第3話 潜り込んだ他人の世界
「…ん……んん。」
ゆっくりと目を開け、春輝はうつ伏せで寝ていた体を起こしその場に立ち上がる。
そして、いつもの寝起きのようにだるい頭を利き手でもない左手で押さえながら、ぼんやりと周りを見渡し、見覚えのない場所であることを確認する。
「ここ…どこだ?」
見た感じ、教室の様だ。これだけなら見覚えのある場所に思えるかもしれないが、春輝のすぐ横…つまり、教室の後ろにある黒板に貼られている紙には、【牧野原小学校(まきのはらしょうがっこう)九月の行事!】という題名が一番上に書かれておりその下には九月の三十日間に渡る学校行事が事細かに書かれた表があるプリントが見えた。
春輝の出身小学校は【秋月小学校(あきづきしょうがっこう)】と小学校が違うため、見覚えのある場所では無い事になる。それがわかった瞬間、この教室の広さや間取りなどの違いが、懐かしさをかき消していた事に春輝は、気づいた。
それにしてもなぜ、名前も聞いたことのない小学校で、自分が意識を失っていたのか…全く想像がつかなかった。
頭を抱える春輝に、この状況についての説明が入る。
「何か勘違いしてない?あなたはただ単に小学校で気を失っていたわけじゃないよ?あなたが血を吸った彼女の感情が作り出す幽界…というか、彼女の過去の記憶……まぁ、彼女や君の様な、三次元を曖昧に超えちゃった存在であるあなた達が作り出す夢のような場所。私たちは五次元って呼んでるの。」
という女性の声が後ろから聞こえてきたので、春輝は声のする方へ向けた。その声の持ち主は金髪のポニーテールで、一見可愛らしさが目立つのだが、制服を着ている、それにどこか大人っぽさのある感じが自分より少し年上に見えた。
先程見回したときに気づかなかったのは、春輝の近くの席に座っていたのと、座っていた椅子が小学生用の小さい椅子だったことも相まって視野に入らず、気づかなかったのだろう。
「五次元?」
この場において、誰だ、こいつ。という疑問は放り投げて、この状況を理解もとい把握することを最優先にした春輝は、引っかかったことを全て質問していくことにした。
手始めに、自分が今いる場所について。
「まぁ、ここに来るのは初めてだろうし。まずはそこからよね…よいしょっと。」
彼女は話が長くなることを態度で春輝に伝えながら椅子から立ち、机に椅子を入れる。
「じゃあまず、次元の説明からするね。」
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