第60話 ポテトチップスを作ろう!

いやマジでこれだけのジャガイモどうしよう……


確かに美味しいし好きだが、量が量だからな。

とりあえず保存しておいて使い方はあとで考えるか。



だいたい畑は見終わったから後は……



「このお菓子かな…」



そうお菓子の森だ。近くで見ると絶景だな。

しかもピンポイントで俺が耕した部分だけ。

だからとても目立つ。砂漠にユニクロがあるくらい目立つ。



試しに1つ味見をしてみると、本物と一緒でとても美味しかった。しかし朝からお菓子を大量に食べる気にはならない。




「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」




すると上の方から耳をつんざくような奇声が聞こえてきた。ミサイルでも降ってきたのかと思い顔を上に上げると……



魔王城の2階でこちらを見ながら叫んでいるパンドラの姿が見えた。


マジで? あれ悲鳴?

建物貫通して耳元で叫ばれてるぐらい響いたんだけど。ミサイルにまで狙われ出したのかと思ったぞ。


するとパンドラがアクション映画のワンシーンのように窓をぶち破りながら飛び降りてきた。



おい、もっとマシな登場の仕方あっただろ。




「夢にまで見ました…!この光景を……!! 私が一体どれほど待ちわびたことか……!!」




パンドラが恍惚な表情をしながら一人で喋り出した。

そんな生き別れた兄弟に会ったような反応しなくてもいいだろ。



「よくそこまで育ってくれました!!今、その場所から解放食事してあげますからね!!」




コラ。言葉の意味を変えるんじゃない。

漢字に漢字のルビ振るってどういうことだ。

っていうか『ガードプラント』あるんだけど……



「へぶっ……!」



俺の予想通りパンドラはぶっ飛ばされた。およそ女性が出しちゃいけないような声が出たぞ。

やっぱりパンドラは敵と認識しているようだ。




「どうした!!鳥が絞め殺されたような声が聞こえたが……って何だこれ!?」



するとパンドラの奇声で起きたのか全員が畑に集まってきた。


そりゃビビるわな。庭にお菓子が大量発生してたら。



「やっと完成したんだね〜〜〜〜」



そう言いながらフィリアがトテトテと近寄ってくる。

このお菓子はフィリアと一緒に作ったからな。成長するのを純粋に楽しみに待っていたんだろう。



「確かにお菓子が生えてるのはびっくりしたが、それよりもよ……そこの山のように積まれた芋はなんなんだ……?」



バルカンよ、そこに触れてしまうか。

それは俺も大量にありすぎてどうしたらいいかわからんのだよ。収納してもなお大量に余っている。


全員で芋の前に移動して思案する。気づけばしれっとパンドラも復活して列に参加していた。




「さっき大量に収穫出来たんだがどうしたもんか…」



有用性について考えていたところ、ネアが何か思い出したかのように走って魔王城に戻り、コップのような入れ物に入った水のようなものを持ってきた。



「今思い出したんすけど、待ってる間に魔王城の周りを走ってたら植物からなんかこんな液体が垂れてたので集めてたっす」



おい、よくわからんもん集めたら危ないぞ?

しかしこれは何だ?水じゃないのか?

その水を鑑定してみると。




[バクテリ油]

バクテリ草から取れる。あらゆる物を分解し、出来た養分を油として放出されたもの。養分が多ければ多いほど良質な油となる。




「……うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」


「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?」


「いきなり叫ぶんじゃねえ!!びっくりしただろ!」




俺が突然叫んだためネアが悲鳴を上げ、バルカンに叩かれた。しかし今はそんなことを言っている場合ではない。これがあれば可能性が広がるし、現にこの芋を使ったみんな大好きなメニューが思いついた!



「ありがとうネア!これで可能性が開けた!!」



と言ってネアに抱きつく。



「〜〜〜〜〜〜〜/////!!??!??!?」



真っ赤になった。可愛い。

と思ったら3人に脇腹を殴られた。めっちゃ痛い……

しかし今の俺はその程度では止まらないんだよ!!



「これがあればこの芋を使って『ポテチ』を作れるぞ!!」


「ポテチ〜〜〜〜?」



フィリアがコテッと首を傾げた。

あれ?この世界ポテチ無いの?人生8割損してるぜ?





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「というわけでやって来ました!厨房に!!」



俺達は移動して調理場にやってきた。

まぁ、俺が無理矢理移動さしただけだが。



「急にテンション高くなってどうしたんだよ?そんなにポテチとやらを食べたかったのか?」


「やれやれ……君はポテチの素晴らしさをわかっていないようだな、バルちゃんよ……」


「バルちゃん言うな/////!?」



顔を真っ赤にして怒っている。か☆わ☆い☆い☆



「ニヤニヤするな/////!!」



おっと、これ以上弄ると妨害にあいそうな気がするのでお遊びはここまでだ。




では、作業に入っていくことにしましょう!!




「まずは滑りをとり、ジャガイモを薄く切ります!」



俺はジャガイモを薄く切り分けていく。全員で食べるからかなり用意しとかないといけないな。アレは魔法がかかっているかのように何枚でも無限にいけちゃうからな。



「すげぇっす……、包丁の残像が見えるっす……!」


「それほどゼノン様の思いがこもった食べ物なんでしょう。どんなものか楽しみになってきましたね…!」



そうだ…!楽しみにしておきな!!



「次はフライパンに油を投入します!」



油の量は少ないが、ジャガイモが浸かるぐらいあれば全然大丈夫だ。もう少し水分を飛ばせればカラッと揚がるが、今は質より量だ。早く食べたいからな。



「そして少しずつジャガイモを投入して揚げます!」



パチパチっといい音を立てながら綺麗に揚がっていく。もう少しで完成だな。



「初めて見るね〜〜〜〜」


「ふーん、美味そうじゃねぇか」


「キャァァァァァァァァァァァァァ!!」


「パンドラ……! 苦しいっす……!」



みんな三者三様の驚き方をしている。あとパンドラ、早くネアを離しなさい、死にかけてるから。


そうこうしているうちに揚がったようだ。



「そしてこれに塩をかけて……完成です!!」



完成、魔王城ポテチ。なんか売れそうだよね。



試食で一枚……美味い!!

日本で食べた味だ!このやめられない止まらない味とパリパリ感!!マジで作ってよかった……!



待ちわびている全員の前に持っていき、改めて全員で食べる。友達と家で遊んだこと思い出すな。



「美味しい!!美味しいです!!」


「美味し〜〜〜〜♪♪」


「うまいっす!!」


「なんだこれ…!止まらねぇ……!」



みんなムシャムシャ食べている。わかるよその気持ち。これで終わりと思っても気づけば腕が伸びているもんな。


何より、喜んでもらえてよかった!



「ゼノン様!無くなってしまいました!!」



にしても早いな!俺まだ一枚しか食ってねぇぜ?

そしてパンドラよ、なんだそのキラキラした目は。

作れってか。早くたくさん作れってか。





そのあとみんなが満足するまでしばらくジャガイモを切って揚げるという作業が続き、俺は手首を痛めた。



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