第5話「メイドに転職しました。」




 使用人たちの朝は早い。まずは何よりもこの家の当主、及びそれに連ねる者達よりも早く起きなければならない。



「空も快晴。良い始まりです。」



 目覚めは良く。寝ぼけていては仕事にならない。その為にも、健康にも良い決められた時間の分睡眠はとっている。

 私は、今まで眠りにつき閉じていた瞼をパッと開きすぐに目を覚ますと、そのまま部屋に飾られたクローゼットに手を差し伸べる。これは使用人の部屋に各自置いてある、衣類が仕舞われているクローゼットだ。

 クローゼットから毎日綺麗に洗濯してある使用人の指定服を取り出し、着替え始める。袖のボタンを止め、解けないよう帯を強く締める。働く身であれば身だしなみもきちんとしなければならない。



(襟よし、袖よし、帯よし。)



 身支度ができれば、後は仕事の始まりだ。部屋の扉を開け、廊下へと出ると自分と同じく仕事を始めようとしている仲間たちに出会う。



「おはようございます皆さん。」


「ーーおはようございます、使長!」



 挨拶をかければ、同じく目を覚まし仕事に取り掛かろうとしている周りの皆も、元気よく挨拶を返してくれる。

 皆から呼ばれる「使長」というのは「使用人たちの長」つまりはこの使用人たちの頭だ。

 恥ずかしながら、私はこの家の使用人たちの中でも使長をやらせてもらっている。これでもここに仕えるのは長く、現当主であるサリア様が当主の座に至った時から雇用された使用人だ。

 ここの使用人達は、主に当主であるサリア様が決められているが、募集する時もあれば、急に志望者が現れる時もある。



「ふむ……」



 そんないろんな経緯でここに来た使用人たちの間でも少し話題になっている事がある。それは、この家に新しい使用人が来たと言う。

 「来た」という言い方は少し違うが、なんでもお嬢様であるフィリア様の御知り合いだとか。

 帰る家もなくアテもなく、ここに住まわせてもらっているらしい。その代わりとしてここで使用人として働くという事だという。



「アヤセさんを見た方はいらっしゃいますか?」



 確かに色々と同情するような事情があるとは言っても、働くとなれば話は別だ。私たちと同じ使用人をしている以上、仕事はしてもらわなければ。

 しかし、そんな彼女の姿が見えない。どこにいるのかと、一人の使用人に聞いてみる。



「すみません、私は見ていないです。見ていたら周りの皆も少し騒ぐと思うのですが、その様子はなさそうなので……おそらく、まだ部屋かと…」



 新たな使用人、しかもフィリア様の知り合いとあって使用人の間でもどんな子なのかと会ってみたい者が多い。だが、皆の様子はいつも通り。誰も会っては居ないのだろう。



「分かりました。では、私は彼女を迎えに行きますので、皆様はいつも通りお願いします。」



 私は彼女が居るであろう部屋へと足を運ぶ。聞けば、彼女の寝室はフィリア様と同じ部屋だと言う。この家に部屋の空きは沢山あるにも関わらず、アヤセさんの嘆願とフィリア様の渋々の許可があり同室になったらしい。

 足を進め、お嬢様の部屋の前に立つ。同室とはいえ、当主のご息女の部屋に立ち入るのは未だ慣れず少し緊張するが、一呼吸し部屋をノックする。



「失礼します、お嬢様。アヤセさんをお迎えにあがりまし…」



 使用人は朝早くより仕事をするため、お嬢様たちは未だ寝ている可能性がある。

 コンコンと軽くノックをし、大きな音を立てぬよう静かに扉を開ける。すると



「ちょっとリリカさん、動かれてはやりにくいですわ。紐が上手く結べませんもの。」


「わわっ、フィリアさん、そこの紐は多分違いますよぉ……あイテテッ、強く縛りすぎですぅっ!」



 扉を開けて見てみれば、そこには支給された制服を試行錯誤しながら着ているアヤセさんと、それを不器用な手先で手伝うフィリア様の姿。



「うぅー、きついですっ!」



 紐の結び方が滅茶苦茶なため、変な形で結ばれた帯を、苦しそうにしていたアヤセさんはおもむろに解き始める。

 試行錯誤していたためだろう、帯を解いた瞬間に他の紐もほどかれ、一瞬にして服はその身から離れてしまう。



「ちょっ、リリカさんっ!!目の前でそんなに体を露わにしないでくださる!?」


「むぅ、昨日のお風呂の時もそうでしたけど、フィリアさんは何でそんなに恥ずかしがるんですか?女の子同士なのに。」


「お風呂は裸にならないと入れないでしょう、それとこれは別ですわっ!いいからとりあえず体を隠しなさい!」


「って言っても、このメイド服、着方が難しいんですもん……」



 お嬢様には悪いが、「はぁ」と思わずため息が出てしまう。お嬢様は手先が不器用では無いのだが、初めての服で戸惑っているのだろう。



「おはようございます、お二方。早い目覚めで何よりです。それと、アヤセさんは何をしているのですか。」


「!あら、おはようございます、アルティナ。」


「あ、おはようございますアルティナさん!………と、私は今は悪戦苦闘中です………」



 こちらに気がついた二人は挨拶を返す。フィリア様がこんなにも早く起きるのは少し珍しい。恐らく、アヤセさんが居たからであろうと目星をつける。



「お嬢様、あとはお任せ下さい。わたくしめが変わります。」


「あらホント?じゃあ、お願いするわ。どうにも私には難しいもの。」



 フィリア様は安心した顔でその場を入れ替える。離れたフィリア様はそのまま扉に向かい歩いていく。



「それじゃあ、私は今から少し早めに魔術の訓練をしてきますわ。朝ごはんはお願いね。」


「かしこまりました、行ってらっしゃいませ。」



 フィリア様はそれを告げると部屋から出ていく。私はそれを見送ると目の前に居る不器用さんの着用を手伝う。



「魔術の訓練?フィリアさん、そんなことしてるんですか?」



 アヤセさんは興味ありと制服を着ながら問いかけてくる。



「えぇ。知っての通り、このティラエル家は代々続く魔術を得意とする家柄。次に当主を継ぐ役目となるフィリア様は、今日は少し早いですが、朝と夜と2回程、毎日魔術の訓練をしているのです。」


「へぇー………大変なんですね、フィリアさんも…」



 後ろからアヤセさんの身長に合わせて屈んだ私の目には、いくつかのアザや傷の残る体が見える。



「大変。というとあなたも先日、大変なことに巻き込まれたと聞きましたが。」


「あぁ…あれは大変と言うより、ビックリしたの方があってる気がしますが……」



 アヤセさんは乾いた笑いを漏らす。こうは言ってるが、背中に見えるこの体の傷を見ればどれだけ大変だっかなど、それこそ目に見える。

 家もなく家族も居らず、大事件に巻き込まれるなど、不遇な日ではあっただろう。



「まぁ、それとこれとは別ですね。さ、終わりましたよ。あとは支度をして仕事の始まりです。」


「わぁ!流石です、アルティナさん!」



 使用人と言っても同居人。しかも小さな少女だと言うこともあり、サリア様の頼みで少し可愛らしさを付け足した、フリル多めの制服を纏い、アヤセさんは嬉しそうにその場で一回転する。

 確かに私から見てもアヤセさんは小柄で可愛らしい顔つきではありますし似合ってはいるのですが、それにしてもこの服は少し仕事がしにくいのでは……?



「…では行きますよ。やる事は沢山あるのですから。」



 もしやサリア様にそんな趣味が、という疑念は放っておき私はその部屋を後にする。アヤセさんは遅れまいと背中を追いかけてくる。

 さて、少し時間が遅れましたが、まだ大丈夫でしょう。一日の始まりです。












「よっ………と」



 普段人が触れないような高い所ほど、汚れは溜まるもの。そうアルティナさんが言ってました。

 悲しいことに、私は身長が平均より低めなので、台に乗らなければ届きません。いや、台に乗ってなおかつ背伸びしなければ届かない。



「うぅ、何故こうお金持ちの家って一部屋一部屋が広くて高いのでしょう………」



 思わず不満をこぼしてしまい、口を噤む。

 今はアルティナは別の仕事をしているためこの部屋には居ない。それを確認し少しほっとする。もし聞かれてでもすれば、怒られてしまうのは容易に想像出来る。

 今璃々花は、自分とフィリアの部屋を掃除中だった。



(部屋って言っても、私物は本くらいしかないですが……)



 朝の仕事内容は先程アルティナ直々に一通り教えてもらった。

 部屋に限らず家の外や庭の掃除、朝ごはんに使う食材の確認、調達。当主の仕事の内容の把握、それの準備。そこまでやるのか、ということまで使用人はやっているらしい。

 そんな仕事の中で、アルティナは一番簡単な仕事をと、自室の部屋の掃除を頼まれた。だが、簡単とは言っても自室と言っても、ここはフィリアの部屋でもあるため、慎重に掃除するようにと釘を刺されてしまった。



「でも、やると言った以上は頑張らなくちゃ。」



 自分で決めたことだ、ならば最後までやりきらなければ。

 そう璃々花は気合を込めて仕事をする。



「ふふん、やっぱり掃除って楽しいですね。」



 元の世界では璃々花はよく家の掃除を自主的に行っていた。そのため、普通の人が嫌がる掃除も、璃々花にとっては苦ではなかった。

 壁を拭き、棚や机などに積もったホコリを取り、綺麗にそして傷のつかぬように丁寧に拭きあげる。

 もちろん、クローゼットの中なども綺麗にする。そして最後に、他を掃除したことで落ちたホコリやゴミが溜まった床を隅から隅まで綺麗にする。歩けば滑ってしまいそうなくらいまでピカピカに。



「うん、大体こんな感じかなぁ。」



 案外、他に気を取られず集中してやればすぐに終わった。

 元の世界だと、自分を誘惑してくる物が沢山あるが、こちらの世界には漫画やスマホやゲームなどと言った魅力満点の物がない。そのおかげで、途中で遊ぶことも無くやり遂げることが出来た。



「よし!我ながら完璧です!」



 腰に手を当てやり切ったと言わんばかりに汗を拭う動作をする。見渡しても窓から漏れる光が反射するほどピカピカに綺麗になった家具たちだ。



「失礼します、アヤセさん。掃除の方は終わりましたか?」



 すると、タイミングを見計らったかのようにコンコンと軽い音がする。声をかけながら扉を開けアルティナが入ってくる。



「はい!もうバッチリですよっ!」



 ふんすっと鼻を鳴らし腕を組む璃々花を見て、アルティナは「ふむ」と部屋を見渡す。

 するとアルティナはスタスタと机に向かい歩いていくと、目の前にあるピカピカの机の裏を指で触る。



「まぁ、初日ですし、掃除の仕方は教えてなかったのでしょうがないのですが、これで完璧だと思われたのは心外ですね。」



 アルティナは見せつけるように指を立てる。その指には微かながらにホコリが付着していた。



「あぅ………裏までは見てなかったです……」



 完璧だと思っていたがために、璃々花は少しガッカリする。



「そうですね、まぁ六十五点というとこでしょうか。」



 アルティナは部屋を見渡し採点する。六十五点は高くもなく低くもない。言うなら及第点という所だろう。まだまだ改善する余地はあるということらしい。



「というより、ここに来るまでに一切魔力を感知しなかったのですが、何故魔法を使わずに掃除をしているですか?その道具はあくまで細かいところ用だと言ったでしょう?それでは、時間も手間もかかるでしょうに。」



 アルティナはそう言うと、前に見たフィリアのように詠唱のようなものを唱えると、アルティナの体をオーラが包み、右腕に花のような紋章が浮び上がる。



「……花?」



 璃々花の疑問を放り、アルティナのオーラは風となり、部屋の隅々まで行き渡る。机の裏や普段手の届かないクローゼットの裏にまで吹き、やがてはアルティナの目の前に集まる。

 収縮した風はフッと消えるとそこには無数のゴミが集まった小さな塊ができた。



「凄い………っ!今の、何ですか!?」


「?何って、風の魔法ですよ。これがあるのと無いのでは掃除のしやすさが違いますから。」



 ほぇーと思わず口から気の抜けた声が出てしまう。

 昨日のトーラを静めるために応戦したフィリアが魔法を使っているは見たが、魔法とはこういう使い方もあるのかと感嘆する。

 やはり、知識がない者からしたら魔法とは戦うためにあると思ってしまう。

 璃々花は心の底から感心すると、アルティナは首を傾げる。



「貴方は使えないのですか?これぐらいの少量の力でしたら、余程のことが無ければ誰でも扱えると思うのですが。」



 アルティナの疑問は璃々花にとっては答えにくいものだ。

 この世界に来た時に、女神と名乗るものにスキルという能力は与えられた。しかも訳の分からないデッドスキルというもの。あの女神は確か、スキルは魔法とは違う分類と言っていたはず。

 それに、元々魔法などとは一切関係のない世界で生きていた自分だ。こちらの世界に来たからといって、何ができるようになったのかは分からない。というか、試したことが無い。



「私、魔法とかよく分かんなくて………」


「あぁ、いえ……私の勝手な妄想でしたね。アヤセさんの事情はサリア様から聞いてはいましたが、まさか魔法が使えないとは思ってもおらず…」


「いえ、アルティナさんは悪くはないですよ。魔法が使えない、他の世界の人なんて見たことないでしょうし。」



 魔法が存在する世界なら、その世界に生きる全ての人々が魔法を扱える。そう思っていた璃々花の反応を聞き、アルティナは不思議そうに見つめ返す。



「……?いえ、アヤセさんのように、他の世界から来たという人は見たことは無いですが…魔法を扱えない人は何度も見た事ありますよ?」


「………え?」


「…?サリア様から聞いてはいないのですか?」


「いえ…何も……」


「ふむ、時間が無かったのかそれとも………」



 アルティナは何かを考えるように顎に手を当てる。



「ふむ…」



 アルティナは少し考えた後、壁に掛けられた時計に目線を移す。時計の針は既に十一を過ぎており、まもなくお昼になろうとしていた。



「時間も時間ですね。アヤセさん、お嬢様とサリア様を呼んできては頂けないでしょうか。」


「!いいんですか!?」



 璃々花は飛び跳ねるように反応する。朝はフィリアたちの邪魔にならないようにと、近づくことは禁止されていたのだが、まさか解禁されるとは思ってもいなかった。



「はい。アヤセさんもこの館には慣れてきたでしょうし。恐らく御二方は未だ魔法の鍛錬だと思います。私は料理の準備をしなければならないので、アヤセさんにお願いしたいのです。」


「わ、分かりました!えーっと、確か、フィリアさんたちは裏庭の方でしたよね?」


「えぇ、行き方は分かりますね。それでは、お願いします。」


「はいっ!了解しました!」



 アルティナと璃々花はお互い部屋を出ると、自分の仕事をするためにその足を動かす。

 裏庭に出るためには家を出て、フィリアの母親の趣味である庭園を超えなければならない。この家は普通に比べて大きな家で、かなり迷いやすい。

 脳内に作った家の地図を参考に試行錯誤しながら目的地へと足を運ぶ。



「魔法の練習……貴族って、本当に凄い人たちなんですねぇ。」



 まだティラエル家がどういった事をしてきたのかなどは深く聞かされてはいない。ただ単に魔法が得意な家系だという事だけだ。

 興味と関心を覚えながら足を進める。裏庭に近くなるほど、人の声と、それと何か少し物騒な物音が聞こえてくる。フィリアが言っていた通り、未だに訓練中なのだろう。



「サリアさん、フィリアさんっ!!お昼ごはんでーー」


「ーーーっ、リリカさんっ!?あっ、急に出てきてはいけせん!!」



 元気よくお伝えしようと木の影からひょこっと現れると、そこには魔法の訓練をしているなうのフィリアが居た。

 が、そんなフィリアが魔法を放つ瞬間に出くわしたようで、フィリアは焦った顔で璃々花に忠告する。



「えっ?」



 なんの事かを理解するよりも早く、フィリアが放った一つの火の玉が急に軌道を変えて璃々花に向かって飛んでくる。



「え、わわわ火の玉がーーーーっ、ゲフッ!!」



 これ以上ない程の見事な直撃。

 火の玉は一寸狂わず璃々花にぶつかる。璃々花は明らかにこちらに向かって飛んできた火の玉がクリーンヒットし、ブスプスと香ばしーーもとい、焼けた音をたてる。

 それを見たフィリアが慌てて駆け寄ってくる。



「リ、リリカさん!!大丈夫ですかっ!!??」


「こ……こんがり、焼けました…………よ…」



 痛い。全身が焼かれるなど初めての体験だ。なるほど、漫画でよく見るキャラクター達はこんな気持ちなのか。

 そんな感想を抱きながら、璃々花はプルプルと震わせながら親指をグッと立てる。



「…っ、申し訳ありません。私の不注意ですわ……。」



 フィリアは璃々花を抱え、しょんぼりとした顔をさらす。

 フィリアに続き、サリアも慌てて駆け寄ってくる。



「いや、これは私の確認不足だ。魔力が感知できなかったから、誰もいないと思ってしまった……」



 サリアはやってしまったとばかりに顔を歪ませ、ポケットの中から薬のようなものを取り出す。



「傷を早く治す薬だ。痛み止めの効果もあるから飲んでくれ。」



 渡された薬を口の中へと流し込むと、言われた通り、体から痛みが和らいでいく。

 ゲームで言うところのポーション、回復薬らしい。



「いつもはアルティナが呼んでくれるから、大丈夫と思っていたんだが。そうか、君は魔法を知らないんだったな。」


「?」



 サリアはなにか複雑そうな顔をして頭をかく。



「いや、君に言ってなかったのが悪かったんだ。リリカくんは、これからも長い付き合いになるだろうし……ちゃんと説明するべきだな。」



 顔を歪ませながら悩んでいたサリアは、意を決したように息を吐く。



「ですが、何も知らないリリカさんにそんな……」


「フィリアの気持ちも分かる。だが、リリカくんはもうこの家の住人だ。またいつ彼女がこうやって呼んでくれるかも分からない。それに、この世界に生きるのなら知らないとね。」



 サリアは諭すようにフィリアに訴えかける。フィリアはその言葉を聞き、悩みに悩んだ末に、「はぁ」とため息をつく。



「分かりましたわ。なら、昼食の時間だと言うことですし、食事をしながらでもしましょう。」



 しゃがみこんでいたフィリアは、倒れ込んだまま傷の回復をしていた璃々花に手を差し伸べ、起き上がらせる。



「はいっ!…あ、アルティナさんが、お昼ごはんは気合い入れるって言ってましたよっ。」


「あら、そうですの?あぁ、でもリリカさんはアルティナの料理を食べたことがないでしょう?なら、きっと腰を抜かすぐらい『美味しい』って言うはずですわ。アルティナは料理がとっても上手ですので。」


「へー!そうなんですかっ!えへへ、これで一日を過ごす楽しみが増えましたっ!」



 起き上がるために繋いだ手をそのままにし、アルティナが丹精込めて作った料理を迎えに二人は歩いていく。



「………」



 その二人の光景はまるで昔から仲の良い姉妹のようにも写る。

 姉妹や兄弟の居ないフィリアは、いつもお世話をされてきた毎日だ。それが自分より年下の同性の子が来たことで、自分がお世話をする側に回ったのだ。恐らく、フィリアにとって璃々花は可愛い妹のような存在なのだろう。

 サリアはそんな二人の関係性に微笑ましく思う反面、少しどこか悲しくなる気持ちになっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る