第26話 家庭菜園開始!
釣り堀で思いのほか楽しんだ後、俺とフィリアは魔王城の外に出てすぐのところに来ていた。
目的は畑を作ることだ。
畑を作ればいつでも新鮮な野菜を食べることが出来るし、何よりレシピの幅が増える。
しとやか草のように単品では食べられないが、何かとセットで料理すると食べられるようになるものもあるかもしれないしな。
あとフィリアも帰り道に何の種かはわからないけどいろいろ拾ってたから、それを育てたら新しい食材になるかもしれない。
ぶっちゃけ、いい異世界生活にはいい畑が必須だと思う。のんびり生活系の主人公って基本畑をいじったりしてるから。
そのためにはまず土を耕さないといけないな。
いい野菜はいい土壌からって知り合いの農家のおっちゃんも言ってたし。
「野菜を育てるには〜〜、いい土にしないと〜〜、育ちづらいよ〜〜〜〜?」
ほら、フィリア大先生もこう言ってるし。
さてどうしよう。
ここには肥料も何もない。
一から肥料を作るためには、家畜の糞と葉っぱなどを燃やして作るのが一番効率的だが……
「土なら〜〜、私の力でいい土に出来るよ〜〜」
早速問題は解決した。
フィリアが地面を触ると一瞬でフワフワした綺麗な茶色の いかにも元気ですっていう感じの土になった。
えっ? フィリアの力すごくない?
畑作るのに俺いる?
だが畑をいい感じに耕すのは俺の仕事だった。
あのあと一瞬でパンドラに作ってもらった鍬を使い畑を耕そうとしたが、フィリアが鍬の重さに耐えきれずプルプルしていた。
というわけでフィリアには少し休憩していてもらい俺が耕すことになった。
「畑の大きさはどのくらいにする?」
「う〜〜ん、このくらい〜〜?」
そう言ってフィリアは歩いて線を引き始めた。
大体 縦横10メートルぐらいの大きさだろうか?
ちょうどいい大きさだと思う。
別にめっちゃでかい食材とか育てる予定無いし。
「ああ。そのくらいで大丈夫だと思う。」
そう言って俺は早速畑を耕し始めた。
こういった作業は俺は手慣れている方だと思う。
昔はよく知り合いの手伝いをしたもんだ。
農家は過疎化が激しいから手伝ったらいつも喜ばれたっけ。そのあと野菜をご馳走してもらったり……
元気にしてるかな、おっちゃん……
そう考えているうちにいつのまにか畑を耕し終わっていた。
昔ならしんどかったり腰が痛かったりしたのに、今回は全然そんなことない。これもレベルのおかげか?
まぁ、これだけレベル上がってこれくらいの作業でしんどがっていたらこれからやっていけないと思う。
終わったことを報告するためにフィリアを見てみると気持ちがいいぐらい熟睡していた。
もうだんだん慣れてきたな……
俺は気持ちよさそうに寝ているフィリアを起こす。
「おーいフィリア、起きろ〜」
「う〜ん、もう朝…?」
「さっきからずっと朝だぞ。」
ささっとフィリアを起こして俺達は種を植えていくために行動を開始した。
しばらく何の種を植えるか考えていた時、ある一つの結論にたどり着いてしまった。
俺の鑑定が種には反応しないということを。
[何かの種]
種。それ以上でもそれ以下でもない。
初めてだ。鑑定に小馬鹿にされたような感じで 少しイラッとしたのは。
ということは何の植物が育ってくるかは完全にランダム 育って見ないとわからないということだ。
もしかしたらフィリアなら何か知っているかもしれない。一度聞いてみよう。
「フィリア。 これが何の種かわかるか?」
「う〜〜ん、いろんな種類があるから〜〜、わかんな〜〜い。 あっ、これはわかる〜〜。 これは〜〜 ビリビリレモンの種だよ〜〜〜〜。」
じゃあこれは除外だな。
これは食えたもんじゃない。状態異常耐性を持っていなかったら死ぬんじゃないかというぐらい痺れるからな。俺はまだしも2人が危険だ。
「じゃあ植えて育ってからのお楽しみだな。」
「そうだね〜〜。今から楽しみ〜〜♪♪」
俺達は1メートル感覚でいろんな種をどんどん植えていった。
そして最期の種を植え終わった後、フィリアは嬉しそうに言った。
「かんせ〜〜〜〜い!」
やっと完成だな。これをいろんなスキルや魔法無しで行う農家の方々は偉大だと思うよ。
全ての作業が終わった後、俺は魔王城内に帰ろうとしたところをくたくたになったフィリアに引き止められた。
「どうしたんだ?」
「まだ〜〜、最後の仕上げが残ってるよ〜〜?」
「最後の仕上げ?」
まだ何か残っているのか?
全ての作業をしたような気がしたんだが…
「え〜〜い!」
そう言うとフィリアは畑に手をかざした。
しかし何も起こらなかった。
「じゃあ水をあげて〜〜、家に帰ろ〜〜〜〜!」
「ちょっと待て! 今何したんだ!?」
まさかさっき手をかざした行為を無かったことにする気か!? 気になって寝れんだろ!
さっきフィリアが一体何をしたのか問い詰めることにした。
「さっきのは〜〜、おまじないだよ〜〜」
「おまじない?」
よくわからん答えが返ってきた。
「私が手をかざすと〜〜、植物が早く育つんだ〜〜 1週間以内には〜〜、収穫できるよ〜〜」
これがドライアドと特性なのかフィリアの力なのかはわからないが、とにかくすごいなと思った。
やはり植物に慕われているからか成長を促進させる能力もあるのか。これからは定期的にいろんな食材を確保できそうだ。フィリアさまさまだな。
一つ気になることがあったので聞いてみた。
「すぐに成長させることはできないのか? いつもいろんな植物をそこらじゅうから生やしていたが……」
そう、砂糖を回収するときや魔物を拘束するときに植物をすごいスピードで成長させていたのを思い出した。それに、簡単な果実なら作って食べていたとも言っていたしな。
そこのところどうだろうか?
「私が生やすことができるのは〜〜、特定の決まった植物だけなんだ〜〜。だから〜〜、私の影響下にない植物は〜〜、成長を促進させることしかできないんだ〜〜」
なるほど。そんな縛りもあるのか。
そらそうだよな。何でもかんでもぽんぽん成長させられたら、それこそチートだもんな。
ん? さっき俺は簡単な果実を作って食べていたって聞いたって思ったよな?
……なんか言葉回しがややこしいがまぁいい…
その果実を作ってもらって、それを俺が食べたらどうなるんだ?
俺の予想では、俺も成長を促進させるスキルを得られると思うんだ!
俺は少し期待しながらフィリアに果実を作ってくれないかと頼んでみた。すると…
「いいよ〜〜。でもそんなに美味しくないよ〜〜?」
「いや、大丈夫だ。ちょっとした好奇心さ。」
そうして果実を作ってもらった。どんな形をしているかというと、ブルーベリーを赤色にしたような感じのキラキラした果実だ。
[エネルビー]
ドライアドのみ育てることができる希少な果実であり、エネルギーの塊。食べると少し疲労が回復する。高級食材。
こんな希少なものだとは思わなかった。
そんなに美味しくないと言ってたから、もっと簡単なものだと……
この解説見るとなんか食べるのに躊躇してしまうな。
すごくフィリアにじっと見られたので食べてみた。
めっちゃうまいじゃん!!??
食べた途端に口の中で弾けたぞ! そして同時に襲いくるすごく芳醇な風味、少し甘酸っぱくも何個でも食べれそうだ。そして何より疲労が一気に消えた。
さらにレベルも上がった。
------ーーーーーーーーーーーーーーーー
名前 : ゼノン
種族 : 魔王 レベル : 45
【体力】: 15800 (+11300)【MP】: 5400 (+1300)
【攻撃力】: 2835 (+650)
【防御力】: 2900 (+650)
【素早さ】: 2760 (+650)
【運】 : 250
【ユニークスキル】: 【悪食】【能力吸収】【鑑定】
【称号】: 【新米魔王】【卵に負けし者】
【ユニークキラー】
【ドライアドに認められし者】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
うおっ!? 一気にレベル13も上がった!?
エネルギーの塊って書いてあったが、ここまでとは…
それよりも恐ろしい数字が書かれているのに気が付いて、俺は意識が飛びそうになった。
それと俺の見間違えか?
なんかHPが一桁増えてるんだけど?
えっ!? マジで!?
一気に10000増えたぞ!!??
これめちゃくちゃすごい食材じゃないか!!
今度また作ってもらお。
ちょっとした思いつきから始まった行為が、まさかここまでの成長に繋がるなんて誰が思っただろうか。
今までの頑張りは何だったんだろうと少し考えさせられるような結果に俺は心底驚愕していた。
さらにスキルも覚えていた。
初めはスキル目的だったんだよな。ステータスが上がりすぎて忘れそうになっていたが……
かなり期待しながらスキル欄を見てみると…
ユニークスキル:【成長促進】
植物の成長速度や過程、結果に補正がかかる。このスキルは本人にも作用し、レベルが上がりやすくなる。
これまたステータスだけでなく、スキルもとんでもないものだった。
これは……またすごいな。
なんか凄すぎて驚くことも忘れるわ。
植物の成長を促進するスキルがまさかの自分にも適応するとはな。
それと称号も増えていたな。
【ドライアドに認められし者】か……
名前からしてもう凄そうなんだが……
【ドライアドに認められし者】
ドライアドに認められた者に贈られる称号。この称号を持っていると、植物の成長がより速くなる。
これまた凄かったよ……
なんかあれだ…… こんなに一気に強くなったらなんか申し訳なく思ってくるな……
まさか果実一つでここまで強くなるとはな。
これから新しいエリアに行くと考えたら強くなるに越したことはないが。
まぁ、また一歩魔王らしくなれたかな?
ひとまず今得たばかりの成長促進を使ってみることにした。
すると、今植えたばかりなのにもう芽が出てきた。
「えっ!?」
あのフィリアでさえ驚いている。
俺もビックリした。見よう見まねで手をかざしたらいきなり生えてきたんだから。
「これ〜〜、ゼノン様がやったの〜〜〜〜?」
「あぁ、そうらしいな。」
もしかして気分を害してしまったか?
「ゼノン様すご〜〜〜〜い!!」
と思ったら絶賛だった。
「こんなに速く〜〜芽が出るなんてびっくり〜〜! こんなこと出来るのは〜〜〜〜、ゼノン様ぐらいだよ〜〜〜〜。やっぱり〜〜だ〜〜い好き♪♪」
そう言ってフィリアは腕を絡ませてきた。
大好きとは照れるな/////
それと腕!! 女子と腕組んだの初めてだ!!
それぐらい喜ばれたってことだ。嬉しいな。
これからももっと笑顔にしてやろうと思う。
こうして畑も作ることが出来たしフィリアの好感度も爆上がりした。
そして、俺はパンドラの待つ魔王城内へ帰って行った。腕を絡めてきたままのフィリアを連れて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます