第19話 少しの違和感。

「…いや……です。(…いや……だ。)」

ぽつりと溢れ出た本音は、心の声が聞こえる菜苳乃にとっては何か心を惹かれる何かがあった。

なぜこの子はそれほどの恐怖に怯えているのだろうか、この子になにかしてあげられることはないか…。

しっかりと考えが浮かぶ前に、菜苳乃の心から声が漏れ出していた。

「君、名前は?」

「…へぇ……?」

先程までとは全く違う質問に不意を突かれた男の子は声変わりをする前の高い声も合間ってか、絶妙に情けない声を出した。

すると、慌てた様に男の子が名前を名乗った。

「ま、凪雲春輝(なぐもはるき)…です。」

「凪雲春輝君…ね。私は、雨城菜苳乃(雨城菜苳乃)。知らない?私のこと。一応、テレビに出てる女優なんだよ?」

っと、菜苳乃は自慢げに尋ねたが、春輝は首をかしげて「ぜんぜん(見たことない…知らない人)。」っといった。

心の声が聞こえる菜苳乃は、それが自分に対するいたずらなどで知らないと言っているわけではないことは、心の声を聞けばわかる。なので、普通の女子高生のように「本当にぃ~?」などの反応をする意味はないのだが。

菜苳乃にとってこの力はコンプレックスの類委に近い、なのであえて菜苳乃は「本当にぃ~?」っと返した。

「じゃあ、最近テレビで何を見るの?」

そ菜苳乃が質問したことにより弾んできた会話が楽しくなってきたのか、春輝は先ほどまで足を椅子に挙げて胸元に膝を抱えこみ、体を縮みこませていたが、足を椅子から下ろし前後にぷらんぷらんと揺らし始めた。

「う~んとね。仮面ファイター ウィザーとかぁ~、あとはね、ミラクルマン!それと、五人一緒に戦う、救命組織 ウェントバスターズ!」

「えぇ~、どれも聞いたことはあるけど、見たことはないと思うなぁ。というか、どれも少し古くない?」

菜苳乃がそう思うのも無理はない。

春輝が楽しそうに挙げた作品たちはどれも、五年近く程前の男の子向けアクションものばかりだったからである。しかし、なぜこんな子供が「テレビで何を見るのか、という質問に対して五年近くも前の古い物を挙げたのか、少し疑問に思った菜苳乃は春輝に尋ねることにした。

「それって、再放送?」

「再放送?(また知らないことだ。)」

また、首をかしげる春輝に麗奈は、再放送について説明した。

「えっと。昔テレビであったものをもう一回テレビで流すこと。つまり、昔一度あったものってこと。」

「ううん、再放送じゃないよ!」

「そっか。じゃあ、借りたDVDとか?」

「ううん。ちがう!今毎朝やってるやつだよ。」

考えられる可能性をいくつか質問しても、春輝はすべて顔を横に振った。さらには、あり得るはずのない答えを春輝は言った。しかし、何かの勘違いだろうと思うことにした菜苳乃は、すっかり話に夢中になっている春輝に、一つ提案をすることにした。

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