアって呼んでほしいな・・・」


透明スライムと同じように、ここで呼び方を修正しないと精神的なダメージが・・・。


『ノア様?』『ノア様?』『ノア様?』『ノア様?』『のあ様?』『・・・ノア様?』


「・・・もう、それで良いよ」


妥協も大事だよね・・・。でも、良く見るとみんな色は付いているけど、クリアで濃くないから宝石みたい。キレイだな~。あ、白だけキラキラなパールみたいな感じだ~。


「じゃ、名前だけど、透明な君がプレン、赤い君はイチコ、青の君はソウタ、黄色の君はレモー、緑の君はメロ、白い君はミルル、黒い君はコクで、どう?」


「それって・・・」


「うん。プレーン味と、イチゴ味と、ソーダ味と、レモン味と、メロン味と、ミルク味と、黒糖味だね」


あぁ、わらび餅食べたい・・・。


「やっぱり・・・」


『プレン・・・』『イチコ・・・』『ソウタ・・・』『レモー・・・』『メロ・・・』『ミルル・・・』『コク・・・』


スライムたちは、先ほどまでぷるぷると動いていたのに、自分の名前を聞くと、ピタッと動きを止め微動だにしなくなった。


あれ?気に入らない?私、ネーミングセンスないもんなー。


『『『『『『『名前・・・ありがとうございます!ノア様!!』』』』』』』


びょんびょんと、嬉しそうに勢い良く跳ねるスライムたち。


思ったより喜んでる・・・良かった・・・。

スライムを従魔にするなんて、異世界の小説や漫画にありがちな展開?


「スライムが従魔なんてね・・・」


「そうだよね。やっぱ、そう思うよね」


カインも同じこと考えたんだ~。


『そんな!未熟な自分たちが、ノア様の従魔なんて烏滸がましいです。舎弟でお願いします!!』


『『『『『『お願いします!!』』』』』』


「え?」


「ん?どうしたの?」


「舎弟って・・・」


「え?舎弟ってノアの?従魔じゃなくて?・・・このスライムたちって変だね。というか、スライム全体がこんな感じ?・・・」


何故、そっちに行くの!?




୨・୧ ୨・୧ ୨・୧ ୨・୧ ୨・୧ ୨・୧ ୨・୧ ୨・୧



帰ってきました、カインの森の中の家。庭でジャックくんが畑仕事をしている周りを、『ジャックのアニキ~』とスライムたちはぴょんぴょんと跳ねてます。癒やされますね~。


スライムのプレンに鑑定の了承を『ノア様に隠し事なんていたしません!全てを晒します!』と得て、ステータスを見せてもらうことにした。



名前:プレン

種族:スライム(妖精)

性別:不明

AGE年齢:0

Lv:2

HP(生命力):302/302

SP(体力):41/41

MP(魔力):178/178

STR(攻撃力):11

VIT(防御力):23

AGI(俊敏性):173

DEX(器用):101

INT(知力):36

MND(精神力):91

LUK(運):289

CHA(魅力):177

スキル:無属性魔法

称号:ノアの舎弟


となっていた。


おぅ・・・ 何故、称号に"ノアの舎弟"・・・ん?・・・スライム(妖精)って?


プレンに聞くと、他のスライムたちもステータスは殆ど同じで、属性魔法が違うだけみたいだ。透明なスライムは無属性、赤のスライムは火属性、青のスライムは水属性、黄色のスライムは土属性、緑のスライムは風属性、白いスライムは光属性、黒いスライムは闇属性で、ちなみに土属性の派生はメタルスライムなどに進化したり、光属性のスライムの派生は聖属性のスライムに進化したりと、他のスライムたちも色んなスライムに進化するみたいだ。ところで・・・。


「ねぇ、カイン・・・」


わからないことは、聞くのが1番だよね。


「うん?どうしたの?」


「スライムって妖精なの?」


「え?いや、魔物のはずだよ」


「なんか、プレンのステータスを見せてもらったら、種族がスライム(妖精)ってなっているんだよね・・・」


「え?ナニソレ、初めて聞いたんだけど・・・」


カインでも、知らないことがあるんだ・・・。


「・・・もしかして、あの魔法のせいかな。"悪しき心"を取り除いたら、魔物じゃなくなって妖精になっちゃた・・・とか?」


たぶんだけど、あの魔法が原因っぽいよね・・・。


「だからって妖精になるかな?・・・」


カインが首を傾げる。


でも、なっちゃったものは、しょうがないよね・・・。


「・・・ま、創造魔法なんだし、そういうことにしておこうよ」


これは、丸投げですね。神様に・・・。


「・・・深く考えたらダメなパターンだね」


カインがため息を吐く。


神様、軌道修正の方向性が、斜めに行ってますよ・・・。


「あ、気になっていたんだけど、カインはジャックくんとどうやって出会ったの?」


良いな~良いな~、ジャックくんと出会えて従魔に出来て、羨ましいな~。


「うーん、なんて言って良いのか・・・たぶんなんだけど、マンドラゴラを庭に植えていて、その近くにカボチャも植えていていたんだ。そして、肥料の代わりに、切り刻んだフォレストベアの死骸を近くに置いたら、それが上手いこと合わさって、いつの間にか奇跡的にジャックに変化していたみたいな感じかな」


ナニソレ・・・品種改良みたいな、そんなことあり?


「でも待って・・・元はマンドラゴラとカボチャだから・・・」


もしかしたら、マンドラゴラを手に入れればジャックくんのような従魔が・・・。


「カイン!マンドラゴラってどこで手に入るの!?」


「うわっ!」


興奮して、カインの胸ぐらをガシッと掴む。


「落ち着いて、ノア。マンドラゴラは、森の近くの畑に植わっているから」


どうどう、とカインが私を落ち着かせようとする。


「ありがとう!ちょっと、早速行ってくる!!」



カインの胸ぐらを掴んでいた手をパッと離すと、ぐるりと回れ右をしてダッシュで駆け出した。


「あ、ちょっとノア?」


慌てて駆け出した私にカインは声をかけるが、それを聞こえないふりをして足を止めなかった。


マンドラゴラが私を待っているー!!


あれ?でも、不思議・・・あんなにカインと顔を近付けても顔が見えないなんて、どんな魔法を使ってるんだろう?


そう思いながらもダッシュで速く走った・・・つもりだが、この重い体ではあまり時間は短縮されなかったみたい。

上がった息を整えてながらマンドラゴラを探すが、その姿形なんて私は知らないので探しようがない。


困った・・・おっ!


手当たり次第探していると、ジャックくんがスライムたちを伴ってやって来た。


「ジャックくん!」


私の声に気付いて立ち止まり、首を傾げるジャックくん。その周りでスライムたちが、『ノア様だ~』と騒いでいる。


・・・可愛い!!やっぱ、ジャックくん良いわ~。


「・・・ごめん、ジャックくん。マンドラゴラって、どれだかわかる?教えてほしいんだけど」


「がうっ」


ジャックくんはコクリと頷くと、私が立っている所ではなく、全然違うところに向かい、しゃがんで手で示した。


「がうがう!」


「これがマンドラゴラなの?」


ジャックくんの隣にしゃがみ示した植物を見てみると、普通のどこにでも植わっているような、花が咲いていない草花に見える。


「教えてくれて、ありがとう。このマンドラゴラ、1つ欲しいんだけど良いかな?自分で育ててみたいんだ」


「がうっ」


そんな私の言葉にジャックくんは頷き、どこからか鉢とスコップを取り出してマンドラゴラの周りを掘り始める。


ジャックくんも、無限収納インベントリを持っているんだ・・・というか、大丈夫かな!?マンドラゴラの叫び声を聞くと、大変なことが起こるって何かの小説に載ってたよ!


しかし、ジャックくんは器用に土を付けたままマンドラゴラを掘り起こして、鉢に植え替えた。そして、私に差し出してくれる。


「がう~」


さ、さすがジャックくん・・・。


「・・・ありがとう!ジャックくん!!嬉しい~」


喜んながら、どさくさに紛れて、鉢を持っているジャックくんの手を上から覆うように持った。

その周りをスライムたちが、『ノア様、良かったですね~』と跳び跳ねている。


「あ、ノア。マンドラゴラに毎日魔力を注いでね。俺はそうしていたから」


いつの間にか来ていたカインに、ゆっくり指を一本一本ジャックくんの手から離され、マンドラゴラが植わった鉢を私のその手に乗せながら、そう言った。


魔力ですか~それ、1番苦手なんですけど・・・う~、ジャックくんとの貴重なスキンシップがー!!


その後、ジャックくんのようなクマさんも良いけど、どうせだったら違う動物が良いなと思い、肥料の代わりには、以前カインが狩って無限収納インベントリの肥やしになっていた、額にある大きな角で攻撃してくるらしいホーンラビットのウサギさんに似た魔物を提供してもらった。そうなると、方向性は可愛い感じにしようかな、とジャックくんに相談してイチゴのような実がなる植物を教えてもらい、それを隣に並べて置いた。


早く成長しますように・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る