第8話 初芽櫁夢は付属品

「というか、僕たちが何か買ったり出来るんですか?」

新たに生まれた問題を解決するために春輝は、五次元について自分より知っている櫁夢に尋ねることにした。

「春輝はできるけど私はできないの。」

「なんでんですか?」

「春輝は彼女が望んでこの五次元に連れてきた存在だから、まだ誰かに干渉することが出来る。でも、私は多分この世界では誰にも干渉されないし、することも無理と思う。春輝の付属品みたいなものだから。」

説明できているようで、できていない説明した後、櫁夢は春輝の頭を右手で優しく撫でた。

その行為に、思春期真っ只中の春輝は少しの苛立ちと不満そうな顔をした。

「俺、中二なんですけど。」

「ごめんごめん、見た目が小学生だったからついつい。」

櫁夢はそんな春輝の態度を、からかった。

「で?…ほかに質問は?」

おまけに、春輝の態度がもっと悪くなる前に話を戻した。

色々不満があっただろうが、春輝は「はあ…。」とため息を一つついて切り替えた。

「じゃあ、この世界で僕たちがしたことは後々残ったりするんですか?」

「それって…例えば、私たちが一つの家で使った電気の電気代がかかるのかってこと?」

「はい。」

おそらく櫁夢は、春輝が考えていることがもうわかっているのだろう。

わざわざ春輝が大まかに質問したことを、春輝が本当に聞きたいことそのものに言い換えてきた。

櫁夢に先ほどから自分の調子を狂わされているを自覚しながら、密かに春輝は、どういう態度を取れば程よく自分のペースを崩されずに済むか考え始めていた。

「言ったでしょ?この世界。五次元は、ここを作った人間の夢みたいなものだって。だから、春輝がが春輝のあの人にしたことは、その子の心に記憶に残るけど。逆に言えば、春輝は元々この世界にいないからここでした事は何も残らないし、誰の記憶にも残らない。もっと言えば、跡形もな消えてしまう。私は、春輝と違って何をしても消えてのこらない。」

「つまり、この五次元というものはすごく曖昧なもので。絶対的ルールと言えば、その人に対する希望的干渉がその人の中に残るということだけ。なら、できる事はなんでもしていいんですか?」

「そうなる。」

その返事を聞き終えると、春輝はとっさに教室後方の扉へと歩き出した。

「どうしたの?」

「いや、なんか話声がしません?」

春輝がそういうと、二人は黙って耳をすました。

「確かに、聞こえるね。」

「でしょ?ってこれ隣の教室からですよね。」

二人は目を合わせると、扉の前で横に並ぶと春輝が扉に手をかけた。

「行ってみますかぁ〜。」

「そうね。」

春輝はそのまま扉を開けた。

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