第12話 やっぱり、プロだわ・・・
ゲイルさんの鑑定は、酒が入っていない時にして欲しいということで、後日また来て行うことになった。
お酒が入っていても入ってなくても変わりないのでは?と思うが、気分の問題らしい・・・。
なので、ゲイルさんの店から数m先にある、次に行く予定だった雑貨店に向かう。
ここからでもわかる主張が激しいアレが、もしかして私たちが行く雑貨店なのかな・・・?
「・・・カラフルで、可愛いお店だね」
やはり、『アメリアのキュラララン雑貨店』と、そう看板が掲げられている店の前に私たちは立つ。 自分では、スタスタと歩いているつもりで足を進めていたが、そこに着くのに以外と時間がかかった。もしかして、この店の主張が強いから?感覚的には、もう少し近くにあるように感じるけど、実は遠かったとか?う~ん、ジオルクさんの店には看板は無かったし、ゲイルさんの店は看板を見る余裕が無かったから見てないけど、ここの看板は文字の一つ一つが色が違って、翼が生えた可愛いウサギが両サイドを固めているし、とても派手可愛い感じだね。
「オーナーの趣味なんだよね・・・本人に会えばわかると思うけど、このイメージとはかけ離れているから。あっ、店員は一応イメージに合わせているから。彼女、頑張っているんだけどね・・・」
「ん?イメージとかけ離れてるって、どんな人たちなの?」
私にとったら奇抜だけど、店の見た目は可愛いっていうイメージだよね・・・。
ということは・・・と、二人の大人なセクシーお姉さんが、若しくはオネェの方なのかなと頭に浮かぶ。
「どっちも会えばわかるよ・・・」
二人のことを聞いただけで、げっそりと肩を下げ疲れた感じで言うカインに、これ以上は聞けなかった・・・。
えっ、二人のことを聞いただけだよね?それだけでそんな窶れた感じになるって、どんな人たちなの!?・・・こっ怖い・・・。
扉の近付くと、カインはスッと背筋を伸ばし、先ほどのげっそりした感じを消して、一緒に店の中に入る。内装は、外装より更にファンシーだった。あっちの世界だったら、私はこいう店には絶対に入らない・・・確実に。そう思わせるくらいカラフルで、派手な内装の飾りつけだった。しかし、商品を良く見るとシンプルな普通の物が多い。が、たまに奇抜な物も含まれている。
「こっこれは・・・」
・・・引くわ~。
「スゴイだろ。こんなだが、良い物が揃っていることもある・・・」
お、口調が変わった。周りに誰もいないけど、私が気付かないだけで近くに誰かいるのかな?
「いらっしゃいませ~だぞ」
まだ、声もかけていないのに、奥から可愛らしい声が聞こえた。
「音も拾える監視カメラみたいな物が、取り付けてあるんだ」
不思議そうにしていると、カインがそう教えてくれた。
そして、奥から先ほどの声の主と思われる人物が、商品棚の影からヒョコっと顔を覗かせた。黄土色に近い濃い色合いをした金髪のツインテールに、キラキラした飾りとレースが付いた髪飾りを付け、それをふわふわと揺らし、リボンとフリルが沢山付いた変わったデザインのワンピースをふわりと靡かせ、15・6才くらいの女の子がこちらに可愛らしい仕草で歩み寄る。そして、私の目の前に立つと、深いモスグリーンの瞳をキュルルと輝かせた。
頑張ってイメージに合わせてるって言ってたけど、お人形さんみたいで可愛いじゃん。服のセンスがアレだけど・・・。
「カインが来るなんて、珍しいんだぞ。それも、女の子を連れているんだぞ」
・・・・・・だぞ?
「あぁ、同郷の来訪者だ。彼女の生活必需品を、揃えようと思ってな」
「初めまして、ノアです。よろしくお願いします」
カインが紹介してくれたので、挨拶をする。
「初めまして、リリアーナだぞ。リリーと呼んで欲しいんだぞ。よろしくだぞ」
彼女も挨拶を返してくれるが・・・だぞが大量だ・・・。
「今、揃えて来るから、待ってるんだぞ」
「あぁ、服もいくつかシンプルな物を頼む」
「お願いします・・・」
「了解だぞ!」
そう言って、リリーちゃんは店の奥に戻っていった。が、彼女に頼むのは良いが、大丈夫だろうか・・・と不安が過る。
「彼女も頑張っているんだ・・・」
「え?」
突然、意味不明なことをカインが言う。
ま、仕事を頑張っているのは見てわかるけど、何が言いたいんだろう?
「一番罪があるのは、オーナーだ・・・」
「あぁ・・・」
その言葉を聞いて、納得。ぶりっ子と可愛いを誇張している感があるなーと、彼女の態度や仕草で感じた。しかし、女に嫌われるあざとさみたいなものがないので、嫌な感じはしないので良かった。
そっかー、やらされているのか・・・イメージ維持のためとはいえ、わざと可愛いを演じなければならないなんて、私じゃ無理っ。それに、そんなことしてたら普通は、同性の客を嫌な思いをさせちゃうのに・・・プロだわっ。
「お待たせだぞ。先ずは、生活必需品だぞ」
リリーちゃんが戻ってきてカウンター商品を並べるが、それが全てカラフルかつ奇抜なデザインで、ファンシーな代物だった・・・。
「・・・あの、もっとシンプルで落ち着いたものは無いですか?」
その櫛、デコレーションが凄すぎて持てそうにないのですが・・・このコップは、星形で飲みづらそうなのですが・・・そのベッドカバーでは、目がチカチカして眠れないと思うのですが・・・コレも、コレも・・・。
「そうなの?だぞ。オーナーは、可愛いは正義だと言っていたんだぞ。なんで、みんな買ってくれないんだぞ・・・」
俯いて、しょぼんとするリリーちゃんに同情はするが、ここは心を鬼にする。
「じゃ、このコップを貰おうかな。あと、それとは別に、シンプルなコップもお願いしますね」
な、流された訳じゃない・・・透き通った虹色のコップは、インテリアに良いと思っただけだし・・・。
「ありがとうだぞ!シンプルな物も持って来るんだぞ」
そういうと、直ぐニコッと笑って、彼女はまた奥に引っ込む。
「やられたな。あれは演技だ」
なんと!?・・・クッ、良い勉強になったということにしておこう。でも、あの娘なら騙されても良いかもと思ってしまうよね・・・金額次第だけど。
「・・・ま、これくらい良いっかー、と思わされるよね」
並べられたファンシーの代物から、殺風景な自分の部屋のインテリアに使えそうな物を選んでいく。
「お待たせだぞ!」
戻ってきたリリーちゃんが、今度はシンプルな商品をカウンターに並べていく。
良かった~。私好みの物もあるじゃん。
ホッとして、今度はその中から、商品を選んでいく。
「次は服を持って来るんだぞ!」
と言って、またまた、奥に引っ込んでいくリリーちゃん。
「俺はその辺を見ているから、終わったら声をかけてくれ」
「うん、わかった」
カインが、リリーちゃんが向かった方向とは別の、店の奥の方を指すのでそれに頷く。
「もっ持ってきたんだぞっ・・・」
少し待っていると、可愛いデザインのタイヤ付きラックに、フリフリヒラヒラのワンピースやブラウスにスカートが沢山かかった商品を、リリーちゃんがよっこらせ、よっこらせと重そうに引っ張ってきた。
これも演技なのか!?・・・おっ恐ろしい・・・。
「選んできたんだぞ!」
ふーっと腕で額の汗を拭う仕草をしてから、リリーちゃんがどーんっと胸を張るが、手に取らなくてもわかる。かかっている服が派手過ぎることを・・・。
「もうちょっと、シンプルな服が欲しいな・・・」
私の言葉に、リリーちゃんが大袈裟にガーンっという顔をして、如何にもショックを受けましたと主張してくる。
「ノアちゃんのために、選んで来たんだぞ・・・」
そして、そう言って、また俯いてしょぼんとする。
ノっノアちゃん!?・・・初対面での"ちゃん"付け、それも私のためって!・・・これも演技か!?なんて恐ろしい子・・・でも、流されちゃダメだ!ここは心を鬼にして・・・。
「ごめんなさい、リリーさん・・・私じゃ着こなせないな・・・」
「"リリーちゃん"で良いんだぞ!でも、仕方ないんだぞ・・・違うのを持って来るんだぞ・・・」
選んだ服が気に入ってもらえなくて、悲しいというふうにうつむき、そして、上目遣いできゅるるんと見つめてくる。
「ありがとう、リリー"さん"」
心の中では"ちゃん"付けだが、あえて笑顔で"さん"を強調した。彼女のペースに嵌まらないように・・・そんな私を、リリーはじっときゅるるんと見つめる。それを、"さん"じゃなく"ちゃん"にしろという無言の圧力に思えたので、それを笑顔のままじっと耐えた。
だが、私の"変えないぞ!"というのを感じて諦めたのか、何事もなかったようにリリーは、また奥によっこらせ、よっこらせと重そうにラックを引っ張っていく。
やっぱり、プロだわ・・・次は"ちゃん"で呼ぼう。
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