やたらとうるさい雷

 その木と呼ぶにはあまりにも大きすぎるものには、ほんの少しのなつかしさがあった。しかしそれを知っているか知らないかと言われれば知らないのだ。

 確かに自分と似た生物だとも思うが、あのかわいくないのと似ているかといわれると全くの別物だと言いたくなる。だって不細工じゃんアレ。

「知らね。」

「ごめん怖くて小便漏らしそう。」

 不甲斐ないなこいつ。でも彼がどんな気持ちで、何故気圧されているのかはわかる。

 あいつは、自分のことを畏怖するように見かけを操作しているのだ。ネ?不細工で、汚くて、愚かでしょ?それは美しくない。

「小便漏らすならそこらへんの草むら行ってよね。」

「そうさせてもらう。」

 ほんとにするじゃん。栄養の素だなあいつ。

『おや?玉手箱の中身が出ているじゃないか』

 声でっか。うるせぇ!思わず耳を塞いでしまうほどの声量だ。

「・・・・・」

『・・・・・・・・』

 なんか言ってるけどよくわからん。


「うおっ雷だ!!近かったな!!」

「なんか言った?」

「雷落ちたなって。」

「?」

 いつの間にかあの大きさの木が跡形もなく消失していた。

 さっきまで確実にあそこに在ったのに。

「あのでっかい木はどこに行ったんだ?」

「目瞑ってたからわかんない。」

 なんで目瞑ってんだよ。

「取り合えず消えた山の方行ってみるかヘンテコ生物!!」

「・・・ユグドラシルって呼んで?」

「長いからユグで。」

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