新語怪獣アルデンバランモスの再来
ちびまるフォイ
天地の万物を紡ぎ相補性の巨大なうねりを経て自らをエネルギー疑縮体へと変化した怪獣
突如、現れた巨大怪獣は世界を火の海へと変えた。
怪獣の頭部には「アルデンバランモス」と書かれていたのでその名前で呼ばれるようになった。
『速報です! アルデンバランモスが海を超えて来ています!』
『市民のみなさんは落ち着いて避難してください!』
『ああ! アルデンバランモスが見えました!!』
迫りくるアルデンバランモスの驚異に対して世界は協力し、
あらゆる軍事技術を結集してやっとこさ倒すことに成功した。
世界は平和になった。
人類の勝利に沸き立つ世界。
世界のトップは全世界にこの勝利を伝えることにした。
『みなさん、我々の力を結集した結果
巨大怪獣アルデンバランモスを倒すことに成功しました。
これは世界平和化の緊急性質減少を積極的抑制とともに
人類淘汰への間接的関与に関する蓋然性を忸怩したのです!』
「……?」
なにを言っているのかわからなかったが、
まあとにかく平和になったのでよかったと誰もが沸き立った。
7つの新巨大怪獣が現れるまでは。
「おい見ろ! 今度の怪獣は別の名前が書かれているぞ!!」
逃げ惑う市民は迫る巨大怪獣の頭を指差した。
前は「アルデンバランモス」と書かれていた頭部には「世界平和化」と書かれている。
「こっちは"緊急性質減少"って書いてあるぞ!?」
「あっちは"積極的抑制"だ!」
巨大怪獣の誕生と、頭部に書かれている文字。
怪獣専門家たちはそのふたつを見てピンと来た。
「まさか、新語を作り出すと同時に怪獣が生まれているのか!?
あの怪獣はよくわからない言葉を使われて苛立つ人間の怒りを体現してるのか!?」
「なんてことだ。このことを早く伝えないと!
新語怪獣警戒非常体制をしくんだ!」
「おい! 変な新語を作るんじゃない!!」
地球の地下プレートが盛り上がり新しい巨大怪獣"新語怪獣警戒非常体制"が生まれた。
次々に生まれる巨大怪獣に逃げ遅れた偉い人達は焼き尽くされた。
失われたリーダーを求めて立ち上がったのは若い活動家だった。
「みんな! リーダーを失った今、立ち上がるべきは俺たち若い人間だ!!」
活動家はジャンヌ・ダルクのように力強く旗を掲げた。
「アジェンダのエビデンスがサステナビリティ危機を脱するため!
ダイバーシティのリスケをフィードバックしてタスクバッファするぞーー!!!」
「「 や、やめろーー!! 」」
活動家の言葉に呼応したのは人間よりも怪獣だった。
新語怪獣「アジェンダ」「エビデンス」「サステナビリティ危機」「ダイバーシティ」などが生まれてしまった。
あっという間に町は灰にされて活動家は消し炭にされた。
人類はますます境地に立たされる。
この状況にしびれを切らした一般人代表の女子高生は立ち上がった。
「みんな、マジやばたんな今だからつらたん丸のぴえん卍で
ガンバりんぐの匂わせでドン勝つしてバリタピっていくしかないじゃんね!」
「「 はやくそいつをだまらせろーー! 」」
追い詰められる人類とは対象的に増える巨大怪獣。
もはやかつて人が暮らしていたような生活に戻ることはできない。
世界は壊滅的なほど新語の化身に痛めつけられてしまった。
生き残った人間たちは身を寄せ合うようにして洞窟など
新語怪獣たちに踏み潰されない暗がりへと追いやられた。
「私たち、これからどうなるんだろう……」
「バカ! しゃべるんじゃない! 新語が生まれたらどうする!」
新語を作るつもりはなくても意図せずに新しい言葉を作ってしまう場合がある。
しだいに言葉をかわさなくなり、絵や図で意思疎通をはじめるようになった。
ある日、水を汲みに洞窟の外に出ると新語怪獣「よいちょまる」が息絶えていた。
「■○×!!」
非言語で生き残った仲間を呼びつける
誰も言葉を使わなくなったことで新語怪獣は栄養を失い死語となっていた。
世界を救うには強力な軍隊で撃退することでも、
みんなの力で団結することでもなく、単に話さないことだった。
生き残った人たちがそのことに気づくのはあまりに遅すぎた。
「××、×××、×××!」
生き残りの長老はみんなに絵と図で指示を出した。
もう二度とこのような言語侵略が行われないようにするため。
自分たちが死んでもこの事実を後世に残すため。
けして風化することなく、いつまでも残り続けるように絵を残した。
それから2万年後。
「見ろ! 洞窟に謎の壁画があるぞ!!」
洞窟の奥で新人類が壁画を見つけて歓喜した。
絵の内容はよくわからないが、この大発見を世界に向けて発信した。
「この絵の名前は、アルデンバランモスと新しく命名します!」
新語怪獣アルデンバランモスの再来 ちびまるフォイ @firestorage
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