第18話 怖がりな金髪少年

個室から出ると、すぐに自動販売機の明かりらしきものを見つけた菜苳乃は、明かりの方へと歩き始めた。

だんだん明かりが強くなって自動販売機の姿が見えたと思えば、自動販売機があるその場所は休憩室となっており、机と椅子、壁沿いにはソファーが並んでいるのだが、自動販売機のすぐ近くにある椅子に人影が見えた。

(誰だろう…。え、もしかして外人?)

菜苳乃がそう思うのも無理はない、自動販売機の光でよく見えなかった人影が見えた瞬間、まず最初に目に入ったのはきれいに輝く金色の髪だったからだ。

しかも、一目で天然物とはっきりわかってしまうほどのものだった。

そんな金髪に目を引き付けられていると、その子が椅子に体操座りの体制で寝てしまっていることに気が付いた。

それに、まだ体は小さく見た感じでは小学四年生くらいだろうか、服装は病衣を着ているが点滴などは何もつけてはいなかった。

すると、菜苳乃はその子を見ているうちに、妙な感覚を感じていた。

(なんだろ、こんな子にあったこともないのに。なんだろ思い出せそうで思い出せないこの感じ、後ろ姿しか見てないはずなのに。なんだろう…今私、この子のことが気になって仕方ない。)

その妙な感覚を感じた菜苳乃は、そもそも金髪で日本人かもわからないっ子供に、日本語が通じるかわからないが、その声をこの休憩所で寝かせておくわけにもいかないので、一度起こしてみることにした。

「おーい。君、起きて。ここで寝たら風邪ひいちゃうよ。」

男の子は顔を伏せているが、一応正面に立ち声をかけた。

しかし、男の子はうんともすんとも言わず、ただ先ほどからの体制を崩すことなく。以前体操座りのまま子を伏せてねむっている。

「…うーーーーーん……。グッドモーニング、キッズ。ヘイ、アップ!」

悩んだ菜苳乃は、数か月前にバラエティー番組で世界中の起こし方のようなテーマがあったのを思い出し、ギリギリ記憶に残っていたその場しのぎの英語で声をかけ。

今度は、ほんの少し大きな声を出し。同時に男の両肩をやさしくゆすった。

「んん…うぅ……。」

すると、男の子の頭がぴくつきしばらくすると、目を右腕でこすり始めた。そしてさらに、少しの間があった後に。

「寝てない…です。(暗いのと一人が怖くて寝れなかったなんて言えない。)」

男の子は、瞼を重たそうにしながらすました顔でそう言った。

「お。…日本語……じゃなくて、絶対寝てたでしょ。(なんで嘘を?ま、心の声で御見通しなんだけどな。)」

「いや、寝てないです。(絶対、言えない!)」

「(まぁ理由は言いたくないなら、無理に聞かないでおこうかな。とりあえずこの子をベットに返さなきゃ。)なんにせよ、僕ねむたいんでしょ?早くベットに行って、ちゃんと寝な。」

「…それは……!!!!!!(こんなに暗いと……あの時を思い出す…。)」

菜苳乃が部屋に戻るように言うと、男の子の眼の奥に光がなくなり、体は震えだし、目からは涙がこぼれそうになっていた。菜苳乃は、そんな男の子から漏れ出す心の声から男の子の恐怖感がひしひしと伝わってきていた。

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