秋生の日常 その20
そもそも自分が他人の思う空気を読むつもりがないので、他人を自分に従わせるのもおかしいと思っているからだ。
ホームルームも終わり授業が始まる。
今日も、<予備の筆箱>と称して鞄に入れてある方の筆箱に隠し持っていた小さなハサミを使って、枝毛を切っていた。
すると、
「
はっきりと教師にも聞こえる声で、
すると、教師の方もさすがに授業中に枝毛の処理をしているのは見過ごせず、ハサミを取り上げて、
「これは預かっておくから、放課後、職員室まで取りに来るように」
と指導を行った。
<イジメ>は放っておかないものの、だからといって授業中の枝毛処理を見逃すわけでもない。好ましくないことをしていたのは美登菜の方だから。
声を上げた女子生徒も、それが分かっていて教師に聞こえるように言ったのだ。
はっきり言って<嫌がらせ>の類ではあるものの、さすがに今回は美登菜に非がある。そもそも、女子生徒のしたことも何か法律上の問題があるわけでもない。
『イジメはよくない!』
と考えるあまり、今回の美登菜のような事例でまで注意すらできないというのはさすがにおかしいだろう。
もっとも、声を上げた女子生徒は、ホームルームを始めるために担任が教室に入ってきても一番最後まで席に着かなかった生徒ではある。
『お前が言うな!』
の典型ではあっても、この辺りは判断が難しい。秋生も、敢えて口出しはしなかった。
今回ばかりは注意されても仕方ないということで。
その一方で、授業の後、
「もしよかったら、職員室まで一緒に行ってあげようか?」
美登菜に声を掛けた。
すると美登菜は、
「あ、ううん。大丈夫。悪いのは私だしさ」
素直に自分の非を認め、尻拭いも自分ですることにした。
ただこれも、後で秋生が慰めてくれるのが分かっているからできるというのも事実。
それでも、
『自分は悪くない!』
などと言い張って反抗するのもいる中でちゃんと認められるのだから、それ自体は好ましいことだと思われる。
秋生は、彼女達のそういう部分も認めていた。
「
美織は単純に呼び出しを食らった彼女に同情しているが、麗美阿は、
「授業中だから、仕方ないよ」
とも言っている。
それぞれがちゃんと自分の考えを持っているのもいいと思えたのだった。
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