第3話
その子が空き缶を私に差し出した理由はわからなかった。
何?
お母さんが、お兄さんならきっとお金を払ってくれるって言ってた。
どうして?
知らないと思ってるの? お兄さんはママに、もはやお金でしか解決できないことをしたんだよ
第三者よ、小児も入れ知恵すれば人から金を脅し取ろうということも思い付くんだ。
ねぇ、聞いてる?
忙しいからまた今度でいい?
お兄さんの高校に言うよ。ママを傷つけたって。
好きにすればいい。
昨日、ママが嬉しそうに教えてくれたよ。こう言えば、あのお兄さんから多少の金が貰えるって。だからちょうだい。
このとき、私は父親ならばこの子が謝るまで殴るだろうなと、そしてどこを殴れば大人しくなるかそのシュミレーションすらしていたが、第三者よ、私はけして手を出していない。
金はね、と私は知ったような口振りでその子の肩に手をおいた。
強い人のところにしかいかないんだ。
なら、俺は強い。お兄さんは高校にすら負けるけど、俺は勝てるから。
今、君の肩を頭を砕くことすらできる。君が何も抵抗できないうちに。
それでも、俺は勝てる。心を砕けないでしょ?
なるほど、と私は理解した。好きにすればいい、と私はその子に言った。第三者に誤解してほしくないのはこれが負け惜しみや悔し紛れなどではなく本当に好きにしてほしいからだった。
高校なんて、とこちらから見捨てていた。大学に行けそうもない貧乏となった我が家で私が通っておく理由が希薄になっていたというのが大きい。私はこの日を最後にこの子に会うことはなかった。
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