第4話 悪戯な彼女と無言の圧力
「じゃ早速……あ…問題。今は何年前の何月何日当ててみて?」
と、まるでこの会話が彼女のシナリオ通りかのように淡々と話しを進めているように見えたが、何を思ったのか急に質問形式に変えてきた。
しかも、悪戯ぽい笑みを浮かべながら質問してくる。
初対面なのに正直ウザいと思いつつも、この状況を理解するには彼女に頼るしか他ないので問題に回答しようとする。
(何年前のってことは、この世界は…いや、この次元は、俺のが元いた場所より過去ってことか。とりあえずこの教室で日付がある物は……)
春輝は、その場で教室をくまなく観察した。
(お、カレンダー。ってなんも書かれてないじゃないか……あ。)
カレンダーにヒントになりそうなものが書かれていないどころか何も記入されていない事にがっかりしつつも教室内の物に目を光らせていたら、一つのものが目に入った。
このクラスの担任の意向だろうか、クラスの今日の目標や時間割の変更、緊急の集会などのクラスへの報告などが書かれた張り物が目に入っていた。
良く見るとそれには、右上に七月五日と書かれている。
これだけでは、今が何年前かは分からないが…答えないのも癪なので、春輝は足掻いておくことにした。
「何年前かまでは分からなかったが、日付は七月五日……じゃないのか?」
「カレンダーを見た後に分かりませんって、降参してくると思った。」
不満そうに小声で彼女が呟くと、春輝が少し勝ち誇った表情で話を進めた。
「それで?何年前かの答えは?」
「私だって、知らないわよ?そんなの。」
さっきまでの悪戯な笑みなんてなかったかの様に、そっぽを向いて彼女がそうゆうと、春輝は少しイラっときているのを隠さないでツッコンだ
「何年前なのか、出題者であるあんたもわからないのかよ。」
「あんたじゃなくて、初芽櫁夢。苗字で呼ばれるのは好きじゃ無いから、名前で呼んでもらって構わないわ。あ、ちゃんと「さん」つけなさいよ?」
櫁夢はまるで、以前経験したことがあるかのように「さん」付けを要求…というか、忠告してきた。
「…「さん」付けと言えば、あなた歳は?」
(歳でマウント取ってきやがった。)
そう思った春輝は、櫁夢が自分より年上なのは何となく察していたので、いまのうちに生意気な態度をとっておくことにした。
「あなたじゃなくて、俺には。。。春輝という名前があるんだけど。あと、人に質問するときは自分からって…知らないのか?」
「私は、高校三年生十七歳……春輝く〜ん…何歳?」
春輝を物凄い顔で睨み…いや、微笑みながら、・・・は自分の年とおまけに学年まで教えてくれた。
……かなり年上じゃないか…。と、春輝は先程選択した態度を後悔しつつも、怒らせたのは自分だし…さらに言えば、その態度のおかげで自分が歳を秘密にしておく逃げ道を消したのも自分なので、大人しく自分の学年と歳を明かすことにした。
「(おお……すごく怒ってる)俺は、中学二年十四歳。」
「かなり年下じゃない…。」
先程からこちらに向けられている目の奥の怒りがさらに強くなった。
「…歳離れてるって言っても……三年くらいですよ?」
そんな小さな言い訳を聞きもせずに櫁夢は、ただひたすらに春輝を睨んで…いや、微笑んでいる。
多分、なんなら絶対、というか確実に、櫁夢は怒っている。
「……」
(おお…う……無言の圧力。)
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