第12話 重なる二つの突然の死
春輝はゆっくりと目を開いた。
すると、さきほどまでいた教室とは比べものいならないくらい狭い場所になっていた。周りはカーテンで覆われており、春輝はベットの上に寝ていた。
「ここは……?」
今自分がいる場所がある程度分かると、次に春輝は自分の体のあちこちをみたりさわったりして、元の中学二年生の自分に戻っていることを確認した。一つ気になったのは、自分の服が見慣れない簡易的な服になっていることぐらいだった。
「もどってる…。」
ただ確実にわかっている事は、そのことだけ。
なぜ戻ってこれたかは、よくわからないがたぶん死んだからではないだろうか…とも思ったが
「…聞コエタ、信頼デキナイ……。」
その言葉が頭をよぎり、もし戻ってこれた理由がまた、菜苳乃というあの女の子の感情などが原因なら何がいけなかったからだろうか。
先程引きちぎられていた首を触りながら、春輝は考える。
春輝を信頼できないというのは、単に初対面だったからだろうか。
いや、この五次元に関してそれはあり得るのだろうか、たとえどんなに形であっても、彼女が助けを求め、彼女が望む姿で春輝があの五次元に行ったことには変わりないはずだ。
だとしたらなぜ…。
それに、本当に春輝は失敗したのだろうか。
確かに、助けられなかったせいで菜苳乃の様子は急変し、力も姿すらも化物のそのものだった。
しかし、それでも失敗してすぐに五次元を追い出されず、怪物に襲われたのだろうか。失敗すればそれまででもいいはずだ。
それなのに、彼女はあの姿になっても助けを求めていた。
だから多分、まだ終わってない。成功していなければ、失敗もしていない。
そこで気になるのが、あの言葉の聞こえたという部分だ。何が気こたのだろうか、そしてなぜその何かが聞こえた時点で春輝を信頼するに値しないと判断したのだろうか。
しかし、誰かも分からない赤の他人を助けようと思ったって、まだどうすれば五次元に行けるかも分からない、行けるチャンスがあるのかさえ分からないこの状況では、どれだけ考えてもどうすることもできないと思った春輝は、考えるのをやめた。
(…クソ……。)
すると右側のカーテンが、ザーザザッと音を立てて勢いよく開かれた。
「春輝!どこで何してたの病院に救急車で運ばれたりなんてして!…よりによってなんで今……。」
「ご、ごめん、秋火璃姉。俺もよくわかんなくて…あはは。」
秋火璃姉とは、お春輝の亡くなった父親の妹で。母親も亡くなった春輝を引き取った叔母と一緒に春輝を育ててくれた人だ。
「そんなこと、はもういいから…。」
「そんなことって…(秋火璃姉が聞いたんじゃんか)。てか、そんなに血相かいてどうしたんだよ。」
カーテンを勢いよく開けた秋火璃は、息が上がっていてどこか焦っていた。だが、その理由を聞いた春輝は受け入れきれない現実に、頭が真っ白になってしまう。
「事故にあったの!……お母さんが…あんたのおばあちゃんが!それで、治療はしたんだけど目を覚まさなくて。お医者さんは、息を引き取るのも時間の問題だっろうって……。」
「…え、嘘だろ……そんな…。」
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