第30話 バルカン??

我ながらとんでもないスキルを入手してしまった…


なんだよA5ランクになれるって…

俺魔物に食われる予定は無いぞ…



ビフテキノコで上がったテンションが5割増しで激減したため、パンドラも異変に気づいたらしく心配して質問してきた。



「どういたしました…? まさか……ビフテキノコをあまり食べれていなかったのでは!! 申し訳ございません…!私がほとんど食べてしまったばかりに…」




ほんとこの子は毎日幸せそうだなぁ…


心配された嬉しさと質問の頓珍漢さが相まって、おかげで何とも微妙なテンションにまで回復できた。


そうだ…この子は守ってあげないと…!




「いや…大丈夫だ。美味しく食べられるのは俺だけでいい…パンドラは俺の屍を超えて生きてくれ……!」


「いや本当に何があったのですか!?」




俺が途中でおかしくなったり、パンドラに割とマジで泣かれるんじゃないかと思うぐらい心配され、ギャーギャー騒ぎながら、俺達は森の奥へと進んで行った。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



お互いの気持ちが落ち着いてきた頃、俺はネアがいそうな場所に心当たりがないか聞いてみた。



「ネアがいそうな場所に心当たりはないか?」


「そうですね……申し訳ございませんが、私には見当もつきません… あの子は天真爛漫というか、元気が有り余っているのでそこら中を走り回ったりしていると思います。」



なるほど。今の情報だけで特定の位置にいる説は無くなったな。走り回っているのであれば出会う確率は本当に運任せだな。


さて…どうしたものか…



と、下を向きながら思案していると突然目の前の茂みがガサガサと揺れ、パンドラが大声で俺に叫んだ。



「ゼノン様!! バルカンがやって来ました!!」




俺は後ろから急に叫ばれたから急いでパンドラの方に顔を向けた。


何事かと思っ……今、バルカンって言ったか!?




「なっ! バルカンだと!? そいつは火山にいるんじゃなかったのか!?」



俺は慌てて顔を元の位置に戻し、目の前にいるであろうバルカンに目を向けた。





[脳筋ゴリラ]

全て力で解決できると本気で思っているゴリラ。太い腕はあらゆるものをなぎ倒す。肉は筋張っていて食べにくいが、食べられないほどではない。





目の前には身長2〜3メートルほどはあろう、太い腕と頭から生えた一本のツノが特徴的なゴリラがいた。




「……ゴリラじゃん!?」


「バルカンです!!」




いや、バルカンに何の恨みがあるんだよ!?

思いっきり種族名脳筋ゴリラって出てんだけど!?


てかこれが名前?見るからに頭が悪いってわかるわ。




すると目の前のバルカ……ゴリラが急にドラミングをしたかと思うと、腕を振りかぶって俺達に襲いかかって来た。




「やはりバルカンは戦闘でしか会話が出来ないようですね……!」



「いやバルカンじゃないから!!」




まだバルカンと言い張る思念丸出しのパンドラをお姫様抱っこして、攻撃を回避した。


急にお姫様抱っこしてしまったため、パンドラは顔を赤くしてワタワタしていた。




「……///// 少しはバルカンに感謝をしないといけないようね/////」


「いやだからバルカンじゃないからな!?」





俺はその場にパンドラを下ろし、臨戦態勢に入る。


すごく名残惜しそうな表情で俺を見てきたが今は照れている場合ではない。



ゴリラが殴った場所が陥没している。しかも木にぶつかっただけでその木が折れている。


これは少しでも気を抜くと骨折粉々ぺっしゃんこコースだな。




ただ見ているだけにも行かないので、とりあえず風刃を打って様子を見よう。



すごい速さで風刃がゴリラの首に迫っていく。この調子なら胴から首がおさらばだ。




が、繰り出されたパンチの風圧でかき消された。




さすが名前に脳筋って書いてるだけあるな。まさか風圧だけで俺の風刃がかき消されるとは……

俺もかなり強くなったはずなんだがな。





次はファイアだ。



が、また風圧だけでかき消された。



そこで俺は気づいた。気づいてしまった。

まともな遠距離攻撃スキルこれだけということに。



その現実に心が少し折れそうになった。



少なっ!!

意味が分からんスキルばっかり増えて遠くから攻撃する手段この2つぐらいかよ!?


近距離スキルなら一応あるが、もし殴られて死んだら嫌だしな……




俺が現実の厳しさに絶望していると、ゴリラに異変が起きた。




脳筋ゴリラは自分の方が強いと悟ったのか、ニヤニヤとバカにした顔で俺達を見てきた。




「ゼノン様……早くあのバルカンをぶち殺して下さい……あの顔見てるとはらわたが煮えくりかえります………!!」



「物騒なことを言うな………と言いたいところだが、生憎俺も今すごくぶちのめしたくて仕方ないんだ…」





あのゴリラは天才だな、人をイラつかせる。

今なら口からビーム打てそうだよ。


どうやって楽に倒そうかと思っていたが、やめだ…

早急に駆除してやろう…

俺達をイラつかせたことを後悔するがいい…!



今の俺達は人に見せられないような表情をしているだろう。臆病な魔物なら見ただけで殺せそうだ。



今までの風刃やファイアにはMPを込めていない。ここまで言えばもうお判りでしょう。



「【風刃】」



俺はMPを1000込めた。

少し込め過ぎかと思ったが、あまりにもイラッとしたのでこれぐらいが妥当だと思う。



すると、手から直径およそ4メートルはあるであろう三日月型の風の塊がすごい勢いでゴリラに向かって飛んで行った。



ゴリラはニヤニヤしながらパンチの風圧を繰り出してきたが、そんなものではこの風刃は止まらない。




風圧をも打ち消し、脳筋ゴリラは何か言葉を発する暇もなく真っ二つになった。



さらにゴリラを真っ二つにするだけでは止まるはずもなく、どんどん遠くに飛んで行き、最終的には遠くにそびえ立っていた山の頂上をも真っ二つにした。





空いた口が塞がらないとはこういうことを言うのだろう。


今の俺達はとてもマヌケな顔をしているだろう。それでも言わせてほしい……





………俺、かなり強くなっていたんだね。


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