第6話 強い影響と希望的干渉

またもや春輝は、疑問に思ったことを櫁夢に問いかける。

「じゃあ、君が何でここに居るのかってことでしょ?」

春輝が、思わず口に出した問いかけを櫁夢は、まさに春輝が聞きたいことに言い換えてくれた。

「そう、それです。」

一応返事をした春輝は、自分の声が高くなっていることに今更ながら気づきつつも、櫁夢の説明に耳を傾ける。

高くなっていると言っても少し不思議なもので、小学生の頃の自分の声に戻った感じではなく、中途半端に声変わりしている今の自分の声がそのまま状態で無理やり高くした様な感覚に近かった。

「たぶん今、たとえ小学生の姿に戻っていたとしても…所々、五年前の自分と違うところがあることに、気づいてるんじゃない?」

「…。」

図星…というより、もはや春輝の言動全て見抜かれている様な気がして、春輝は無言のままだった。

「…そうなのね?…まぁ実際、誰かの五次元に干渉する条件があって人によっていろいろ違うこともあるけど…二つ程、誰の五次元に干渉するにしても大体クリアしなきゃいけない条件があるの。」

大方予想はついていたのだろう、春輝の無言に対して先程の様な問いかけではなく、確認だけして話を進めた。

「一つは、相手に強い影響を与えた時……心当たりがあるんじゃない?」

「…………あ。」

そう、櫁夢のいうとおり、春輝には心当たりがある。

気絶する前春輝は、あの彼女の前で大量に吐血した上にその彼女に襲いかかり首筋を噛んで血を吸っている…印象に残らない人間なんているだろうか。

非現実すぎるぐらい非現実すぎて、加害者である春樹すらも自分の行動に驚きそれが強く印象づいている。だがこのままでは、先ほど浮かんだ二つの疑問点には繋がらない、しかし、このまま説明を聞いていればいずれ答えが返ってくるだろうと思った春輝は、話の続きを促す質問を返した。

「それで、もう一つは?」

「もう一つは、この五次元を作ってしまう可能性がある人物が、誰かの希望的干渉を望んでいる状態のときに誰かの五次元に入り込むことができる様になる。という事、これにばっかりは本人に直接聞かないとわからないけどね。」

「つまり……」

という事は、最初の疑問点に答えが出る。

今上げられた二つの条件の内、前者に関しては確実にクリアしている…それから、後者の条件なのだが希望的干渉…を言い換ても問題ないのなら、限りなく正解に近い答えを導き出すことができる。

これらから、仮説だけでも立てるとするならば。

「俺が、あの人に強い印象を与えた事で、あの人に助けを求められたっという事ですか?」

春輝が導き出した答えは、「希望的干渉」というものを「助けを求めている」と言い換えたものだった。さらに言えば、最初に説明を受けた五次元の説明までも取り入れた。限りなく正解に近いもの。

それ故に、春輝の声色には少しの自信が無意識にまじっていたかもしれない。

だが、そんな春輝の自信なんて気にもせず、櫁夢は「そうね。」と一言で、さらりと流した。

すると…

「じゃあ、その答えが出た事であなたが小学生の姿に戻っていたとしても…所々、五年前の自分と違うところがあることに、説明がつくんじゃない?」

確かにそうだ。

そう納得した瞬間春輝は、自分の体をしかりとあっちこっちを触り始めた。

そして、触るのをやめると急に呆れた様に声を漏らした。

「…俺はあの人が出来る限り望む形でこの次元に入り込んだ存在ってことのなんですね?」

この答えが一番しっくり来る。

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