かわいい子には足袋を履かせよ

最近、あいつの様子がおかしい気がする。いつもの堂々とした図々しさがない、気がする。いつも見ている僕だから分かるのか、誰でも分かるのか、とにかくおかしいのだ。どうしたというのだ。

「有紀、なにかあったのか?」


僕には遠慮というものがない。正確には有紀の前では、という条件付きなのだけれど。利己的とはそういうものだ。


「あなたには幼馴染として、私に悩みがあればそれを解決する義務があるわ。そうよね?」


曖々然で昧々然な僕の不安が一つ、形を成した。最後の一言は確認ではなく同意を求めている。そもそも平時は確認もなくただ当たり前にそうであるようにを定める。自発的行動を怠惰にしてしまう僕はそのレールの上を進むだけ、いままではそうだったじゃないか。ほんとにどうしてしまったんだ。こいつを変えうる何かに出会ってしまったというのか。


「話を聞くくらいならしてやらんでもないけどな。だけど相談料は高いぞ、僕実はクラスの中では相談役の名手として・・・」

「お願い・・・」


僕の言葉を遮ってまで発されたその言葉は恐怖におびえていて、震えていた。ここまでかったことは過去に例を見ない。邪推はやめよう。一刻も早くこの少女を救ってあげなければならない。やれやれ人の相談なんて面倒にもほどがあるけれど、僕は心底彼女に溺れていて、これからも溺れ続けていたいようだ。

「わかった、全部話してみなよ」僕はそう声をかけた。

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