第11話 味わいたくない心の痛み。
四人が教室からいなくなっても菜苳乃は、その場にうずくまって額を床に押し当てたままだ。
(こ、これはどうするのが正解なんだ?ていうか、俺は失敗したのか?この五次元を。)
その疑問をについて試行しながら、まだ春輝と櫁夢に気づいていない菜苳乃を二人で見守っていた。するとその時、ノイズがかかったような菜苳乃の声が聞こえた。
「こんな…こんな気持ちだったんだ……。私のせいだ。でも、そうするしかなかった。きっと、みんな同じことをした…そうするしかなかった。じゃあ、私もいつか同じ目にあうかもしれないの?…そんなの嫌だ!怖い!…もう、誰も……信じられないよ…。」
「なんだ今の。」
その異変に気付いた春輝は、声が聞こえる方…菜苳乃を凝視した。すると、渦埋まっていた菜苳乃が立とうとしていた。そこまではよかったのだが、一つ大きな異変が春輝には目に見えて分かった。
菜苳乃の額から角状のものが二本も出てきていたのだ。その姿から、一つ心当たりが頭をよぎり口から洩れた。
「鬼…みたいだ。」
そういって、その口から洩れた心当たりを一度しっかりとみて確認するため、目をつむって開くと。
角をはやした菜苳乃は、体を起こし、顔を上に向けており、その姿を見た春輝は、尚更鬼見えて仕方がなくなった。すると、教室の外から櫁夢が大声をだした。
「まずい!春輝、失敗したんだよ!どうにかしなきゃいけなかったのは、今さっきのことだったんだよ!その子は、五次元という幽界に囚われちゃってる!」
「ちょっと、それってどういう ーーーーーーーー !」
春輝が、櫁夢に簡単な説明を求めようとしたその時。春輝は、いきなり飛びかかってきた鬼に首を掴まれそのまま、尋常じゃない力で黒板へと押さえつけられ、黒板は春輝がぶつかった部分を中心にボロボロに崩れ、掴まれている春輝の首からは血が吹き出し、更には押さえつけられた春輝は大量の血を口から吹き出した
「…ッガハァ……!!」
そして、鬼のような姿をした菜苳乃は春輝を押さえつけたまま、ボソボソと何かを喋り出した。
「教エテ、信頼ガ…分カラナイ。寂シイ…悲シイ…苦シイ…助ケテヨ、オ願ガイダカラ……誰カ私ヲ…助ケテヨ!」
「お前…本当に今さっきまでの菜苳乃って人だったのかよ?力…強すぎんだろぉが……よ!」
さっきほどうずくまっていた女の子とは思えない力に驚き、必死に抵抗していた春輝だったが。首を抑え込まれて血を噴き出している自分の首から、違和感を感じた春輝は抵抗するのをやめた。
すると、なぜかは分からないが抑えられている首からの出ているはずの血はかなり収まっており、痛みはあまり感じなくなっていることに気づいた。
「(助けなきゃいけなかったのは、本当にあの時なのか?むしろ助けなきゃいけないのは、この姿になってしまった、この菜苳乃って人じゃないのか?ていうか、血を出しすぎたせいかわかんないけど気分が悪い…。とっとと帰りたいんだが。)俺は、助けに来たんだどうすればいい。」
抵抗するのをやめた、春輝は菜苳乃に言葉をかけた。
「……。」
すると、春輝の首を押さえつけていた手が緩み。春輝は、浮いていた足を地面につけることができた。
最初の攻撃で受けたはずの傷はなぜかもう治っており、普通に立つことができた。そのことに、安心した次の瞬間。
「…信頼デキナイ……。」
春輝は菜苳乃から顔面を殴られ顔が首から引きちぎれて、目の前が真っ黒になった。
顔が引きちぎれた後、櫁夢が大声で春輝の名前を叫んでいるのがかすかに聞こえた。
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