第16話 雨城菜苳乃は疑心暗鬼。
雨城菜苳乃(あまぎなつの)は、いつも同じ夢を見る。
あの時菜苳乃は、苓を裏切った。
それからというもの、菜苳乃は苓と自分が逆転した夢を見る。
その夢を見てからというもの、菜苳乃は他人の心の声が聞こえるようになっていた。最初は、コントロールができず見境なく心の声が聞こえ数日間部屋にこもってしまい、トラウマになりかけたこともあったが、すぐに意思をしかっりもてばコントロールできることが分かった。
なぜ自分にそんな力が身についたか、菜苳乃には簡単に想像がついた。
菜苳乃はあの日、身をもって知った。
人は皆、自分のため嘘や裏切りだって簡単にしてしまうし、仮初めの信頼だって容易く築き、続けてしまう。
人は人を欺きかねないのだ。
自分がそうだったのだ、この答えに間違えはない。
そして、この答えに行きついてしまっては、人を信じることは恐怖以外の何ものでもない。
今の菜苳乃は、疑心暗鬼そのものだ。
自分が誰かを信じれば信じるほど情が強くなって、自分が傷付いた時の痛みを後悔を悲しみを大きく、強く、深くするだけ。
更には、自分が信頼していても相手がどう思っているのかはわからない永遠の片思いみたいでも脆く、儚い。
でも、そんなことわかっているはずなのに、心のどこかで友情や信頼を求めてしまう。
けれど、そうやって求めることさえも、菜苳乃には許されない。どれだけ信じようとしても、どれだけ拒絶しても聞こえてくるのだ。
相手の心の声が。
あの時からずっと、菜苳乃は苓を前にどんな顔をして立って、どんなことを言って謝罪すればいいかわからず、さらには心の声が聞こえることに悩まされたりと時間がたってしまっている間に、苓は転校という形で姿を消した。
だけど、どうしても謝りたくて。
子役だった苓が、まだ役者をやっているかもしれないと思った菜苳乃は、高校一年生で女優を目指した。
しかし、私が有名になったころには、彼女はすでに役者業を休業していた。
それからも、彼女が復業すればまた会えるかもしれないと思った私は、あきらめきれずに女優をつ続けていたら、二年半程の月日がたっていた。
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