第2話 話の始まりは2話からっていうだろう? 

舞台は高校。青春あふれる空気が漂う教室の隅に僕はいる。怠惰で、何事にも億劫だと思ってしまう僕は机の横に立つ存在を認識していなかった。


「あなたは本当に怠惰ね。脳の活動まで停止してしまったのかしら?それともこれが基本性能なのかしら。どちらにしろ歯車にもなれないことは決定事項から確定事項へ変更しておくわ。」


その二つの間に違いが見いだせないことは今は黙っておこう。


「なにか用か?」


「とっくに気づいていたけれど、私に好意があるらしいから正式に断りに来たのよ。」


歯車の時点で序章を読まれてることに気付くべきだった。もう遅い。


「返事をいうからよく聞きなさい。これは義務よ。私はレズビアンであってレズビアンであるべきでレズビアンでなければならないからあなたの好意は受け取れないの。あなたの好意と恋情はお返しするわ。」


もう答え言ったよね?と確認する間もなく恋心の返還が行われた。返さず捨ててくれよと思う気持ちは自分で捨てた。これでも自分は物分かりがいいほうだと思っている。


「あなたはそうやって会話すら疎かにするところよくないわよ。あなたは怠惰すぎて植物になる未来が見えるわ。脳も委縮し始めているから負のスパイラルに陥るわよ。」


やはり見透かされている。僕は比喩の面で単細胞だとでも言いたいのだろうか。

「委縮していることが確定事項のような言い分だけれども、それでも僕の身を案じてくれる有紀を愛しているよ。」

「まわりの歯車に悪い影響を及ぼさないようための整備っていったらその脳でも理解できるかしら」


ひどい言いぐさにはもう慣れたよ、とだけ嘯いて僕は立ち上がる。別に本当にひどいと思ってはいないが、適当に日々を過ごしている僕にとって意味のないセリフであることは明白だ。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る