浪費
心 凪
第1話 序章
「あなたは私から目を離してはいけないわ。これは義務なのよ。」
高圧的で、利己的で、勝手に身勝手な義務を押し付ける彼女の名は西野有紀。ロングの黒髪が似合う美しい彼女は、黙っていれば完璧なのである。何かの拍子で絵画の世界に閉じ込められてほしいくらいだ。本当に。彼女はこうも言う。
「私はレズビアンなのよ。美しくてきれいなものしか受け付けないわ。男は論外よ、だって汚くて意地汚くて意地悪だもの。」
さすがに言い過ぎじゃない?。自信のない僕にはここまで断定的にものをいう力も度胸もない。重ねて彼女は口を開く。
「私は美しいものしか愛せない。だから構成する要素が、性の対象が美しさだけのこの自分がこの世で一番愛おしいわ。」
ナルシストなんだよな、まあ知ってたけど。そしてそんな彼女を好きになってしまったかわいそうな男がここにいる、僕のことだ。有紀の幼馴染でありながら唯一の美しさ以外の構成要素である、あってほしい僕の名は東条歩。悲しいことに特段話すこともない僕は、こうやって語り部のポジションを任されているのだ。
ここからは彼女のお話であり、僕は彼女の歯車の一部として尽力していくこととする。
どうも、ごきげんよう。自称歯車から語り部を譲り受けた西野有紀ですわ。私は特段話す必要はありません。否が応でも気づいてしまう、わかってしまう、そんな魅力を私は持っていますから。
それではまた。
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