第9話 死闘
シトラスの余韻に酔いしれた後、俺たちはもっと東に進むことにした。
「結構進んだが、見渡す限り草原だな。危険な動物も少ないし 花も綺麗だし、平和の一言に尽きるな。」
「ええ。天気が良くて絶好の散歩日和ですね。」
あぁ、平和だなぁ。ここは異世界だからもっと危険で凶暴な魔物がうじゃうじゃいると思ってたからなぁ。
この調子なら危険な魔物に会わないでのんびりレベル上げられそうだなぁ。
なんかフラグっぽくなったけど、この雰囲気なら大丈夫かな。はっはっは!
すると…
ドゴオォォォォォォォォォォォォン!!!!
轟音とともに俺たちの前の地面が消えた。
はっ?
何が起きた?いきなり目の前の地面が消えたぞ!?
「ゼノン様!!その場を動かないでください!!
ディメンションイーターが現れました!!」
そこには人間を丸呑みに出来るであろう大きな口に真っ黒な体、体長はおよそ8メートルほどの大きなカバに似たような魔物が突如現れた。
ディメンションイーター??
とにかくあれはヤバイ!そんな気がする!
とにかく鑑定だ!!
[ディメンションイーター]
あらゆるものを喰らう魔物。ディメンションイーターに食べられたものは亜空間に飛ばされ消滅する。食用ではないが、皮はマジックバックの素材として使われる。
何だよこれ!?消滅!?攻撃くらえば即死かよ!!
ってことはさっき地面が消えたんじゃなくて、奴に食われて消滅したってことか!!
「動いてはいけません!ディメンションイーターは目が見えないのです。奴は気配を頼りに攻撃してきます!!そのまま動かなければやり過ごせるはずです!!」
するとそこに一匹のうさぎが通りかかった。
次の瞬間、うさぎがいた地面ごと消えた。
そして、1つのクレーターが出来上がった。
なるほど。動いている物体の気配を捉え襲いかかるって感じか…
急な出来事だったから消えたように感じたが、改めて見てみるとえぐられたって感じだな。
ヤバイな……俺たちの存在に気づいてるのか、その場から動こうとしない…
もう倒すしか方法がないのか?
さっきの動きを見た感じじゃ避けられない速さではなかった。
一か八か賭けに出てみるか……
頼むから効いてくれよ?
「【ファイア】!」
俺は全力でファイアを唱えた。
が、渾身のファイアは奴に飲み込まれて消えた。
そして、俺の方に向きを変え飛びかかってきた。
やっぱり効かないか!!魔法は飲み込めないと思ったんだが、やはり外れか!!
「くっ!」
右に大きく飛ぶことで何とか避けれたが、着地の衝撃で吹き飛ばされた。
体勢を立て直せ!次が来るぞ!
しかし、その場から動こうとしなかった。
そして、次の攻撃はこず、再びその場で獲物を探し始めた。
どういうことだ?たしかに俺の居場所に気づいて攻撃してきた筈だ。
気配で探るなら俺の居場所はバレているはずなのに何故動かない…
まてよ?もしかしたらこいつは気配で獲物を探しているんじゃないのかもしれない。
だとすると……
「ゼノン様!!」
「いや、大丈夫だ!!それよりもカバンを貸してくれないか?出来るだけその場を動かずにな。多分次は当てられそうだ。」
俺は慎重にパンドラからカバンを受け取った。
そして俺はカバンに収納されていたロックフェザーを少し離れた場所の少し上から落ちるように取り出し、そして音を立てて落ちた。
すると、奴はロックフェザーの死骸に食らいついた。
やっぱりだ……!あいつは気配を探っているんじゃない!あいつは地面に接触する音・を聞いている!
俺がファイアを打った時、体が少し動いたんだ。うさぎを食った時も着地した瞬間動いたように見えた。
じゃあ何故俺があいつの攻撃を避けた時、すぐ攻撃してこなかったのか?俺の予想が正しければ、あいつは攻撃した後は少しタイムラグがでる!あの図体だ…すぐには動けないんだろう!
だから……獲物に食らいついた今この瞬間が攻撃を当てるチャンスだということだ!!
「【ファイア】!!!」
ボオォォォォォォォォン!!
「グオォォォォォォォォォォォォォ!!」
俺の全力のファイアはディメンションイーターの右前足を吹き飛ばした。
だが、それでも奴は死ななかった。
嘘だろ!?全力だぞ!?こいつ頑丈すぎだろ!!
マズイ…どうする!?もう音を立てられるようなものは無い…それにあいつはもう俺の居場所を突き止めている!!
今走り出しても音を聞いて襲ってくる…もう一度ファイアを打っても多分食われて終わり……
考えろ…どうする!?
このままでは食われて死ぬぞ!!
その時、ディメンションイーターな頭にナイフが当たった。
ナイフが飛んできた場所を見るとパンドラがいた。
「ゼノン様に……手を出すなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「パンドラ!?やめろ!!食われるぞ!」
手が震えているじゃないか……!
まさか…!自分が囮になって隙を作る気か!!
急げ俺!!早く考えろ!!
もうあいつはパンドラに狙いを定めている!
右前足が無くなった分動きが遅いがそれでももうじき動き出すだろう……
俺は弱い……!
部下一人も守れないのか………!
何かないか!!何か!!!!
その時、吹き飛ばしたディメンションイーターの右前足が目に入った。
ははっ……
そうだよ…
俺には【悪食】と(能力吸収】があるじゃないか……
あいつの肉は食用ではない……しかし俺は人には食べられないものも食べられる……
だったら簡単なことじゃないか………
今ここで……
強くなればいいだけのことだ
俺は奴の前足を食らった。すると……
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名前 : ゼノン
種族 : 魔王 レベル : 15
【体力】: 2710 (+1300) 【MP】 : 2400 (+1000)
【攻撃力】: 1325 (+600)
【防御力】: 1400 (+700)
【素早さ】: 1200 (+500)
【運】 : 250
【ユニークスキル】: 【悪食】【能力吸収】【鑑定】
【称号】: 【新米魔王】【卵に負けし者】
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やはりこいつはかなり強かったようだ。
食べただけでレベルが10上がった。
さっきまでの気持ちが嘘のようだ……
今ならいける!!
最近気づいたんだが、【ファイア】を打つたびMPが減っていた。さらにMPをどれだけ消費するかによって威力が変わるということを……
「さっきまでの俺とは訳が違うぜ?俺の大切な仲間にっ…………!手ぇ出してんじゃねぇぇぇぇよ!!」
ありったけのMPを込めてやる!!!!
するとこちらに気づいたディメンションイーターが敵わないと気づき、逃げるそぶりをした。
「もうお前ごときじゃ俺から逃げられねーよ。俺からのプレゼントを受け取れ。【ファイア】。」
ボゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!
目の前が爆炎に包まれた。
そして視界が晴れると………
上半身が消し飛んだディメンションイーターの死骸が転がっていた。
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